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しおりを挟む〈回想〉
15歳の少年王子は、不治の病にかかった王を父に持ち…一人息子であるがため、跡を継ぐために厳しい環境にみをおいていた。
隣の国から、竜王の弱体化は知られるまでとなり、何度攻めいられたか。まだ病の淵にたたされる前、少しの体調の悪さがあっただけの頃は…その体を魔力を使い、もうひとつの姿である、巨大の竜となって竜士団を率いて敵を散らした。
少年王子はその威厳に満ちた、ごつごつとした、筋肉の鎧を纏う竜王を尊敬し、憧れていた。
次第に力をなくして行く父王は、表舞台から姿を消し…父の代弁のために民の前に立つことも増えていくなか…少年王子は、兵たちの…民の、不安、不満、様々な感情を目にして行き、巻き込まれて行くなか…15歳のある日、見馴れたブラウン系の髪いろの赤子同然の、小さな子供を見つけた。
束の間の休息に…覚えたばかりの乗馬の練習のため、牧場で馬を走らせようとやって来たとき…泣きじゃくりながら牧場に迷いこんだ子供を見つけた。
「どうしたの?」
「えぐっ、ぐすん。お父様に会いに来たの!強くなるの!だから、ぐすん、父様に…」
「う~ん、今国は大変だからね、君のお父様は敵から国を守るために戦いに出ているんだよ、だから、おうちに帰ろ?」
「いやいや、今日は戻ってくる日だもん!」
困り果てた王子は何故か少女の瞳に違和感を感じた…初めてみる鮮血のような瞳が印象的な少女は、容姿も綺麗な娘だった。
「じゃあ、馬にのる?僕は今から乗馬の練習をしに来たんだ、一緒に乗らない?」
少女はぱあ~!と表情を明るくした。幼いその子供は魔力を体内に宿し…少女を馬の背にのせ、王子は少女の後ろに乗ると、落ちないように包むようにして馬の綱を持ち、馬を走らせた。
「私は強くなるの!」
「……。」
「負けたくない!お父様と、王様をお守りするの!」
少女はなにかあって、ここに飛び出すようにして来たのだろう、何か思い出すように、手に拳を作り、鼻息荒く自分に言い聞かせる姿に…胸の奥が熱くなるのを感じた。そして王子は、母からもらった…ネックレスを思い出した。 大切にしたい相手に渡せと…王子が受け取ったネックレスはいつもポケットにしまいいつでも渡せるように持ち歩いていた。
そして別れ際に、咄嗟に少女の首に掛けてあげた。
(幼いながらに強い魔力を瞳に宿してるなんて…彼女は弱くなんてないのではないか?言葉に強い意思を感じる。こんなこと…はじめてだ…側に置いておきたい…)
カイは…キキョウに抱いた思いを胸にしまいこむと、キキョウが父親の腕におさまり、遠くへと去って行くのを見送った。
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