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第21話

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 列挙された課題を改めて聞いた辰子が顎に手を当てて悩ましげに唸った。
「うーん、見事に人化できれば解決できる問題ばっかしだねー。それでお兄ちゃんはあんな熱心に習得するよう言ってきたんだ......」
「それは言っても仕方ないことだよ、今はこの問題をどうにかする方法を考えないと」
「でももし使えるようになれば新しい企画を作る必要なくなるよ?」
「仮にそうするとしても、出来なかった時の保険にはなるさ。そもそもあれは今から二週間で使えるようになるのは無理なんだろ?」
「ううっ......」
「大体新試生の役割から考えればだね……」
 僕がつい説教に力を入れそうになったところで置いてきぼりになっていた火野さん達から待ったがかかった。
「一旦停止。疑問有、人化何?」
「火野さんの言う通りです、2人だけで話を進めないでください。人化とは何です?問題を一手で解決できる方法があるなら話してください」
 2人の視線が痛い、特に宇野さんの大きな一つ目が。
「ごめんごめん。人化って言うのはね、ドラゴン族に伝わる変身魔術のことなの。簡単にいうと、人間の姿になれる、魔法なんだよ」
「......それで万事解決じゃないですか!何で今まで黙ってたんです!」
「至急説明。理由如何因、焼」
「わーっ近い近い、ちゃんと話すから離れてくれ!」
 辰子の説明を聞いた2人が僕に凄い剣幕で迫ってくる。
 宇野さんは美人な上、目つきが鋭いので怒ると迫力があり、火野さんは布越しでもわかるくらいの熱量を持っているので物理的に危険。
 まぁ要するにとても怖い。1人でも怖い人が2人がかりでかかってくるのだ、それはそれは恐ろしい。
「......また失礼なこと考えてません?」
「ないない、考えてないからとにかく落ち着いて!?」
「ならいいんですけど」
 なんだかこちらの思考を見抜いたような発言をしてからだったが、ようやく2人は僕から適切な距離をとってくれた。
 また詰め寄られるのも嫌なので、その時は守って貰えるよう僕は椅子ごと辰子のいるほうに寄った。
「ワワッ、ワッ、ワッ!」
「......辰子ちゃんが嬉しそうなのでいいんですけど、なんだか嫌な感じですね……」
「なんの話さ......まぁいいや。変身魔術は難易度が無茶苦茶に高いらしくて、始めてすぐ習得できるものじゃないらしいんだよ。実際、龍輝さん......辰子のお兄さんなんだけど......が教えようとしてくれたのが半年前だ」
 僕は魔法に詳しくないけれど、その時の話では時空間魔術と同じくらい難しいと聞いた。
 科学世界と魔術世界を行き来する時に使う時空間魔術は国が凄い施設を作って管理してる程なので、そのレベルの魔術を個人で使用するのがどれだけとんでもないことなのか。
 確実に魔術に高い適性を持つドラゴン族にしか出来ない魔術だ。
「真実?彼方世界、容姿偽装普遍」
「それはきっと光学系統の魔術を使った幻影だね、見た目だけを誤魔化せるやつ。私もそれはできるんだから!」
 しかしその方法で偽装しても実態は何ひとつ変わらないわけで。
 人間になるなんて辰子は簡単に言うけれど、ちょっと考えるだけで科学の不可能を軽く3つか4つ超越した魔法だ。日常生活で気軽に使っている辰子の家族の方が最初からおかしいのだ。
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