若き竜の王様の寵愛

yu-kie

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 翌日、教育係の侍女頭から、朝礼にて発表がありました。…王の母(皇太后)付きの侍女の一人に選ばれたのです。

 まだ見習いはとれていない半人前の私は驚いてしまった…周りにいた侍女の先輩たちは私の目をみて教えてくれました。

「なんで私なんでしょう?」

「あなた何も知らないのね?その紅い目は竜の番候補に選ばれたものだけが持つものとされているの。皇太后様はその伝説を信じていらしゃるのよ。」 

(ああ、歴史の勉強で以前聞かされたことがある。先代の王の花嫁候補は紅い目の者がいなくて…皇太后と恋愛結婚されたとか…その前、先先代の王の花嫁候補は複数いたため、側妃も迎えて、眷族を増やしたとか…。)

「でも…」

 侍女頭は小さな子供に言い聞かせるように優しく私に言われました。

「キキョウちゃん、安心なさい、最終的には王に選ばれなければ、今のままよ。幼い頃に心に決めた方しか嫁にとらないと言われてるって噂よ。」

 なんだか心がもやっとしてしまった。だって昔幼い私に優しくしてくれたカイ様に会えるのを楽しみに侍女のお仕事に励んでいるのに…心に決めてる方がいるなんて…たぶんその方も紅い目の方なのかもしれない…

(若しくは、初恋とかなのかな?)

 私は頭の中の想像を無理矢理消すように首を振り離宮班の先輩方と離宮へ向かいました。



 離宮の複数ある空き部屋の掃除に取りかかり、使われてないためササッと済み、離宮班の皆さんといよいよ皇太后様のお部屋に挨拶に向かいました。

「皇太后様…今日より皇太后様付きの侍女見習いに入ります、キキョウ・サークライです。キキョウ、こちらへ。」

 私は離宮班の班長のベテラン侍女クラリイさんに呼ばれて、前に出て挨拶をすることになりました。

「キキョウ・サークライです。よろしくお願いします。」

 私は笑顔を心がけて深々と頭を下げ、首に掛けていたネックレスの宝石がちらりと胸元から顔をだしてしまい、慌てて服の中へしまいこむと…皇太后様が目を丸くして私をみていて…私は何かやらかしたのではないかと…変な汗をかいてしまって、先輩方は持ち場へと去ってしまい…私は皇太后様と二人きり、見つめあったまま沈黙が続いて…

(どうしよう、ネックレスばれたかな?取り上げられちゃうのかな?私の唯一の宝物、どうしよ、どうしよ。)

 興味津々に皇太后様は未だ私から目をそらしてはくれなくて…私はカチコチになったように直立して…先輩方が戻って来てくれないかと心の中で必死に祈っていました。

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