偽の暴君,漆黒騎士の許嫁です

yu-kie

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第2章【漆黒の騎士】

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 リュシンはザバス国王に呼ばれ執務室に向かい通路をズンズンと力強い足踏みで進むと部屋の前で立ち止まった。

「国王陛下!リュシンです。遠征よりただいま戻りました!」

「…!はいり…たまえ」

 リュシンは勢いよく扉を開ければ、執務室の机を前に資料に目を通していた国王がびくつきながら慌ただしく資料を束ね縁に寄せリュシンに椅子に座るように促した。

「リュシン、お前が手配した使いの者から調査報告書が回ってきたが…」

 椅子に腰掛けたリュシンは、マヤに薬入の焼き菓子を渡した男のその後の消息が途絶えているため…獣化の薬の出どころを調べさせることにした。

 その調査から、獣化の薬を作った場所が判明した。それが…ジーハス国だった。そして、門番の話によれば、マヤが発見された日、拐おうとした褐色の肌の男はピッシュ国の門を抜けると、1本の長い道を左へと馬車を走らせていたとか。馬車の車輪には、見慣れない紋様が刻まれ…後日ジーハス国の紋様であることが判明した。刻まれた黒色の蜥蜴は…ジーハス国の国を現す物だった。

「リュシン、いくら証拠があったとしても…ジーハスを問い詰めることは難しいぞ?」

「わかっています。今は我が…ザバス国はジーハスと敵対関係にあり、ピッシュ国よりも彼らへの警戒も強いかと…マヤ王女の自由を考えればこちらで保護するのが得策だと考えますが。」

「何を言い出す…」

「私は本気です。」

「おまえ、もしかして…犯人を誘い出すつもりか?」

「そうですね…ジーハスのピクシ王女を…『マヤとの婚約発表』の席に招いてみても良いかもしれませんね。」

リュシンの瞳は偽りの無い…怒りに満ち、鋭い眼光を目にしたザバス国王は…背筋に悪寒を感じ…リュシンの背後に黒いオーラを目にした気がしたのだった。
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