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第2章【漆黒の騎士】
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しおりを挟む《12話より少し前》
リュシンは予定を空けた数日を使い、マヤのもとへとむかった。
籠の鳥状態のマヤが退屈していないか…退屈しすぎて一人どこかへ飛び出していないか…マヤの事を考えすぎた末、ようやくとれた休暇をマヤと過ごすためにフルに活用した。
‡
二人は久しぶりに町に出た。リュシンと共に馬車にのり、向かった先は、第一王女ルールアの婚約者…若き宰相の屋敷だった。
リュシンが来ると聞いたルールアは、ピッシュ国王の許可のもと、ルールアの婚約者に相談を持ちかけ…ミーリアと共に宰相の屋敷にてパーティーの準備をしてまっていた。
リュシンとマヤの乗る馬車が若き宰相、ヒルス・カイサーの立派な屋敷の門前に到着した。
賑やかな身内だけの宴にリュシンは気後れしながら表情を強ばらせ緊張していた。
パーティーの中盤、マヤは緊張しているリュシンを案じて庭の散策に二人でむかったのだった。
‡
「マヤ殿…あなたさえよければ…ザバス国に来ないか?」
「リュシン様…なにかわかったのですか?」
「ああ、君に薬を盛った奴の事はわかったよ、私を恨んでいる人間の一人だった。」
「…リュシン様は何をされて恨まれたとお思いですか?」
少し前を歩くマヤは歩みを止めて振り返り小首を傾げてリュシンを見上げた。
「5年前ジーハス国の王女が私との縁談を希望していると…話がでて…」
マヤはまっすぐ見上げ…うつむくリュシンを見つめていた。
「その方と何かあったと?」
リュシンは気不味い表情で…まっすぐ見つめるマヤから目をそらしそうになるなか、リュシンにとって…乗り気ではなかった縁談が白紙になったことを告げると、マヤは思いもよらないことを答えた。
「…好かれることは悪いことではありませんよ?恨まれたなんて…悲しすぎます。」
ジーハス国の王女ピクシの事を思いマヤはホロホロと涙を流した。
(ピクシ王女は現在、未婚で内縁の夫もいると聞く。縁談のあったあの頃は、ピクシ王女は多くの配下をタブらかしていたんだ…ああ、マヤに話しても自分の目で確かめなくては信じてはくれないだろうな。マヤ殿はピクシのために涙を流して…なんて優しい姫君なんだ。そんなマヤをひどい目にあわせたピクシ王女…!許せるものか!)
リュシンは前にかがみ、悲しむマヤをギュッとその胸に閉じ込めるように抱き締めた。
「リュシン王子殿下…私にいい考えがありますわ!」
そこ…茂みから聞き耳をたてていたルールアが現れた。マヤをひどい目に遇わせたピクシに一泡ふかせてやりたいと目論む彼女はリュシンにひとつ提案をした。
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