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しおりを挟むこの日久しぶりにスティアが屋敷に帰ってきた事もありリューイに招待されたライカは、彼の好意により夜が更けてもメディアン邸の食事の席で酒を酌み交わしていた。
食事を終えたスティアは、男同士の会話に入れず席を外し、狼姿のキラルとルルとキキと自分の部屋のベットでくつろいでいた。
いつの間にか三匹は眠り始め、スティアはまだ眠れそうにないため、部屋を出ると厨房へと足を向けた。
「のどが渇いちゃった。」
スティアは厨房でリューイとライカの為に執事がせっせとお酒に合う料理を運ぶ準備中。厨房の丸い小さな椅子に腰掛けコップに注いだ水を飲みながら眺めていたが忙しそうに思えて執事を手伝うことにした。
「バース、私もお手伝いします。」
「ですが!」
「許嫁様を饗すお手伝いならお父様やお母様も喜ぶと思うんです。念の為にバースが部屋に入ってすぐお父様に、私の事を伝えてくださる?良い反応なら私もあとから部屋に入ります。」
「かしこまりました。お嬢様はお優しい、バースは感動しております。」
「ふふふ。さあ、急ぎましょ。」
「はい!」
スティアが厨房をでるとそこには寝ているはずのキラルが人の姿で仁王立ちしていた。
「お嬢様、私を置いて行くなんて。どこに行かれるのです?」
「執事がお父様とライカ様の饗したいので、お手伝いを。」
「バース殿はお嬢様を寝間着同然の姿で行かせるおつもりですか?」
「あっ。」
バースが言葉に詰まると、キラルはスティアの肩に両手を添えた瞬間、スティアの夜着姿は一瞬で空色のドレスに姿を変えた。
「ひゃんっ。」
「お、キラル殿~流石でございますな。」
「ふふ~ん。お嬢様をよく見せるのが私の役目ですから。」
キラルは鼻息荒く威張ってみせた。
「スティアお嬢様、私もついてゆきます。」
「うん。」
「では参りましょう。」
こうして3人はリューイとライカの居る部屋へと向かった。
††††
「失礼いたします。旦那様、お嬢様がライカ様を饗したいといらしてます。」
「おお、スティアが来てくれたのか。」
「失礼します。スティアです。」
執事に続いて部屋に入るスティアとあとに続くキラルは席につくライカにいつものように敵意に満ちた視線を向けた。
「余分な奴が…」
ライカは可愛らしく着飾り現れたスティアにニヤけかけて、キラルの殺意のこもる視線に気が付き火花を散らし睨み返した。
スティアは執事を手伝い持ってきたお酒の瓶を執事の用意したディカンターに入れた。
「私もお酌したかった。」
スティアの呟きに執事は微笑んだ。
「お嬢様はまだ大人ではありませんから、よいのですよ。」
それを見ていたリューイは執事のてからグラスに注がれたお酒を飲み干すと、スティアに告げた。
「スティア、今日はライカ殿下にはお泊りいただくからね。」
「へっ。そうなんですね!」
スティアは嬉しくて思わずぴょんと跳ねると、ライカはニヤケる顔を隠すように口元を手で覆った。
「スティア嬢、明日の朝は少し時間があると思いますからお庭でも案内してくれまか?」
「はい!」
スティアは更にぴょんぴょん跳ね、リューイはほろ酔い気分で陽気に笑い、スティアは執事と共に部屋をあとにした。
「おやすみなさい、お父様、ライカ様。」
「ああ、おやすみ。」
「お母様は?」
「つわりがひどくてね、先に休んでいるよ、もう寝ているだろうから静かにね。」
「はい、お父様。」
スティアはお辞儀をして部屋をあとにし、後ろに付いて歩くキラルがスティアの背中をぽんと優しく押せば魔法が解け、スティアは白いワンピースの夜着姿に戻り、執事とライカに挨拶をすると自分の部屋に入っていった。
「バース、キラル、おやすみなさい。」
「「おやすみなさいませお嬢様。」」
二人はそのまま厨房へと姿を消した。
「バース殿、手伝い代わりにハムの残りを内緒でくれるか~?」
「ふぉふぉ。今日は素敵な魔法を見せてもらいましたからなあ~内緒ですぞ。」
「はいはい!そうと決まれば早く厨房へ!」
ハムが好きなキラルはバースに餌付けされ、バースと仲良くなり始めていたのだった。
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