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第2章【漆黒の騎士】
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しおりを挟む美術館内に招待を受けた客人たちが思い思いに館内をみてあるくなか、リュシンとマヤによる挨拶が始まった。
リュシンの挨拶のあと…婚約者のマヤの紹介と、マヤの挨拶が始まった。
「ザバス国の初めての美術館に館長として参りました。書籍の棚はこの通りまだ空きが多いのでご提供お待ちしてます!」
コバルトブルーのワンピースドレスの裾をつまみ上品にお辞儀をすれば…一同息をのみ…とたんに頬を緩ませた。
美術館のオープンセレモニーも終わり、一部の者を残して…マヤとハクシンの…入口での見送りを受け客人達は帰って行った。
その頃、奥の来客用の部屋にはルールアとピクシが席につき…商売の話を始めていた。興味のある魔女の国の王女とリュシンは壁際の椅子に座り見守るなか…見送りを終えたマヤが部屋に来た。
「そう…あと相談があるんです。信頼する貴女だから…出所を調査して欲しいものがあるんです。」
「…な、なんでしょう。」
「妹が薬を盛られたんです…」
二人をはさんで置かれるテーブルの上に焼き菓子の入った木箱が置かれた。
「妹が可哀想で…」
その様子を目にしたマヤはなにか言おうとして…リュシンがマヤの口を手で覆いみていてほしいと耳もとで囁いたため、マヤは渋々リュシンの隣の席でおとなしく座れば…ルールアは話を続けた。
ピクシは眉にシワを寄せ、ばれないように笑顔で答え…
「わ、わかりました。お調べしてわかり次第お伝えします。」
よよよっ、と泣くようにして顔を伏せたルールアを合図に、壁際に座る魔女の国の王女が席をたち二人の前に来るとピクシがしまおうとした木箱を手に取りクンクンと鼻を寄せて嗅げば…
「ピクシ殿…この匂いの薬を知っていますよ?私の国は優れた魔女達を産み出してきました…ジーハス国に派遣している魔女に獣化できない獣人のために薬を作りたいと相談されたことがあります。その主要成分を調合したものをお届けしていますが、この焼き菓子から同じ臭いがしますが…気付かれませんか?」
「えっ…ああ本当だ、わが国の者の中にそんなっ、直ちに国に戻って調査いたします。」
歯切れの悪いピクシの返事に、魔女の国の王女メイキが、鋭い眼差しでピクシを睨んだ。
トントントン
扉をノックする音がして、リュシンが扉を開ければ…縛られた褐色の男性を連れて現れたのは、ミーリアと彼女の婚約者の魔女の国の王太子だった。
「ピクシ殿…白状したらどうだ…」
リュシンの低く唸るような声に部屋一帯が静まりかえった。
「あっ!この方からお菓子をいただきました。」
マヤは立ちあがり首をかしげて扉の方に目を向けた。すると褐色の男は目を丸くした。
「え?人間に戻ってる!全部食べてないのか?」
「ええ。一枚目の焼き菓子を半分食べて体が変な気分になり始めたから…食べるのをやめたんです。ふふふ」
褐色の男は項垂れ、ペタンと床に座り込めば…ピクシは自棄を起こすように焼き菓子をメイキから奪うと食べ尽くした。
「その女の体を食べてやる…ぐるる~。」
ピクシは黒いメスの巨体の獅子になり、マヤへと飛びかかったのだった。
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