蒼炎の騎士と小さな許嫁

yu-kie

文字の大きさ
上 下
16 / 19

16

しおりを挟む

 神殿の賓客用の部屋で朝を迎えたミントは、1人用の小さな丸テーブルを前に椅子に座りゆっくり食事を終えたミントは直ぐ側にある窓から聞こえる声に席を立った。

「婚約者のハデル・リアーナだ!サウス伯爵のミント嬢を迎えに来た。」
「ようこそ、お越しくださいました蒼炎の騎士様。さあさあ、中でお待ち下さい。」

 ミントはその声に、慌てるように綺麗にされた騎士服に袖を通した。

「ミント様、蒼炎の騎士様がお迎えにみえました、ご準備整いましたら外に…」
「わかりました。」

 前日の汚れも無いミントを目にした者達は、その幼さが残る可愛らしい少女の凛とした騎士服姿に息を呑む。

 ミントは、神殿に仕える者達に見守られながら神殿をでた。

 外には直ぐにでも出発できる状態で待つ、護衛の騎士は馬にまたがり、ミントの竜も、主の登場を前に駆け寄りその背に飛び乗った。

「ミント嬢、迎えに参った。これから滞在先を案内する。」
「はい!」

 神殿の門前で既に…馬に跨り鎧姿のハデルと同行する騎士が待ち、ミント達が動き始めると先導するように、先を進み始めた。

「主~なんかあの人、挨拶の距離遠くないかな?」
「そう?」
「婚約者なのに?僕なら会えたら嬉しいから飛んでくぞ!」
「ふふふ。」
「なんでわらうんだよ~!」

 先導するハデルや周りの人間にミントの竜グルの言葉は聞こえない。ただ、喉を鳴らすような小さな声が聞こえるだけ。

 ハデルはグルの鳴き声に反応するように言葉を返すミントの様子が気になり思わず声をかけた。

「ミント嬢、何かあったか?」
「いえ、私の竜と会話を。」
「そうか…」

 ハデルはそう返すと再び先を進み始めた。

 ハデルは竜と会話していると言う不思議な状況に動揺していたが、兜を被っているため、周りには動じていないようにみえ、素っ気ない返事のあと、ミントに声をかけることなく黙々と先を進む様子に皆、違和感を抱く事は無かった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

子連れの界渡り

みき
恋愛
田辺 由紀(39) 〔旧姓 五ノ井〕 私には2才になる愛娘がいる。 夫と結婚して8年目にしてやっと授かり、12時間かけて産んだ可愛い我が子。 毎日クタクタになるまで家事と育児を一生懸命頑張ってきた。どんなに疲れていても我が子の笑顔が私を癒してくれていた。 この子がいればどんなことでも頑張れる・・・そう思ってしまったのがいけなかったのだろうか。 あの人の裏切りに気づくことができなかった。 本日、私は離婚届に判を押して家を出ます。 抱っこ紐の中には愛らしい寝顔の娘。 さぁ、娘のためにもしっかりしなきゃ! えっ!?・・・ここどこ? アパートの階段を下りた先は森の中でした。 この物語は子連れの元主婦が異世界へ行き、そこで子育てを頑張りつつ新たな出会いがあるお話です。 ☆作者から読者の方へ☆ この作品は私の初投稿作品です。至らぬ点が多々あるかと思いますが、最後まで温かく見守っていただけると幸いです。また、誤字脱字がございましたらご指摘くださいますようお願いいたします。

夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話

束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。 クライヴには想い人がいるという噂があった。 それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。 晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。

そのご令嬢、婚約破棄されました。

玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。 婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。 その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。 よくある婚約破棄の、一幕。 ※小説家になろう にも掲載しています。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

私の完璧な婚約者

夏八木アオ
恋愛
完璧な婚約者の隣が息苦しくて、婚約取り消しできないかなぁと思ったことが相手に伝わってしまうすれ違いラブコメです。 ※ちょっとだけ虫が出てくるので気をつけてください(Gではないです)

はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ
恋愛
 姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。  婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。  こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。  そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

妹は奪わない

緑谷めい
恋愛
 妹はいつも奪っていく。私のお気に入りのモノを……  私は伯爵家の長女パニーラ。2つ年下の妹アリスは、幼い頃から私のお気に入りのモノを必ず欲しがり、奪っていく――――――な~んてね!?

処理中です...