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第二部 約束と目覚め
美術館の招待状
しおりを挟む誕生日会の席上、バレシア家と親交の深い絵画の収集家青年ロバン・バオダーが領地に美術館を建てたと宣伝を始めた。
ガーベラの父とシュアンは部屋の隅で仕事の話をしていた時の事だった。
「…というわけで、今度開館記念パーティーを行いますので是非おこしください。」
「「まあ、素敵」」
席に座る婦人達は瞳を輝かせていた。
「主人と行かせていただきますわ。」
招待状を受け取った婦人達は絵画の話に盛り上がる中、ガーベラにロバンが声をかけた。
「ガーベラお嬢さん、婚約者様とどうでしょう。」
「シュアン様はあの通り今治安を守るために走り回ってみえるので…難しいかと。」
ガーベラはちらりとシュアン達の方へと目を向けてロバンに答えると、ロバンは残念そうに差し出した招待状を手元にもどした。
ガーベラの視線にシュアンはしっかり気がついていたが、ガーベラの父と大事な仕事の話をしていたため、身動きできないまま、お茶会の終盤が近づく頃領主との話を終え、急ぐように一人の青年の前に駆け寄った。
「ロバン・バオダー殿、」
「ひっ、あ、いや…これはこれはガーベラ様の婚約者様」
「お初にお目にかかる、私はシュアン・サーライス。シズアナ領第1騎士団長をしています。失礼ながら先程、ガーベラ嬢との話を耳にして…可能であればガーベラ嬢に渡す予定だった招待状をもらうわけにはいかないだろうか。」
「おやっ。お忙しいと聞いていますよ?」
「はい…しかし休暇ならとれます。いつも休みも仕事を入れてしまってますが…このままでは行けないと気がつきました。」
「なるほど…招待状を一枚無駄にするところでしたが、婚約者様が受けとってくださるのでしたら喜んでお渡しいたします。ふふふ。」
「必ずお二人でお越しください。精一杯のおもてなしをさせていただきます。ちゃんとレディをお誘いするんですよ。」
「…必ず。無理を聞いてくださりありがとうございます!」
こうしてシュアンは招待状を受け取り深々と頭を下げ、青年ロバンはそんなシュアンに手を振り…ガーベラより大人びた女性達に囲まれ、屋敷を去って行ったのだった。
そしてシュアンはお茶会の席に残るガーベラを探しに動き始めた。
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