6 / 9
6
しおりを挟むその日の発表会の帰り道。
真由は衣装の入ったキャリーバックを引きながら紺色のスカートに白に近い黄色いブラウスを着て家族の後ろについて歩いていた。
響は真由の隣を歩調を合わせて歩くなか、先を歩く真由の母は今後の事を話していた。
「あなた、あのマンション、保留にしていたけど…どうかしら?」
「ああ。あそこなら、暗証番号がないと中に入れないしな…今のところより遥かに安全だな。」
響は真由に目を向ければ、まだ少し体はプルプルと震えていた。
「真由、大丈夫か?」
響は思わずてをさしのべれば、うつむいていた真由は、顔をあげて、ぱあっと表情を明るくさせて差し出されたその手を握り足取りも軽くなった。 響はこの帰り道、もしかしたら、真由は引っ越ししてしまうのかもしれないと…少し寂しく感じた。
「真由、連絡先…交換するか?」
響は見えないところでまた今日のようなことがあったらと思ったら心配でたまらなかった。
「うん!」
こうして響と真由は連絡先を交換し…家へと辿り着き、手を振り別れた。そうして3ヶ月後…春田家は引っ越しをすることになり、真由は中学2年生に、響は高校3年生。両親の車に乗る直前、真由は見送りに来た響にかけよった。
「響ちゃん!」
抱きつく真由に、響は満更でもないようで…抱き締め返した。
「響ちゃん、私響ちゃんが好きなの!」
「うん、知ってる。」
「お嫁さんになりたいの。」
「知ってる…でも、ピアノ続けろよ?あれだけいい顔して弾くんだから…」
「うん。でも…」
「高校受験あるんだろ?ピアニストなら、大学もか?」
「うん。でも…」
「真由は近くに引っ越すんだろ?」
「でも、でも…」
響は真由を腕から解放すると彼女の頭をワシャワシャと撫でた。
「いつでも会える。しばらくは今までの関係のままでいよう…でも…交際はしている。そういうことにしないか?高校生になったら、デートしよう。俺は運送屋に就職内定してるから…俺がいろんな所に連れていってやる。」
「うん!楽しみ!」
「真由ー!そろそろ行くぞ!」
間近に徐行して接近した車が停車し運転席の窓から春田家の父が顔を出した。
「響くん、真由のことこれからも仲良くしてやってくれると私も安心だけど…ほどほとにね。」
「は、はい!」
響はタジタジになりながら真由が車に乗るのを見届けた。
車は走りだし、電車で、二駅先のマンションへと車は走り去っていったのだった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【ショートショート】雨のおはなし
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
◆こちらは声劇、朗読用台本になりますが普通に読んで頂ける作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
真夏の温泉物語
矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
おてんばプロレスの女神たち ~男子で、女子大生で、女子プロレスラーのジュリーという生き方~
ちひろ
青春
おてんば女子大学初の“男子の女子大生”ジュリー。憧れの大学生活では想定外のジレンマを抱えながらも、涼子先輩が立ち上げた女子プロレスごっこ団体・おてんばプロレスで開花し、地元のプロレスファン(特にオッさん連中!)をとりこに。青春派プロレスノベル「おてんばプロレスの女神たち」のアナザーストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる