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しおりを挟む城の前の牧場の真上に現れた巨体の竜が空を旋回し、観衆の前で急降下。
ドオオン!
砂ぼこりが舞うなか、現れたのは騎士の身なりの青年だった。
「わああ~!!竜王様だ!」
「竜王ばんざーい!」
歓声が響き渡り…兵士達が整列して道を開け、城へ向かい歩みを進み始めた若き王に皆敬礼をし…国の復興が果たされたのだと理解し、若き王の姿に歓喜した。
+++++++++++
整列した兵士に守られ、開かれた道を歩む若き王様を目にした私は、ふと懐かしさを感じた。
+
5歳児だった私は当時…家を脱走して牧場に逃げ込み、身なりのよい少年と出会った。国の民は皆ブラウン系の髪色をしていて…その少年だけ、澄んだ青色の髪を伸ばしていた。
私は皆と違う鮮血のように赤い目をしていて…虐められて、牧場に逃げてきていたのを少年にみつかって…彼は私を乗馬に連れ出してくれた。
白い馬にまたがると…彼は包みこむように私を前に座らせ…彼は馬を上手に操作して、リズムよく牧場を駆け回っていた。
あれは侵略が始まる少し前の平和な時で、彼が王子だとわかったのは、この時、遠征から帰還した父が牧場に現れたから。
「王子、娘が失礼をいたしました。」
父に物のように担がれてつれて行かれるとき、王子は私にペンダントを首に掛けてプレゼントしてくれました。
小粒の赤い宝石が輝くネックレス。
「僕の名前はカイ・トーラス竜族の王子です。君の名前を教えて?」
「私はキキョウ・サーライです。」
「このペンダントは特別な人にだけあげれるものなの。キキョウは特別。だから誰にもあげないで?」
「はい!」
それから私はずっと肌身離さず身に付けるようになったのだった。
+
ふと5歳の頃を思い出して私は胸の奥が熱くなるのを感じた。澄んだ青色の髪を靡かせ颯爽と前を向き歩く姿はかっこ良かった。
私は目の前を横切るかれを目に焼き付けたくて彼…否、カイ様の顔をもっと近くでみたくて背伸びをしていた。
私は見えなくなるまでそれを見送り、その後、私たちは城の広間に集まり、王の英雄伝を語る宰相の話に皆涙ぐみながら聞き入っりました。これから先、末代まで伝わるだろうお話しは、すごかった。
『地下生活を続け国王は亡くなり…カイ王子は19歳で力に目覚められました。竜のお姿は勇ましく、魔力量は増大し…カイ王子と我等眷族の竜士団は動き出しました。カイ様の力から生まれた竜の幻影軍は略奪者を恐れさせ…カイ様は火を吹けば敵の軍勢は泣き叫び…士気をあげた我等には恐いものはなく、敵を追い払い、国を取り返したのです!』
宰相の叫ぶような最後の声に、皆歓声をあげ、勝利を祝った。
『…カイ王子は、新トーラス王国の王に即位されたのであります!トーラス万歳!新竜王万歳!』
「「「カイ竜王ー万歳!」」」
その声は…地響きのように土地を…城の壁を揺らし、皆の体に鳥肌がたつような喜びを与えたのでした。
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