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しおりを挟む今日は私の運命を左右する日となりました。
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朝礼で侍女頭から昨日の件で頑張りましたとおほめに預かり、カイ王が離宮に来ると知らされました。
お母様の体調を気にされてのことだと思われましたが、私には間近に彼をみる最大のチャンス。だけど、心に決めた人のいる方だ。私が紅い目を持つため、王様の花嫁を決める際に私ごときがしゃしゃり出るわけにはいきません。私は目を伏せたり、顔を何とかみられないよう、細心の注意を払いました。
「母上、お加減はいかがですか?」
部屋に現れた青い髪の青年王はベッドで半身をおこして読書をするお母様の側にある椅子に腰掛け、優しくいたわるようにおっしゃりました。
「ええ、大分よくなりましたよ?」
私は王様の側にある小さなテーブルに紅茶を用意し皇太后様にもお茶を勧めれば、カップを手に取り口にごくりと飲まれました。
「母上…昨日の剣士のことですが…」
「なんのことかしら…昨日はこの娘…キキョウに救われました。流石サークライ家の娘。」
私は目を伏せた状態で王に一礼をした。
「キキョウ・サークライと申します。」
「キキョウ…どこかで聞いたことがある名前だ…」
私は二人から距離を取り、部屋の壁際にたつと、壁と一体化するように待機しました。勿論目を伏せたままです!
お二人は一時間位…近況をお話しされ、お忙しいカイ様は部屋を出る前に、私の名前を復唱されました。
「キキョウ・サークライ、キキョウ・サークライ…あ!キキョウ、あのキキョウなんだね!」
皇太后様は扇で顔を隠してクスクス笑いだし、私は壁に一体化していたのに…いきなり私の前に急接近したカイ様が壁に手をついて私は身動きとれず恐る恐る見上げれば…柔らかい笑顔で見つめるカイ様がいました。
「あの…王様?覚えていてくれたのですか?」
私は顔色をうかがうように聞くと、観衆の前では見せない緩んだ表情でケラケラ笑って答えてくれました。
「忘れてないよ?あ、ネックレスもつけてくれてるんだ!」
まるであの頃のカイ様をみているようで…胸の奥がじわじわ熱くなるのを感じながら…私の髪を撫でるその手にほほを寄せて喜びを噛み締めていました。
「身に付けていたのはあの日の約束でしたから…こうして再会できる日を夢みていました。」
すると咳払いが聞こえてきました。
「コホンコホン!従者が王様を探しております…」
扉の前に顔を赤くしてベテラン侍女のクラリイさんがたっていました。
カイ様は表情を一気に変え、キリッと凛々しい表情になると頭を下げるクラリイさんに小さく頷き部屋を去って行き、部屋にはクラリイさんと皇太后様と私の3人。私は二人に挟まれるように…して直立してると、クラリイさんは満面の笑みで私の頭をガシガシと撫でてきました。
「良かったわね、キキョウちゃん。」
「はい。」
私は小さく答えると、皇太后様は私に忠告をされました。
「離宮の外は敵だらけです。王の手を煩わせることがないよう…励みなさい。」
私は現実を突きつけられた気がした。
皇太后様のお姉様のお嬢様の件を思いだした。花嫁候補が現れてもおかしくない状況!私の存在が明るみに出れば…命を狙われることは間違いないのだ。それにまだカイ様の心に決めた人が誰かわかっていない、私はでしゃばらず、今の仕事をしっかり頑張ろう!
「はい!」
そう決めれば…私は兵隊のように敬礼して皇太后様に答えていたのでした。
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