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第1章【許嫁の始り】
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しおりを挟む姉たちの助けもあり、生地と、採寸測りも済ましてマヤは足早に部屋をあとにした。
広い宮殿内は身内と宮中に使えるもの、今回のようにこちらから頼んできてもらった者以外は入ることを禁じられた。リュシンもまた、オファーなしにマヤに会いに来たため入ることができず、宮殿の外に広がる庭で会うことになった。
「リュシン様!お待たせしました!」
琥珀色の瞳を輝かせ、瑠璃色の髪を靡かせ駆けてくるその頭には大きなパールホワイトのリボンの髪留めが存在感を主張させ…前回会った時に感じた【可愛らしさ】より倍増し…、リュシンの瞳に映るマヤはとても魅力的に思えた。
漆黒の髪のリュシンは藍色の瞳を丸くし、釘付けになり、暫し硬直したのち目の前に佇み、不思議そうに上目使いに見上げるマヤがいた。
「リュシン様、庭を案内しましすね。」
マヤはリュシンのてをとり、引っ張るように先を歩けば、リュシンは表情は無愛想なものの…動揺し、マヤにリードされながら庭を散策した。
「マヤ殿は姉君達となかが良いんだな。」
「ええ、年が離れてますから…。でも私は姉様達と違ってお洋服や華やかな場所にはあまり興味がなくて、じっとしていられないのもあって…今回婚約したのでお祝いの宴をすることが決まって…普段の地味な服装ではいけないからと世話を焼いてくれています。」
「……私とは生きてきた世界が違うな…君は愛されている。」
リュシンは少し寂しげに呟けば、マヤはリュシンと繋ぐてに力を込めた。
「これからは同じ世界で生きて行くんですよね?」
少し先を歩くマヤは立ち止まり、リュシンを見上げた。
「…リュシン様は愛されてないと思いますか?」
「陰で…暴君と噂されているのは知っている…親や、兄も姉も…皆、怖がってる。」
「ん~、難しくてなんとも言えませんが…周りを気にしすぎではないですか?」
「え?」
「心配なら私が【愛情】いっぱい注ぎます!」
マヤは満面の笑みで恥じらうことなくリュシンに告げれば…リュシンの心臓に見えない矢がぐさりと刺さり、リュシンはマヤに惚れてしまった。
…とうの本人は、リュシンとは少し違い、家族の愛情の意味合いで使っていたが…リュシンの中では結婚を意識する…貴重な言葉だった。
この日の出来事は、二人の距離を急速に縮めていった。そして…リュシンが去った日、リュシンを怨む者の影がマヤに迫ってきていたのだった。
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