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第2章命懸けの愛《終》
深緑の魔女の力①
しおりを挟むヅコーン‼
バキバキバキ‼
リーシャは集会所の屋根を突き抜け空に浮遊した。
あとから続いてサーシャが足に根を生やしてとびだしてくる。
体はまだ、変化はないが足元は進化をはじめた。黒い邪悪な霧が彼女を覆い…残忍な表情のサーシャが次から次に攻撃魔法を繰り出してきた。
小さな石の粒が浮遊し黒い霧をまとい魔剣の短剣となって雨のように無数に飛び交う。
「《闇の突風!》」
リーシャが発動した魔法に、魔剣は動きを鈍らせて…その隙に次の魔法を繰り出した。
「《深緑の恵みの風》」
リーシャの回りに地上からポコポコと出現する幻想的な無数の光の粒が体を纏い…風が渦を巻くようにリーシャを包む。
その光の粒は風にのりリーシャを包み…
リーシャがサーシャに向けて右手をかざした瞬間風は光の粒をのせ、突風となり襲いかかる。
無数の粒は矢の形となり魔剣にぶつかって…魔剣は無力化して塵になり次々に消えて行くなか…僅かにリーシャの周りに浮遊する光の粒が記憶を脳裏に伝えてきた。
※
『深緑の魔女…いつものように歌っておくれ…優しい子』
その光の粒から聞こえるのは母様からよく聞いた言葉だった。
リーシャは再び風を纏い風にのって舞う光の粒が深緑の葉へと変わる。
リーシャを覆い隠していった…。
(難しいことはわからないけど、母様は私に自由になりなさいと言った。私はそのままでいいとよくいってくれたなぁ。)
リーシャがサーシャと大樹を思い歌を捧げる。
優しく透き通った声。
サーシャの歪んだ心に呼び掛けるよう。思い出を語るよう。懐かしむよう。
過去に戻れなくとも、森にいたときのように穏やかにすごし、たまに悪戯をして、人間を困らせ遊んだあの頃の気持ちに戻れば、私たちはきっと穏やかに過ごせる。
そんな思いを込めて歌った。
「ああ、リーシャ。」
地上では、騎士達が慌ただしく集会所を離れ距離を置いてリーシャとサーシャを見守るなか、リャフスはメイスに体を支えられ…兜を脱ぎその光景をその目に焼き付け…自身の体が熱をもつのを感じていた。
(危ない真似だけはしないでくれリーシャ。)
「リャフス、安全な場所に移動しよう。」
リャフスは後ろ髪を惹かれる思いで足取り重くその場を離れた。
空を舞う彼女は【深緑の魔女】の名のとおり、その体には深緑の編み上げた冠を頭につけ、深緑のワンピースを身に付けていた。
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