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第一部 婚約と契約
聖女に会う・前日
しおりを挟む移動中、私は赤ちゃんの頃からお世話になる…母親と歳が近い侍女のメイサと外の景色を見ては興奮していた。
「見て!山脈がみえるわ!」
「あれは、アルトス領とシズアナ領の堺にあるヤナニア山脈でございます。」
「見て動物の群れよ!」
「あれは放牧というものです。」
「放牧?」
「農場で飼育されている動物の運動中です。」
私は見るもの全て新鮮でメイサにたくさん質問し、その都度メイサが教えてくれたのだけど、シュアンさんは変わらず険しい表情のまま、私が見ている窓と反対側の窓の外を細める目で眺めていました。
‡ ‡
ガーベラたちを乗せた馬車は途中休憩を何度か挟み、1日かけて王都にやってきた。
日も暮れ始め、やってきたのはサーライス家、シュアンの産まれ育った家に今晩泊まることに。
代々王に仕える騎士の家系、王国星騎士団の地位を守るサーライス家の屋敷は広い敷地に要塞の様な屋敷と、もう一つ来客の長期滞在用の別棟があり、ガーベラは出迎えた執事にそこへ案内されたのだった。
「ガーベラ嬢、また明日迎えにあがる。それまで体を休めてください。」
シュアンはガーベラにそう告げると一礼しサーライス邸に入っていった。
「中には使用人がおります。不自由の無いように準備しておりますので、こちらに滞在の間はおくつろぎください。私はここで失礼いたします。中のことはこの者が案内をいたします。」
執事が指す方向、別棟入口から現れた黒いワンピースの女性がガーベラに深々と頭を下げた。
「別棟…ゲストハウスの管理をいたしていますピナ・クリップと申します。よろしくお願いします。ご案内いたしますのでどうぞこちらへ。」
「ガーベラ・バレシアと、侍女のメイサです。よろしく。」
「はい。お部屋の案内が終わりましたら、メイサさんには、今後の打ち合わせをしたいのでよろしくお願いします。」
ピナはメイサにやや緊張しぎみに視線を向けるとメイサは柔らかな笑みをむけた。
「わかりました。」
こうして室内の案内が始まり…最後にガーベラの使う寝室を案内され、ピナとメイサが部屋をあとにし、ホッとしたガーベラはベッドの隅に腰掛けた。
「明日はようやく聖女様に会うのね。どんな話があるんだろう。」
不安になりそうな気持ちを消そうと…ガーベラは良いことであることを願うのだった。
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