魔女に惚れた冷酷将官の求愛

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11話【ナハースと魔女】*

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 マルスーン国は魔女の国と呼ばれており、才能ある魔女を育て世に出すために魔女教育が盛んなこの国の王族の娘は皆、魔力に恵まれ代々最高位の魔女を務めてきた。現在の最高位の魔女はこの国の王太子の妹。優れた魔女を世にだし、他国で力をつけ、何れ国に戻れば、最高位の魔女のもとで国を守り魔法学校の講師を勤めるのが常。まれに、他国で婚姻を結び国と国を繋ぐ架け橋となることもあるのだとか。

 * ・* ・ * ・ * ・* ・ * 

 最高位の魔女は少し前に、ヨナからの手紙を受け、ヨナを神殿へと迎え入れた。面会室は小さな部屋だが、高価な調度品が置かれた場所。魔女に選ばれた一部の者しか入らない部屋である。室内で、二人は対面するようにテーブルを挟み、向かいあって席についていた。

「手紙にあった申請の件了承しました。昨日国王に報告し、こちらにサインをもらっています。あとは、私とヨナ、あなたのサインで完結です。」

そう言い、テーブルに置かれた書面に、すらすらと最高位の魔女が筆をはしらせサインし、ヨナに筆をさしだし、ヨナはそれを受けとりゆっくりとサインを書き上げた。

「これからこの完成したものを国王に提出して魔法書に写して原本は国に保管し明日、写したものをお渡しします。よいですね?」
「はい!よろしくお願いいたします。」

 互いに席を立ち上がり、ヨナは深々と頭を下げた。この日ヨナは神殿内の客室に滞在し、朝を迎えれば、ヨナは地下の食堂で懐かしい卒業生たちと食事をした。

「あ!ヨナ、あなたお嫁に行くの?残念。こちらに戻ってきたら、一緒に学校の講師ができると思ってたのに。」
「ごめんなさい、あちらで仕事は続けるの。だから、いつかまた会えるときがあるかもしれない。その時は仲良くしてね。」

 会話は盛り上がりヨナは学生時代に戻ったような楽しい気分に浸り、食事が終れば、笑顔で別れて面会室へと向かった。

・ * ・* ・ * ・

 こうしてヨナはマルスーン国の魔女の証を所持するバッグにしまい、神殿内で遊んでいたルーを呼び寄せ、ルーは体を大きくさせるとヨナをのせ走り出した。国境を越えナハースへと戻る帰り道、ヨナはナハース国の部隊が反乱軍と戦う最中に遭遇した。

 中将の部隊ではなかったが、ヨナは立場状、手出しができない事に悔しく思いながら、巻き込まれないよう距離を取ってルーを走らせ王都へと戻ったのだった。

 ヨナは城に入るとルーも小さくなり後をついて歩き宰相にめどうりを願うために宰相に仕える使者と面会をした。面会室内に入り使者に【マルスーンの魔女の証】を提出し、使者は宰相を呼びにへやをでた。

  緊張する時間が過ぎ、宰相がようやく部屋に現れた。国王と年の近い体が細いがピンの背筋を伸ばした宰相は中性的な壮年だった。

「お待たせしました…魔女様。」

 綺麗なお辞儀をする宰相はマルスーンとナハースの架け橋として、ヨナをマルスーンの高位の魔女として受け入れる事を証明するブローチの入った木箱を渡した。

「今日からあなたは我国の高位の魔女様です。ナハースの国を支えるためにお力を貸していただきたい。なお、図書室の管理は引き続きお願いします。魔導師達も修行も兼ねて数人そちらに回します。あなたの負担も軽くなれば身動きがとりやすいでしょう。頼みますね?」
「はい。よろしくお願いいたします。」

 ヨナが話がもう終わりかと思った矢先、宰相は不適な笑みを浮かべて最後にひと言付け加えた。

「そうそう、まずはあなたの力を魔導師達にも納得させるために1週間後に闘技場で魔導師達の手合わせを願います。あなたの力を知らせるためにも大事な行事ですので、日時を知らせましたら必ずお越しください。」
「……は、はい。」

 ヨナは急に与えられた試練に動揺しながら返事をしたのだった。

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