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第一部 婚約と契約
帰還の途中 2
しおりを挟むガタガタガタ。
「ヒヒ~ン」
馬車が急停車し、衝撃で馬車は強く揺れガーベラは馬車の窓に体をうちつけ倒れ込んだ所に隣りにいた侍女のメイサがガーベラを抱きしめた。
「一緒に来てる護衛が襲撃を受けているみたいだ。ガーベラ嬢は彼女と中で待っていてください。」
「待ってシュアンさん、相手は低級魔族ですよ…気をつけてください。」
「今の私はあなたと共に聖女様から祝福の力を授かってますから大丈夫です。ここは私にお任せください。」
シュアンは二人を残し馬車を降りると腰にさす剣の柄に手をかけた。
ガーベラが馬車の窓から覗き込むその先で、シュアンの足元に白い光の円陣が現れ…剣を抜き、身構えるシュアンのその剣先は白くキラキラと輝き始めた。
『こいつ魔王様によく似ているじゃないか!』
『似ているが!こいつは違う。魔王様が与えた印を感じない』
『中だ!』
窓から覗くガーベラの目はその光景に目をそらせずにいた。ガーベラの目に映るそれは…黒いふわふわと舞う黒い粒の集合し何体かの黒い熊のような獣となった。
(聖女様からあまり力を使わないように言われたのはこの事をしっていたから?魔王がつけた印は魔王が何処にいても見つけられるようにつけたんでしょ?なら印から魔王のつけた『何か』を魔族は感じ取るかも。昨日の一件で魂の本来の力が出てしまったから余計に…?)
「黙れ小物。馬車に近づけさせるものか。消えろ!」
とびかかる獣達の攻撃を避けてはその剣を振り下ろし、獣の姿の魔族は次々に浄化され白く光り消滅していった。
馬車の窓からじっと外の様子を見守るガーベラは初めて見るシュアンの剣を振り舞う様子に今までにない感情が湧き上がっていた。
(なんだろう、シュアンさんがとてもまぶしく見える。ドキドキしてきた…)
「メイサ、シュアンさん見ていたらドキドキして…戦ってるシュアンさんが眩しいの…私どうしたのかな?」
「は~ん、さてはお嬢様『恋』に目覚めたのかもしれませんよ。おめでとうございます、お嬢様。」
「恋?これがあの…恋だと。」
「ええ。間違いございません。」
「恋…」
二人がざわつくなか馬車の扉が開かれシュアンがガーベラの姿を見てふと厳しい表情が緩んだのだった。
「ガーベラ嬢、ご無事で。」
「あっ、はい!シュアンさんのお陰です!ありがとうございます。」
「契約を交わし…魔族がついてきやすくなったのかもしれません。これからは護衛も魔術を使える者を選ばないといけないですね。」
椅子に腰掛ける際少し前かがみになったシュアンはその際、ガーベラの肩に手を伸ばして数秒髪を撫で…席についた。
シュアンに意識し始めたガーベラはその動作に更にドキドキを増し顔を赤くし俯いたのだった。
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