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第一部 婚約と契約
帰還の前の夜 2
しおりを挟む私、ガーベラは本邸に戻るサーライス家の皆さんをゲストハウスから見送るために扉の外に出ると、シュアンさんの兄もクド様がリボンのついた小さな長い箱を私に差し出されました。
「危ない、渡し忘れるところでした。これは私の気持ちです。」
「あの…これは?」
「何もわからずに、愚弟シュアンの婚約を受けてくださった…私からのお礼です。」
私は箱を前に…クド様のあの仮面のような笑顔の意味を理解しました。
(愚弟だなんて…何を企んでるのかな?嫌な予感しかしない…)
クド様が去り私はゲストハウスの寝室に向かい箱のリボンの結び目に飾られた黒い石に興味をいだきをで触れた。
『ケケケ』
「えっ?」
『女のガキか…』
「魔族?」
私の前に現れたのは黒い小さな狼のような獣。目は紅く、魔族の印である紅い一角の獣。低級魔族の中でも人間に召喚される事の多い魔族。前世の記憶にその魔族は現れていて…その魔族の好物は未婚者で異性との交わりのない血肉。
(なるほど…私を消してシュアンさんの立場を悪くさせるつもりね。)
『あまり怖がらないな、時間がない今喰らってやる!』
一角の獣は裂けるほどに口を開けて私の肩めがけてとびかかった。
「ガブ!」
「ひぁっ!」
噛みつかれた瞬間全身に電気か走り胸に浮かんだ白い薔薇が白く輝き獣は弾き飛ばされました。
瞬間、私の体内が熱を持ち、胸に浮かんだ薔薇が消えてすぐ…聖女様が話されていた自分の能力が覚醒してゆくのを実感…
「思い出してきた…私の能力…今の私からどんな形に変換されるのかしら…かつての魔剣は何に変わるのかしら」
私が空に翳す手のひらから私の名と同じ色とりどりのガーベラ(花)が現れていて散って、それは渦を巻いて虹色のステッキに姿を変えた。
「素敵。頭に浮かんでくる…聖女様がくれた浄化と祝福の力に影響を受けたのね、さて魔獣サーガ、消えゆく時に契約者に伝えなさい、ガーベラとシュアンさんに手出しをすればあなたのしたことをバラすって!」
私はステッキを振り下ろせば、白く光る電撃が放たれ魔獣はバチバチ火花に襲われて…狼の姿が徐々に消え始めるなか、逃げるように私から去って行った。
翌朝私とシュアンさんの出発を見送るサーライス家の皆さんの中にクドさんの姿はなくて、シュアンさんの話によれば、わけも言わず許してくれと何度もシュアンさんに言い見送りを控えたのだそう。
馬車にはメイサと私とシュアンさんが乗り込み、荷物が増えて重くなった馬車はサーライス家の皆さんに見送られて出発したのでした。
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