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しおりを挟む今日は白竜族の生き残りの処刑の日。
城の外に広がるグラウンドを思わせるその場所に、キキョウをさらったとされる白竜族の生残りが並べられた。
辺りは柵に覆われて、観衆は集まりだし…柵内に置かれた席にはカイと皇太后…拐われた本人であるキキョウも呼ばれてきていた。
並んで膝をついて座る彼らのそばには兵が一人王の指示を待って直立していた。
兵が持つのは並べられた犯人たちにひと振りが届く位に長い剣を持っていた。
「はじめ!」
カイの一声に兵は剣を振り下ろした。
観衆は悲鳴をあげるなか、軽く虚しい音が響き渡った。
パコーン…パコーン…パコーン…。
キキョウも目を閉じていたのだが…拍子抜けした音に不思議に思い目を開けた。
犯人たちは気を失って横たわるが、その体に怪我が無いことに皆騒然とした。
「キキョウ…安心して。記憶を消去する剣なんだ…我が竜族の家宝で剣の歯に斬る能力はない。」
「どうして?」
キキョウは不思議そうに聞けば、カイは席から立ち上がると、ざわつく観衆の注目を浴びた。
「裏切り者の白竜族の呪いは解けた!呪われた過去は浄化された!」
カイは兵が処刑に使った剣を受け取り、空高く翳した。
現在の宰相は歓喜し、観衆の前で叫んだ。
「トーラス国万歳!カイ竜王万歳!」
「「万歳!万歳!」」
観衆も続いて、叫び…皇太后は崩れるようにして泣いていた。
キキョウはカイの側にたち見守っているとカイはキキョウを抱き寄せて語った。
「親の罪を孫のだいに背負わせないよ…あの剣は表に出ることはなかったんだ。私が国を取り返したときも…あれから、処刑がただしかったのか…悩んだよ、そしてこの剣の存在を知って…復讐のために何時か出会うだろう…子孫が現れたら使おうと決めたんだ。」
キキョウはカイの優しい部分をしり感動した。
「カイ様…」
「泣かないで…泣くのは皇太后だけに…あ、側にいってあげてくれないか…。」
キキョウははっとし、皇太后の元へと駆けつけハンカチを差しだし涙をぬぐえば、皇太后はキキョウに抱きつき泣きじゃくった。
「皇太后様…」
「キキョウ…先代の王もきっと喜んでいるわね。」
「はい…間違いありません。」
今まで沢山、辛く苦しい思いをしてきた皇太后にとって、カイの成長は嬉しいことであり、その心に歓喜していた。
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