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しおりを挟むその日の発表会の帰り道。
真由は衣装の入ったキャリーバックを引きながら紺色のスカートに白に近い黄色いブラウスを着て家族の後ろについて歩いていた。
響は真由の隣を歩調を合わせて歩くなか、先を歩く真由の母は今後の事を話していた。
「あなた、あのマンション、保留にしていたけど…どうかしら?」
「ああ。あそこなら、暗証番号がないと中に入れないしな…今のところより遥かに安全だな。」
響は真由に目を向ければ、まだ少し体はプルプルと震えていた。
「真由、大丈夫か?」
響は思わずてをさしのべれば、うつむいていた真由は、顔をあげて、ぱあっと表情を明るくさせて差し出されたその手を握り足取りも軽くなった。 響はこの帰り道、もしかしたら、真由は引っ越ししてしまうのかもしれないと…少し寂しく感じた。
「真由、連絡先…交換するか?」
響は見えないところでまた今日のようなことがあったらと思ったら心配でたまらなかった。
「うん!」
こうして響と真由は連絡先を交換し…家へと辿り着き、手を振り別れた。そうして3ヶ月後…春田家は引っ越しをすることになり、真由は中学2年生に、響は高校3年生。両親の車に乗る直前、真由は見送りに来た響にかけよった。
「響ちゃん!」
抱きつく真由に、響は満更でもないようで…抱き締め返した。
「響ちゃん、私響ちゃんが好きなの!」
「うん、知ってる。」
「お嫁さんになりたいの。」
「知ってる…でも、ピアノ続けろよ?あれだけいい顔して弾くんだから…」
「うん。でも…」
「高校受験あるんだろ?ピアニストなら、大学もか?」
「うん。でも…」
「真由は近くに引っ越すんだろ?」
「でも、でも…」
響は真由を腕から解放すると彼女の頭をワシャワシャと撫でた。
「いつでも会える。しばらくは今までの関係のままでいよう…でも…交際はしている。そういうことにしないか?高校生になったら、デートしよう。俺は運送屋に就職内定してるから…俺がいろんな所に連れていってやる。」
「うん!楽しみ!」
「真由ー!そろそろ行くぞ!」
間近に徐行して接近した車が停車し運転席の窓から春田家の父が顔を出した。
「響くん、真由のことこれからも仲良くしてやってくれると私も安心だけど…ほどほとにね。」
「は、はい!」
響はタジタジになりながら真由が車に乗るのを見届けた。
車は走りだし、電車で、二駅先のマンションへと車は走り去っていったのだった。
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