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第5章 慈愛の聖女、クラリス
10,言えない
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さらに三か月ほどが過ぎたころ。
緑色の木の葉も徐々に色が落ち、赤色や黄色に変わってきていた。
そんな季節に事件は起きた。
「ん? 王様から手紙?」
「はい、あの、緊急の用事だったので直接渡してほしい、と王様に言われて……」
「なんで手紙を渡す仕事が聖女であるあなたに回って来ちゃったんですか?」
「ふふ、どうしてかしらね。」
そう、いまタツシとクラリスはスライム・リフレ本店にいる。前にクラリスがこの店にお忍びで来た時と同じように変装して来たのだ。
そして、クラリスの用事はただ手紙を渡すだけというのだった。
直接私に来るということはそれだけ重要なのかと思いタツシが封を開ける。
「え……魔王?」
「ええ? あの、覗いてもいいですか??」
「どうぞ」
クラリスはタツシが腰かけている長椅子に座る。肩と肩が触れ合っている。
(うおおおお、いい香りが……って、そんなことを考えている場合じゃないな。まさかまた魔王が現れるとは……)
「そんな……」
手紙に書いてあった内容は至ってシンプル。
かつてタツシが制圧した魔王城とは別の場所に新たな魔王城が出現し、そこに住む魔王とその配下の魔物が強力で、周囲の村は壊滅した。
破壊力から推察するに前の魔王の数倍の威力を持つようだ。
ただし事前に予兆があったため犠牲になった人は今のところいない。
至急、魔王城に向かって魔王を討伐してきて欲しい。
という内容だ。
「これは……すぐにでも行かないといけませんね。さて、私は準備してきますからクラリスさんはどうぞ神殿へお帰りください。」
「ねえ、タツシさん、あなた、絶対に死なないわよね?」
「ええ。まあ大丈夫でしょう。」
「私、タツシさんが無事に帰ってきたら、その……」
タツシは、嫌な予感がした!
「伝えたいことがあるんです。」
(ぎゃあああああああ! ヤバイ、死亡フラグじゃんこれ、え? 俺死ぬの? うっ…………)
このままではお決まりのパターンで本当に死んでしまう、そう危惧したタツシは思い切って言った。
「クラリスさん! 言いたいことは今言いましょう! 俺、死ぬかもしれませんよ??」
「えっあっいや、そんな……」
クラリスは心の中で巨大な葛藤があった。
言ってしまいたい。恥ずかしくて言えない。
言ってしまえ! 絶対に言えない!
言えば楽になるぞ! 拒絶されたら怖い!
ほら、早く言うんだ! だめ、絶対に無理!
クラリスは、この年になって初めて、本当の恋愛を経験した。初恋の相手に、いきなり自分から言うというのはかなり難しいことだろう。
だが、タツシは全くそんなことを言われるとは思っていないのだ。
タツシは「王女様の正体とか教えてくれるのかな~」とか呑気なことを予想して早く言え、とせがんでいる。
「まあ、どうしても厳しいようでしたら明日にでも。俺、明日出発しますから。」
「は、はいっ。じゃあ明日、またここに来ます。」
そうしてタツシはクラリスを抱え、神殿の横の彼女の部屋に送った。
(ああ、好き♡ どうして声にでないの!?)
果たして、翌日、クラリスはタツシに言えるのだろうか。
緑色の木の葉も徐々に色が落ち、赤色や黄色に変わってきていた。
そんな季節に事件は起きた。
「ん? 王様から手紙?」
「はい、あの、緊急の用事だったので直接渡してほしい、と王様に言われて……」
「なんで手紙を渡す仕事が聖女であるあなたに回って来ちゃったんですか?」
「ふふ、どうしてかしらね。」
そう、いまタツシとクラリスはスライム・リフレ本店にいる。前にクラリスがこの店にお忍びで来た時と同じように変装して来たのだ。
そして、クラリスの用事はただ手紙を渡すだけというのだった。
直接私に来るということはそれだけ重要なのかと思いタツシが封を開ける。
「え……魔王?」
「ええ? あの、覗いてもいいですか??」
「どうぞ」
クラリスはタツシが腰かけている長椅子に座る。肩と肩が触れ合っている。
(うおおおお、いい香りが……って、そんなことを考えている場合じゃないな。まさかまた魔王が現れるとは……)
「そんな……」
手紙に書いてあった内容は至ってシンプル。
かつてタツシが制圧した魔王城とは別の場所に新たな魔王城が出現し、そこに住む魔王とその配下の魔物が強力で、周囲の村は壊滅した。
破壊力から推察するに前の魔王の数倍の威力を持つようだ。
ただし事前に予兆があったため犠牲になった人は今のところいない。
至急、魔王城に向かって魔王を討伐してきて欲しい。
という内容だ。
「これは……すぐにでも行かないといけませんね。さて、私は準備してきますからクラリスさんはどうぞ神殿へお帰りください。」
「ねえ、タツシさん、あなた、絶対に死なないわよね?」
「ええ。まあ大丈夫でしょう。」
「私、タツシさんが無事に帰ってきたら、その……」
タツシは、嫌な予感がした!
「伝えたいことがあるんです。」
(ぎゃあああああああ! ヤバイ、死亡フラグじゃんこれ、え? 俺死ぬの? うっ…………)
このままではお決まりのパターンで本当に死んでしまう、そう危惧したタツシは思い切って言った。
「クラリスさん! 言いたいことは今言いましょう! 俺、死ぬかもしれませんよ??」
「えっあっいや、そんな……」
クラリスは心の中で巨大な葛藤があった。
言ってしまいたい。恥ずかしくて言えない。
言ってしまえ! 絶対に言えない!
言えば楽になるぞ! 拒絶されたら怖い!
ほら、早く言うんだ! だめ、絶対に無理!
クラリスは、この年になって初めて、本当の恋愛を経験した。初恋の相手に、いきなり自分から言うというのはかなり難しいことだろう。
だが、タツシは全くそんなことを言われるとは思っていないのだ。
タツシは「王女様の正体とか教えてくれるのかな~」とか呑気なことを予想して早く言え、とせがんでいる。
「まあ、どうしても厳しいようでしたら明日にでも。俺、明日出発しますから。」
「は、はいっ。じゃあ明日、またここに来ます。」
そうしてタツシはクラリスを抱え、神殿の横の彼女の部屋に送った。
(ああ、好き♡ どうして声にでないの!?)
果たして、翌日、クラリスはタツシに言えるのだろうか。
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