偽の暴君,漆黒騎士の許嫁です

yu-kie

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第1章【許嫁の始り】

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(あ…私の部屋だ。…肉食の動物になっちゃったから…命を狙われて…逃げて…あ、お腹が空いていて倒れたんだよね?お菓子くれた…珍しい褐色の肌の男の人がまた現れたから捕まったらダメだって思って、怯える演技したのはいいけど…あの人、あのあとどうなったのかな?)

 人の姿に戻ったマヤは寝返りをうち、視界に入る手足が人のものであることを確認し…起き上がりベッドから降りると、壁にかかる等身大の鏡の前に立てば…寝間着姿のマヤの姿が写し出された。

「良かった~戻ってる!」

マヤはクローゼットから服を取り出し着替えを済ませ…クリーム色のワンピース姿になり、部屋を飛び出したのだった。

 マヤが向かったのは父が仕事をする執務室。部屋の前までくると、中ではリュシンとピッシュ国王の会話する声が漏れ出ていた。

「リュシン王子、何を言い出すんだ?」

「私のせいで彼女はあんな姿にされたんです…私と婚約さえしなければ…私がもっと慎重にできていれば、姫を巻き込まずに済んだはず…」

「婚約を破棄しろと?」

「はい…今回彼女は獣化の菓子を1枚を半分だけ食べたことで…獣化しても人格を保てたのでしょう。もしも、中身を全部食べていたら……」

 マヤは深呼吸すると、部屋に向けて声をはっした。

「お父様、マヤです!お部屋に入ってもよろしいですか?」

「…ああ。入りたまえ。」

 中からのピッシュ国王の返事を聞いたマヤはドアを開け、執務の席につく国王とその前に立つリュシンが振り向いた。

「お父様、リュシン様、この度はご心配をお掛けしてすみませんでした。私はもう元気ですから心配しないでくださいね?ところでお父様、私はどれくらい寝ていたんでしょうか?1週ぐらい獣で過ごして…兎や鹿と戯れてました…友達になって…彼らと同じものを食べて過ごしたんですが…獣は嫌ですね、狩りなんて残酷なことは私には無理でした。」

 マヤは舌を出して首を傾げ、いたずらっぽく苦笑いした。

「リュシン様、私は大丈夫ですから、婚約破棄なんて言わないでくださいね?あれくらいのこと…楽しまなくちゃ損ですよ、ふふふ。」

 何事にもへこたれないマヤの姿にリュシンは…少し申し訳なさそうにマヤを見下ろし…目の前に歩み寄る姿をめにすれば、思わずその手を伸ばし…マヤの頭をくしゃりと撫でた。

「君がそれでもいいと言ってくれるなら…そうしようか…。」

「はい。」



 こうしてふたりの婚約は、なんとか…継続となったのだった。 


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