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しおりを挟むこの日、スティアは狼のキラルと屋敷の外で兵士達に囲まれていた。
「スティア様小さくなろうがこの狼は集落を荒らした狼です!領主さまが今この狼を捕まえるために北の砦で話し合っている最中です。領主さまがお戻りになるまで、その狼は檻で預からせていただきます!」
「グルル~!」
「待ちなさいキラル。悪いことをしたなら反省して、ちゃんと言うことを聞いて。ルルもキキも最初檻で反省してもらったの。」
狼のキラルは、人前では決して人語を話さず、スティアに挨拶代わりに額の角をスティアの肩に擦り寄せたあと、背中を向け、兵士達が用意した檻へとトボトボと入っていった。
「スティア!怪我はない?どうしてあなたばかり恐ろしいモノに好かれるのかしら?でも、怪我がなくて良かった…」
ルティーはスティアヘ駆け寄ると泣きながらスティアを抱きしめ、スティアも母の胸に頬を寄せ、手を伸ばして抱きしめ返した。
「心配かけてごめんなさい。」
††††
この日の夜遅く、知らせを受けて飛んで帰ってきたリューイは、スティアに遭遇したおおきな狼は、小さくなってスティアに懐いたのだと執事やルティーから話を聞いた。
「ルティー、スティアはもしかしたら獣使いの能力があるのかもしれないよ?」
「まあ~、心配ですわ。スティアにはライカ殿下と言う婚約者がいるのに。」
夫婦の部屋のドアがノックされ入ってきたのは白いワンピースの夜着のスティアが現れた。
「お父様、私の話を聞いて下さい。」
「おおスティア、どうしたんだぁ~?」
扉の前に駆け寄るリューイはスティアを部屋へと迎え入れた。
「お父様、実は私動物とお話ができるみたいなんです。今日お友達になった子が悪いことをしたって、だから謝りに行きたいんです。じゃなきゃ、この子は一緒にいられないでしょう?お父様、お母様。」
「なんて優しい子なんだ。」
「なんて優しい子なんでしょ。」
二人は同時に歓喜し、スティアは両親に抱きしめられ、その日の夜は久しぶりに3人一緒のベッドで眠りについた。
スティアは前世が《魔王》だと記憶はあっても彼女の人格は今の世で産まれたもの。どこまでも平和にこだわる、優しい子。
スティアは両親の愛情に包まれ、幸せそうにすやすやと穏やかに夢の世界へと落ちて行った。
《翌日にライカとキラルは対面する》スティアの寝顔を見ながらリューイはライカがどんな反応をするのか、不安でどうしたものかと、翌日の事を考え眠れずに朝を迎えてしまったのだった。
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