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しおりを挟むリューイがライカと砦の視察に回る途中、リューイの少し先を警戒しながら馬を走らせる騎兵隊の一人が二人のもとに駆け寄った。
報告によれば、北の砦の近くにある集落に白く大きな狼が出現したのを見たとか。一行は少し先にある集落に到着した時には住民は既におらず、家畜は食べられていたり、逃げ出して集落から離れた場所をさまよっていた。
様子を見に来たリューイは、集落で被害の確認をしている兵士達に何が起きたのか説明を受けた。
――集落に接近する大きな狼を目撃した住民は避難しようと集落を離れ移動中、巡回していた騎兵が住民と合流し、住民を北の砦に誘導し、残った騎兵隊は集落に来ると家々を荒らす狼に弓を放ち負傷。狼は風のようにあっと言う間に姿が見えなくなった――
「……というわけでございます。」
「あい解った。私はこれから北の砦に向かい策をねる。何か変化があれば砦に伝えるよう。」
「承知しました。」
リューイは、ライカと騎兵隊と(護衛に連れている)共に北の砦へと向かった。途中通過する畑や林の広がる地域は、ここ1年隣国からの野盗の侵入が増えている場所で、2ヶ月前リューイが負傷したのもこの地域だった。
「リューイ殿…警戒区域に入ります。」
国境を守る辺境の領主は常に危険と隣り合わせ。国の中心地への敵や不審者、魔獣の侵入を防ぐのが役目である。
王からの勅命で、ライカはその辺境の領主リューイと常に行動をともにし、右腕となり時には護衛となるよう任されここにいる。
<白薔薇>の騎士の称号は孤高の騎士となり辺境の地へ征く、側妃の子であるまだ幼さがわずかに残る若き騎士の第5王子のライカに国王が願いを込めてつけた名である。
ライカはそんな父の思いに答えるため、リューイに怪我を負わせてしまった事を悔いていた。今もその思いを引きずりながら、辺りを警戒しながら馬を走らせた。
「この辺りか。」
「ええ。」
騎兵隊を連れてリューイとライカは先を急ぐ中、林の道を抜け、リューイを狙う暗殺者集団が茂みから現れた。
ライカは馬を自在に操りリューイを守るように剣を振り上げ敵の攻撃を防ぎ、もたついた騎兵隊の馬に飛び乗り空きを付いて現れた襲撃者を切り倒していった。
「リューイ殿、大丈夫ですか?」
「お陰様で傷1つないよ。さて、砦まですぐそこだ。」
一行は急ぎ砦へと向かい、犯人達はその後砦から来た兵士に回収、後日聴取が始められたのだった。
北の砦で、リューイが狼の出没情報をまとめている頃…
スティア・メディアンの前にもふもふな客人外が現れた。特大サイズのもふもふに、スティアは両手を広げて抱きしめた。
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