偽の暴君,漆黒騎士の許嫁です

yu-kie

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第2章【漆黒の騎士】

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 悪名高い『漆黒の騎士リュシン』は…マヤがザバス国へ来ることにより…彼の邪悪な印象は…徐々に変わって行くことに…。

 ‡

 ザバス国でのマヤの住まいは宮殿と併設された離れの屋敷にある女性の客人用の部屋のひとつが与えられた。

 美術館の開放は一週間後に控え、マヤはオープンまでの間、美術館に毎日足を向け、館内の奥にある書棚の前に置かれた椅子に腰掛け…展示物の歴史を読み込んでいった。

 その間も、リュシンは騎士として、団を率いて各地を駆け巡り、その日のうちに帰れるときは、朝と夕、いずれかの時間に、毎日必ずマヤの様子を見に来ていた。

 漆黒の騎士服姿のリュシンは、漆黒の髪を靡かせ…ダンダン!と力強い足踏みで存在感を際立たせ、すれ違う城に使えるもの達を睨むようにして(本当は目つきが悪いだけ)遠征から帰り、執務室にいる国王への報告を済ませると…マヤが待つ地下の部屋(美術館)へと足を運ぶのだった。

 ‡

そしてオープン初日、リュシンはマヤの姉ルールア王女と結託し交流のある国々の者達を呼び集めていた。

 美術館内に集まった者達は…リュシンが唯一良好な交流のある鍛冶かじの製造に盛んな国の王が来ており…あとは、ルールアのお茶会外交で仲良くなった魔女の国の王女と…ルールアのお茶会外交の席で知人を介して知り合ったジーハス国の王女ピクシも招待された。

 ルールアは特殊な薬の商談もしたい事を伝え…儲け話に飛び乗るようにピクシはルールアを疑うことなく招待を受けることに…。ピッシュ国のルールアのサインのある招待状を手にして…パープル系の色合いのワンピースドレスに顔を隠す同色のベールをつけ…従者を連れて現れた。

 ‡

「いよいよ今日から始まるのですね!」

 マヤはワクワクしながら美術館の入口でそわそわしながらリュシンの手をとり…満面の笑みで見上げれば、リュシンの顔はいつものように緩み始めた。

「ルールア殿はご友人が多いんだな…」

「ええ。姉二人は綺麗に着飾るだけじゃないんです。いつも外の世界に目を向けて…兄がいないですから、二人は国の有益のためにいろんな方々とお茶会を開いては…友人を増やしてきたんです。今日の事も…きっと関係しているのだと思います!」

「そうだね、あとは、姉も見に来ると言っていたし…城に出入りしている者たちもマヤ殿見たさに来るだろうな?」

「はわわわぁ!そうなんですね?私…どうしましょう。」

「いつものように正直にいてくれたらそれでいいんだよ?」

「…じゃあ、私も皆さんとお話しできるように頑張ります!」

「うん。」

そんな二人のやり取りの中、扉が開き、マヤの姉ルールアが顔をだした。

「さあ、皆さん集まってくれましたよ?主役は、館内の案内をお願いします。フフフ。」

淡いピンクのドレスワンピースのルールアは柔らかな笑みを二人に向けた。



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