獅子騎士と小さな許嫁

yu-kie

文字の大きさ
38 / 58
獅子騎士と小さな花嫁編(2)

38.

しおりを挟む





《翌朝》

 二人は朝食あと…クランはワンピース姿に、ラパスは普段の騎士服からカジュアルな身なりになると…迎えの馬車で新居にむかい走り出す、馬車の周りにはアルトと、護衛のメンバーが並走していた。

 今日の午後はクランの両親とラパスの母もあとから来る予定だ。

 所帯をもつからと、城から馬車を走らせれば近い距離。小高い丘にある領主が所有する屋敷よりひとまわり小さい邸宅を譲り受けた。王都の街を見渡せ、城も少しだけ小さく見える距離。

 街や城で異変があればよくわかり…何より丘全体は草原のため、クランの故郷に似ている。

 馬車から降りたクランはパタパタと草原を走りだし、ラパスはあとに続いて降りると、遠縁の初老の男性執事が出迎えた。

「旦那様荷物は全て片付いております。奥様と戻られましたら屋敷内をご案内いたします。」

「わかった。」

 執事は屋敷に戻りクランは同行したアルトを見つけ近くに駆け寄った。

 「姫、私は今日からこのラパス様が雇い主となります。今後も護衛いたします。」

「わあ~うれしい!アルトさんも一緒ね!」

クランはアルトに抱きつきはしゃいでいると…ラパスが仁王立ちし…

「クラン…そろそろなかに入ろうか。」

 アルトは雇い主となったラパスに深々と礼をし、クランとラパスを見送り、屋敷内に入ったのをみると、アルトと他に雇われている護衛の兵たち数名も屋敷に裏口から入り…一階の端の使用人や警護の者が使う部屋、男部屋と女部屋へとすがたを消した。

 アルトはこれからは女性の扱いを受ける。盗賊になってから女を捨てた彼女は小部屋ではないが、5人部屋としては広いこの部屋で侍女達と共同生活を始める。

クラン達は邸内を執事に始めに邸に使える使用人の面々を紹介、そのあとは隅々まで案内され…最後に夫婦の部屋を案内された。

「案内は以上でございます。お客人も午後には起こしだと聞いております。旦那様、奥様皆様のお食事の準備が整いましたらおよびいたしますのでそれまでお休みくださいませ。」

執事は礼をし部屋をあとにした。

 残されたクランとラパスは室内の調度品の配置等をみて回り…クランはベッドに置かれた愛用の熊と兎を抱き締めながら端にすわった。

「安心するか?」

「はい。子供みたいでごめんなさい。」

クランは縫いぐるみの隙間から顔をだしラパスをみて謝罪した。

 立っていたラパスは隣りに座るとクランの頭を撫でた。

「無理に背伸びしなくてもいい。私は今のあなたに惹かれたのだから。」

クランは顔を紅くし縫いぐるみをベッドへと解放するとラパスの胸へ抱きついた。

「クラン…いい?」

「…はい。」

 二人は見つめ合い…ぎしりとベッドに横たわり…マニュアルなんてない…ごく自然に…互いの思いを確かめ合うように、体を重ねたのだった。




本編・完。(番外編・その後に続きます。)

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

ガネット・フォルンは愛されたい

アズやっこ
恋愛
私はガネット・フォルンと申します。 子供も産めない役立たずの私は愛しておりました元旦那様の嫁を他の方へお譲りし、友との約束の為、辺境へ侍女としてやって参りました。 元旦那様と離縁し、傷物になった私が一人で生きていく為には侍女になるしかありませんでした。 それでも時々思うのです。私も愛されたかったと。私だけを愛してくれる男性が現れる事を夢に見るのです。 私も誰かに一途に愛されたかった。 ❈ 旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。の作品のガネットの話です。 ❈ ガネットにも幸せを…と、作者の自己満足作品です。

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

処理中です...