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魔女を妻に迎えるまでの話

1 序章

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 額に金色の四つ葉模様を持つ白猫は、今日も森を守るために木々の枝をぴょんと飛んで渡り歩いていた。

 森には遺跡が点在し、国宝級の財宝も眠ると噂されている。その森を荒らされることがないよう、森の守り人に異国から来た魔女が選ばれ、彼女は仮の姿である白猫となり巡回していた。

 そんなある日、藍色のローブを身に付けた魔導士が森へと迷いこんだ。

 「くそ~!はめられた!」

 ローブの男は足を引きずるように森を歩き、男の歩いた後には紅い液体がポタポタと落ちていた。落とされた液体の匂いは森に住む肉食の獣たちを引き寄せた。

 男が気づいた時には、森の狼に囲まれ、男は命の最後を悟った。その時、森の木々がざわざわと揺れ始め、不気味な猫の声が森に響き渡ると、狼達は男から離れていった。声の主が木の枝から地上へと飛び降り、そこに現れたのは額に四つ葉の模様を持つ白い猫だった。猫は背筋を伸ばし澄ましたように上品に歩いて男の前で立ち止まった。

「あら、ブラックリストに乗ってた悪徳魔導士のジン・スハン。どうして怪我をしたの?」
「誰だ。」
「ふふふ。私は魔女のグリア・レペサ。何しに私の森に来たのかしら。」
「は、笑えばいい。どうせ仲間に騙され盗んだもの奪われて報酬も盗られて殺されかけてりゃ意味がないよな。」
「あら、仲間…悪人は騙しあいがあって普通じゃないかしら?素直に信じちゃうなんて…悪者になりきれないあなたも悪くないかも。」

 男の前に佇む白猫の額の模様が光輝けば、黒いロングドレスに身を包む魔女が乳白色の長い髪を靡かせ現れた。肌は白く、くすりと笑う瞳は桃色の宝石のように輝き、男の視線は釘付けになった。グリアは男に肩を貸すと、足元に金色の円陣が現れ、グリアとジンは転移した。

「どこに連れて行くきだ。」
「私の仕事場だよ。あんたは運がいい、悪いようにはしないよ。」

 二人の姿はそこから消えた。

    **

 森の奥に、丸太を組んで建てられたログハウスが一軒。夜が訪れ外は暗くなり、煙突からは白い煙が上がり窓からは灯りがともる。ここはグリアの住まい兼仕事場。薬をつくったりしているため、室内の窓や階段には乾かすために薬草の束が吊るされていた。

 「ここは?」

 転移して治療中に気を失ったジンは目覚めたのはベッドの上。魔導士のわりにごつい、屈強な男は上半身を起こし、ベッドの端に腰かけるグリアは前のめりになると目覚めた時の挨拶感覚で、男の額にキスをした。

「ここは私の家。しばらく私が看病してあげる。」

 ジンは数日、薬草の匂いに包まれたこの家でグリアの看病を受ける事になるのだった。
    
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