滅びろ人間!小児性犯罪者への復讐

Kinon

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第5章 探索と調査と忠告と

悪いこと

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「おまえに聞かせるような話じゃないが、かいのしたことを知っておまえがあいつをどう思うか……興味がある。つまり、オレがおまえを知るために話すってことだな」

 修哉さんが、半分笑って半分険しい瞳で僕を見る。

「善と悪を知るのは基本だが、善と悪両方を許容するうつわが、継承者には不可欠だ。ジェイクは、悪を許容しない。おまえはどうかな」



 悪を許容出来るかどうか……。

 許容する。
 そう、言い切れない。
 ヤツが奏子にした悪事を許せないから。
 母を殺したヤツらを許せないから。

 許容しない。
 そうも、言いきれない。
 悪になる覚悟をしてるから。
 そして、近いうちに。自分の意思で、悪に分類される行為をしようとしてるから。

 悪に種類はないんだろうか。
 許容される悪と許容されざる悪。

 あるのは、そんな悪の種類じゃなくて……それを行う人間の動機の種類なのかもしれない。



「ジャルド。はじめに言っておくが、凱のやったことは全くかばいようのない悪事だ。暴行事件と違って相手に非があるわけじゃない。ただ、ジェイクを苦しめ痛めつけるためだけのな」

 修哉さんが言った。
 リージェイクに非がないのはわかってたけど、この人がそう言うなら……凱がしたのは本当に悪いことなんだろう。

「修哉さんは、じゃあ……この時は凱を責めた?」

「ああ。責めたさ。あいつの右腕を叩き折った」

「え……!?」

 驚いて、修哉さんに向けていた身体を少し後ろに引いた。

「そんなもんじゃ釣り合わない苦しみを、ジェイクは味わったんだ。オレが凱を罰するのは間違いなんだろうが……ジェイクがされたことを目の当たりにして、いい加減腹に据えかねたオレは、ついやりすぎちまったってわけだ」

「凱は、反省したの?」

「腕の1本で反省するくらいなら、はじめからやりはしない」

 鼻で笑って、修哉さんが続ける。

「凱はな、何をやるにしても報復は覚悟の上だ。だから、うちの人間以外とやり合うのは放っておいた。しっぺ返を食らえば何かしら学ぶだろうしな。実際、何度か痛い目もみてる」

「そう……なんだ」

 会話の切れ目に考える。



 凱が壊した人間と、壊されずに反撃した人間の違いは何だったんだろう。

 僕には、どうしても……壊される人間にはそれだけの理由があるように思える。
 でも、それは。
 自分にも壊したい人間がいるから、凱の行為を正当化したいだけなのかとも思う。



「最初は、嫌がらせに毛の生えた程度のもんだったらしい」

 修哉さんが話し始める。

「凱が、ジェイクがやったように見せかけて教師や友人に悪さをして、第三者にジェイクを攻撃するよう仕向けるとか、そういった類のな。あとは、ジェイクの彼女を寝取ったりもした」

「リージェイクはこたえなかったんだね」

「そうだな。だが、3人目の彼女を寝取られた時……」

「3人目?」

 つい口を出した。

 せいぜい1、2年の間のことなのに、リージェイクがそんなに恋愛に積極的だったなんて意外だ。

 修哉さんが笑う。

「15、6のガキのくせに、二人とも女にもてた。リシールは女好きだしな」

 リシールが種の保存……本能といえるかは疑問……の欲求が強いのは知ってるけど、この欲求はムダなもの。
 僕たち一族の男は、欲求はあっても子孫を残せない。
 リシールが一定数から増えないのは、この制限のためだ。

「まだ、中学生か高校生だったんでしょ?」

「やりたい盛りさ。おまえはまだ本当のガキだからな。そのうちわかる」

 おかしそうに言う修哉さんに、少しムッとした。

「……それで?」

「凱が寝取った3人目の女を、ジェイクは真剣に思っていた。そして、凱が自分への嫌がらせのために騙して誘惑した女とは、ただの遊びだと知っていた。だから、ジェイクは凱がさっさと手放したその女とヨリを戻した」

 修哉さんの顔から笑いが消える。

「凱は、こう思ったんだろうよ。この女のためなら、ジェイクは何でもするってな」

「何を……させられたの?」

「女をさらって、飢えた男どもに襲わせようとした。ジェイクがそのことに気づいて、必ず助けに来るように仕向けてだ」

 頭の中に、悪夢の日のイメージが浮かびそうになる。

「間に合ったんだよね?」

「もちろんだ。凱の目的は、女を襲わせることじゃなかったからな。凱が苦しめたいのは、あくまでもジェイクだ」

「どうやって……?」

「自分の目の前で、しかも自分のせいで、好きな女が輪姦《まわ》される。それは、ジェイクを充分苦めるだろう。だが……」

 眉をひそめた修哉さんが、ふいに言葉を止めた。

「おまえ、セックスの知識はあるよな。輪姦されるって意味はわかるか?」

 修哉さんの質問はストレートかつダイレクトだ。

「わかるよ。複数人に強姦……レイプされるって意味だよね。母の事件のことなら、気を使わないで……僕は大丈夫だから」

「……ならいいが」

 修哉さんが僕の瞳の奥を窺うように見つめ。
 見えた何かに納得するように頷いて、話を再開する。

「凱は、それ以上にジェイクを苦しめるだろう方法を使った。好きな女が襲われそうになっている場面に現れたジェイクに、凱は……選ばせたんだ」

「選ばせた……?」

「女か、自分か……どっちがやられるか」

 無意識に、震える手を握りしめた。


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