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第8章 カウンセラー
この話題がつらかったらやめるわ
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襲いかかるって、まさか……。
「凱は……あなたに、何を……?」
「何をしたと思う?」
何って……だって……襲うっていうのは……。
眉を寄せたまま答えない僕を見て、綾さんが首を振る。
「ごめんなさい。意地悪だったわね」
「冗談……ですか?」
「いいえ」
じゃない……?
「私をレイプしようとしたのよ」
ほんと……に……!?
「押し倒して押さえつけて、服を剥いて……足の間に手を入れた」
綾さんの瞳を凝視する。
「あなたもそう思ったんでしょう? それを言わせようとしたのは、悪かったわ」
「いえ……でも……実際にしては……」
「いない。凱は途中でやめたから」
大きく息を吐いた。
「はじめから。本気でするつもりはないと思って、私は抵抗しなかった。もし、その読みが外れてたら……私より身体の大きな中学2年生の男子の力には、勝てなかったでしょうね」
「凱は……どうして、あなたを……?」
「カウンセリングが嫌だったからか。信用していない人間を威嚇するためか。セックスをしたかったわけじゃないのは確かよ」
僕に向ける綾さんの視線が強くなる。
「この話題がつらかったらやめるわ」
「いえ……平気です」
暫し俯いて、顔を上げた。
「綾さん。凱が本気じゃないって……どうしてわかったんですか?」
「瞳に欲がなく、冷めてたから……かな」
「冷めてた……?」
「そう。単なる身体の欲求でも、愛情でも、興奮でも、狂気でも、怒りでも。何がもとになっていても、性欲には熱さがある。それがないと、その気のない相手とセックスは出来ないわ」
「それでも、万が一のリスクはあるのに……抵抗せずにいたのは……?」
「もし、凱に嗜虐性があったら、刺激したらまずいと思ったの。あとは……抵抗しないことで『あなたを信用してる』って伝えるため。自分を信用してほしいなら、まずは自分が相手を信用しなきゃならない。私はあなたの敵じゃなくて味方だってアピールでもある……カウンセラーとしての計算ね」
「ちゃんと伝わったんですね。その……途中でやめたのなら」
綾さんが力なく首を横に振る。
「伝わったかもしれないけど、信用されなかったみたい……やめて出て行った時も含めて、凱は一度もカウンセリングを受けていないのよ」
「え……一度も?」
「ええ」
強制じゃないのなら、拒否しても罰はない……か。
「暴行事件のあと、ラストワが凱のカウンセリングを命じたの。それも、あの子は受けなかったわ」
「そんなこと……可能なんですか?」
ルールに厳しい僕たちが、継承者の決定に従わないことは稀だ。
「可能か不可能で言えば、可能かしら。修哉が凱をここまで引きずって来たけど、カウンセリングにはならなかったから。腕のいいカウンセラーでも、話す意思が全くない人間に口を開かせるのはほぼ不可能よ」
「でも、ラストワの決定だったんですよね。じゃあ、凱は罰を……?」
ここで。綾さんは困ったような、苛立ったような表情になった。
「いいえ。さっきショウのことを話した時、彼女は息子たちに何があったのか知らないって言ったでしょう? そして、凱は私に何も話していない。じゃあ、誰がその時の詳細を聞いたのか……わかる?」
ショウの知らない、凱だけが知っていること……綾さん以外に、凱から聞き出せる人間がいるとすれば……。
「ラストワ、ですね」
「凱は……あなたに、何を……?」
「何をしたと思う?」
何って……だって……襲うっていうのは……。
眉を寄せたまま答えない僕を見て、綾さんが首を振る。
「ごめんなさい。意地悪だったわね」
「冗談……ですか?」
「いいえ」
じゃない……?
「私をレイプしようとしたのよ」
ほんと……に……!?
「押し倒して押さえつけて、服を剥いて……足の間に手を入れた」
綾さんの瞳を凝視する。
「あなたもそう思ったんでしょう? それを言わせようとしたのは、悪かったわ」
「いえ……でも……実際にしては……」
「いない。凱は途中でやめたから」
大きく息を吐いた。
「はじめから。本気でするつもりはないと思って、私は抵抗しなかった。もし、その読みが外れてたら……私より身体の大きな中学2年生の男子の力には、勝てなかったでしょうね」
「凱は……どうして、あなたを……?」
「カウンセリングが嫌だったからか。信用していない人間を威嚇するためか。セックスをしたかったわけじゃないのは確かよ」
僕に向ける綾さんの視線が強くなる。
「この話題がつらかったらやめるわ」
「いえ……平気です」
暫し俯いて、顔を上げた。
「綾さん。凱が本気じゃないって……どうしてわかったんですか?」
「瞳に欲がなく、冷めてたから……かな」
「冷めてた……?」
「そう。単なる身体の欲求でも、愛情でも、興奮でも、狂気でも、怒りでも。何がもとになっていても、性欲には熱さがある。それがないと、その気のない相手とセックスは出来ないわ」
「それでも、万が一のリスクはあるのに……抵抗せずにいたのは……?」
「もし、凱に嗜虐性があったら、刺激したらまずいと思ったの。あとは……抵抗しないことで『あなたを信用してる』って伝えるため。自分を信用してほしいなら、まずは自分が相手を信用しなきゃならない。私はあなたの敵じゃなくて味方だってアピールでもある……カウンセラーとしての計算ね」
「ちゃんと伝わったんですね。その……途中でやめたのなら」
綾さんが力なく首を横に振る。
「伝わったかもしれないけど、信用されなかったみたい……やめて出て行った時も含めて、凱は一度もカウンセリングを受けていないのよ」
「え……一度も?」
「ええ」
強制じゃないのなら、拒否しても罰はない……か。
「暴行事件のあと、ラストワが凱のカウンセリングを命じたの。それも、あの子は受けなかったわ」
「そんなこと……可能なんですか?」
ルールに厳しい僕たちが、継承者の決定に従わないことは稀だ。
「可能か不可能で言えば、可能かしら。修哉が凱をここまで引きずって来たけど、カウンセリングにはならなかったから。腕のいいカウンセラーでも、話す意思が全くない人間に口を開かせるのはほぼ不可能よ」
「でも、ラストワの決定だったんですよね。じゃあ、凱は罰を……?」
ここで。綾さんは困ったような、苛立ったような表情になった。
「いいえ。さっきショウのことを話した時、彼女は息子たちに何があったのか知らないって言ったでしょう? そして、凱は私に何も話していない。じゃあ、誰がその時の詳細を聞いたのか……わかる?」
ショウの知らない、凱だけが知っていること……綾さん以外に、凱から聞き出せる人間がいるとすれば……。
「ラストワ、ですね」
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