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007 自分が謎……!:N

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 何が。
 どうなってるのか。
 全然わからないんだけど。

 高畑さんの言ってることも。言おうとしてることも。沢渡さわたりが必死に隠そうとしてることも……ていうか。
 沢渡が内緒にしたいコト。内緒にするためにあの先輩たちにやられてもいいコト。そこまでするコト。
 来てすぐ高畑さんはわかったのは何故……俺より情報少ないのに?
 で。
 突然。高畑さんにキス、されそうになって。川北さんが止めようとしてくれるのと同時に、沢渡も止めて。
 で。
 沢渡が泣き出して。
 ずっと泣いてて。

 いったい……?



「沢渡……」

「ごめんなさい!」

 聞こうとしたら、沢渡が謝った。

「俺、きみの制服……勝手に借りたんだ」

 何についてか、聞く前に説明されるも。

「え?」

 わからない。
 今、俺が着てるのは屋台の法被。
 制服は……。

「あ……昼に着替えてロッカーに入れといた……え、借りたって何で?」

 自分の、着てるじゃん?
 どっか破れたとか濡らしたとか汚したとか?

「サイズは同じくらいだけど……」

「着るためじゃない。きみの服がほしかった」

「俺の……?」

 沢渡の言葉にクエスチョン。

「着ないで何するんだ?」

 マジで聞くと。
 高畑さんをチラッと見た沢渡が、俺を見つめ。息を吸って。吐いて。

「きみが着た服の匂い嗅いで……想像した。きみを……きみに……触ってるところ、とか……いろいろ」

 意味不なコト、を……。

「は!? な、に……さわって……って」

 意味、不……。

「え?……」

 じゃなく?
 え?
 もしかして……。
 いや。

 まさか……?

「変態なんだ、俺……先輩の言う通り」

「……ちょっと待て」

 待て。
 ヘンタイ……って。
 もしかしなくて。まさかじゃなくて。



 ソレって、マジ……で!?



「その想像って……」

 沢渡が儚く笑み。

「オナニーしてたんだ。きみの制服抱きしめて、そこのベランダで。下の屋台にいたきみのこと思い出しながら」

 淀みなく言う。
 予想よりリアルな内容を。

「背徳感と罪悪感。興奮した……のに、先輩たちに邪魔された」

「俺……の?」

 制服……。

「お、れを……?」

 思い出し……想像……さわって……いろい、ろ……?

「そこの……そこで……?」



 背徳か、ん……罪悪か、ん……???



 ベランダを見て。つい、川北を見る。
 俺の理解、合ってるのか……自信がなくて。
 川北が高畑を見る。

「さっきのヤツらが先輩で、現場見られたの?」

 高畑が沢渡に問う。

「はい。俺が制服持ってコソコソこの教室入るの見て、何するか……終わるまで、見守ってたって」

 沢渡が答える。

「写真とか撮られちゃった?」

 高畑が問う。

「最中じゃないけど、ズボン抑えて……制服抱えて立ち上がったところで……西住にしずみの名前、バッチリ映ってて」

 沢渡が答える。

「なんだ。それくらいなら、どうにかごまかせるんじゃない?」

「……西住に迷惑かかるから。へんな噂とか、俺のせいで……だから……」

 答える。

「先輩の言いなりに?」

「はい」

「フェラするのも犯されるのもかまわないって。きみ、セックス好きなの?」

 沢渡が眉を寄せるも。

「いえ。そういう経験はないです」

 答える……。

「なのに?」

「俺が悪いし、ほかにどうしようもないし。俺はどうなっても、西住が嫌な思いしなくて済むなら……そのほうがいいから」

 答え、る……。

「ふうん。で? まだクラスメイトとかには知られてないけど、本人にはバレたじゃん?」

「西住が! 来るとは、思わなくて……」

 答え、て……俺を見て。

「本当に……ごめん」

 謝る。
 すごく悲しげで、ツラそうな顔の沢渡に。

「いや、ていうか……え、と……」



 何て言えばいいのコレ!?
 何に対してのごめん!?
 制服!?
 俺を想像して……そこ、で……オナったコト!?



 ドレに怒るっていうか、気に障るべき……!?



 反応出来ずにいると。

「この子がした悪いことは」

 高畑が口を開き。

「きみの制服を勝手に借りて、オナニーしたこと。誰もいなかったとはいえ、公共の場である学園のベランダで」

 上手くまとめてくれる。
 沢渡が俯いた。

「きみをオカズにしたのは、まぁ……罪にはならないよね。きみがどう思うかは別として」

「俺、を……」



 おか、ず……。
 俺、で、オナった……の、は……無罪……うん。
 犯罪じゃ、ない……よな?



「イケナイコトしてるってやましさで興奮するような変態くんだけど。きみに嫌な思いさせたくなかったのは、ほんとだと思うよ」

 そう、だ。
 沢渡はこのコトを内緒にしたくて、あいつらに……俺に、嫌な思いさせたくない……から……。

「でも……何で俺のこと優先するんだ?」

 そう、だ。
 俺にバレたくないから……って。

「そんな理由で、アイツらに何されてもいいって……その考え、普通にあり得ないだろ」



 俺にバレても。
 俺はフェラさせたりしないし強姦したりしないし?
 ボコったりもしないんだけど?



 沢渡にとって俺、そんなにひどいヤツなの!?



「そうだね。きみのいう普通じゃないかも。だけど、少しは納得出来るんじゃない? この子が一番隠したかった秘密、もう気づいてるでしょ?」

 高畑に聞かれ、思考が方向転換する。

「それって……」

 もしや……。

「言わないの? 沢渡くん」

 高畑に呼ばれ。
 俯いてた沢渡が顔を上げ。俺を見て、高畑を見る。

「ここでちゃんと伝えないと、ただの変なヤツだよ」

「いいんです、だって……俺なんか、に……気持ち悪い。絶対引かれます」

「今さら。もうすでに気持ち悪いし、引かれてるはず。ね?」

 俺に振られ。

「は……いや。確かに引いたけど……」

 引くのは普通、だよな?
 けど。

「お前が、俺を……?」

 沢渡が俺を見つめる。まっすぐ。食い入るように。まっすぐ。
 そして。

「きみが好きなんだ」

 告られた。ハッキリ。

「匂いとか、うなじの角度とか湿り具合とか。落ちてる物拾ってあげる何気なくやさしいとことか。笑う時高くなる声とか、俺が出させたい。見た目より細い腰とか、抱えたい……」

「ストップ」

 続く沢渡の言葉を、高畑が止めた。

「そのへんでよしとこう。気持ち悪いの通り越して、コワイから」

「……はい」

 沢渡が深く息を吐き。

「嫌な気分にさせて、ごめん。でも、俺は変わらない。それも、ごめん」

 また、謝り。謝る。

「いや……ちょっと……すごくビックリした、けど……謝る必要はないんじゃ……気持ちは自由だし、さ」



 ウソは言ってない。
 実際、嫌な気分になってないし。気持ち悪くも思ってない。
 俺の制服を勝手に持ち出して、俺をオカズに学校のベランダでオナったコイツに……嫌悪感はナッシングで。
 俺を好きだっていうコイツに、湧いた興味は……プラス寄り。



 自分が謎……!



 やっとで、何とか追いついた理解……合ってるよな?
 合ってると思うけど、自分がわからない!
 何か言うべき?
 この先の展開はどう……。



「じゃ、僕と紫道は見回りに戻るから。あとは2人でどうぞ」

「ああ……そうだな」

 そう言う高畑と川北に。

「待ってください! 行かないで」

 沢渡が頼む。

「誰かいてくれないと困ります」

 沢渡も謎……。

「何できみが。全部ぶっちゃけたんだから、コワイモノナシじゃん」

 高畑の言う通り……。

「2人きりにされたら俺、西住に何するかわからないから」

「ちょッ、何するかって……」

 コワいモノなくなって……アレか?
 ムテキノヒトってヤツか!?

「何もすんな、絶対!」



 無敵はダメだろ!



「ガマンしてる、する……けど。何かもう……ハイになってて……」

 今!
 何をガマンしてるんだ?
 するんだ?
 何でハイになってるの……っていうか、ハイになってるから何……?



 俺を襲うとか……!?



「わかった。紫道しのみちは残してくよ。もともと僕は助っ人だし」

「いや。見回りは俺が行く。お前が……話まとまるまで、ここにいてくれ」

「オッケー。きみのお願い、聞いてあげる」

「悪いな」

 高畑と話がついた川北が、真剣な眼差しを俺に向ける。

「西住。今すぐ何か決めなくてもいい。ちゃんと自分の気持ちを優先しろ」

 まっとうで的確なアドバイスに頷いて。

「はい。大丈夫です」

 頭を下げた。

「ありがとうございます」

 高畑が残ってくれるなら安心だし。
 沢渡を助けてくれた川北に感謝。

「じゃあ、あとで」

 川北が去り。

「さて、と」

 高畑がこっちを向く。

 沢渡はじっと高畑を見てる。俺も。
 このあとどうするか、どうしたらいいか……この人が決めてくれる雰囲気?

「とりあえず。きみたち2人、つき合うってことでいいよね?」

 やさしげに微笑んで、高畑が言った。


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