若き竜の王様の寵愛

yu-kie

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 あれから半年程経った…この日、キキョウは護衛の訓練に城の一角にある道場にいた。

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 離宮の皇太后様のお付きの侍女に正式になってから、私は強くあるために7日置きに行われる訓練会に出ていて、今日はその日。武術場に来て剣の打ち合いの稽古中!

 私は日本でならった剣道になれているのだけど、この世界は日本で知ったフェンシングと同じ剣使いが主流です。踏み込みとか似ている部分もあるから、剣の構え方さえ習えば何とか見た目もさまになって来ていました。

「キキョウちゃんは王の花嫁候補になりたくはないの?男性のように剣の稽古なんて…心がけは素晴らしいけど…結婚が遠退かないかしら。」

 離宮班班長クラリイさんは私と王様の関係を目撃した人物で、影ながら応援してくれる優しい御姉様。

 二人で道場外側のベンチにすわって小休憩をしながらそんな会話になって私は素直な気持ちをクラリイさんに伝えました。

「私は強くなって、国を守るために功績を遺せたらそれでいいんです!」

「欲がないわね…応援しがいがないじゃない。」

 そう言って拳をふって私の頭にコツンとぶつけ、『メッ』と言われているような…目力に一瞬怯んでしまった。

 クラリイさんには叶いません。

 新婚さんのクラリイさんは恋ばなが好きで、私にも恋をすすめて来るところがあるから…どうして良いのか困ってしまう。日本なら高校に通う年齢の私にはまだ花嫁なんてお伽話みたいにしか思えない。

 国王様が私に優しい事にクラリイさんは恋の進展を期待しているよう。

 この半年、王様は時々私を探してくれてるみたいで、仕事中にも遭遇する事が多々あるのを、クラリイさんは知っているのです。

「そろそろ戻りますね。」

「ええ、私も仕事に戻るわね~」

 こうして、私たちは解散して各々の持ち場に散らばりました。

 +

 次の日の離宮での仕事からのお城への移動途中、私の行動を侍女頭に聞いて把握しているカイ様が自然を装い私にお菓子をくれたり…まるで優しいお兄さんみたい。

 一緒にいると少しだけ、胸の奥で心臓が弾んで…楽しくて…甘えてしまいそうです。

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