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第4章 協力者
夜の森
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空に月はなく、私道に点々と設置された控えめな外灯と星の明かりだけが闇を薄める夜だった。
夕食のあと、凱がダイニングを後にしてから小1時間ほど待ってから外に出た。
私道を行くか庭の柵のほうの森を行くか迷ったけど、私道を行くことにした。
昼間とは別の顔を見せる森を左右に見ながら、凱の気配を探す。
僕たちリシールは、お互いを感知できる。
草木の生い茂るここだと、50メートルくらいまで近づけばお互いの気配を感じられるはず……意識を集中してないとダメだけど。
今は午後9時半頃。
空は晴れていて、たくさんの星が瞬いている。
細めの下弦の月はまだ姿を見せていない。
凱は今、どこで何をしているのか。
僕の予想では、彼の言葉通りクラスメイトと星の観測をしている確率は14パーセント。
街に遊びに行って館の敷地内にはいない確率7パーセント。
そして。
この森のどこかで僕を待っている確率が、69パーセント。
残り10パーセントは、凱自身にも想定外の出来事が起こって予想不可ってところ。
黙々と道を歩いた。
私道を進んで1キロ弱。
獣道とまではいかないけど、ちょっと草が踏み荒らされて道っぽくなってるところが左側に続いている。
この先には、あの小屋がある。
左に折れず、先に行く。
ヤツが自分専用みたいに使ってる小屋に凱がいる気はしなかったし、星を見るなら南側だと思ったから。
館から私道を行く場合、右側が南になる。
小屋に続く場所からほんの50メートル。一瞬、悲鳴に似た音が聞こえた。
立ち止まって耳を澄ます。
何も聞こえない。
歩き出し、すぐに足を止めた。
悲鳴のような声。
短い、息づかいみたいな叫び。
聞こえたのは右前方からだ。
少し速足で進む視界に、何か白い物体が映った。
近づくと、それは天体望遠鏡だった。私道の右側の路肩に生えた木の根元に置いてある。
ほんとに星を見るために、凱はここに……?
でも、凱の姿はない。
ここに天体望遠鏡を置いて……どこに行ったんだろう。
それに、あの音……女の声みたいだった。
森に入って歩き出した。
奥に行くほど、私道の明かりは届かなくなる。
この辺りはまだ平坦で。転がり落ちるとかの心配はないし、暗闇に恐怖も感じない。
星のせいか……空自体が真っ暗じゃないから、自分の指先も見えないほど完全な闇じゃない。
だけど。
足元がよく見えないのは歩きにくいし、さっきの天体望遠鏡みたいな目印を見落とすかもしれない。
持って来た懐中電灯をつけようかと思い始めた頃、リシールの気配を感じた。
凱が近くにいる。
自分の気配を消して、そろそろと進んだ。
僕が来るのを凱が望んでいるとしたら、いくら気配を消しても感知されるだろう。
待ちかまえてる人間なら、僅かな気配もキャッチ出来るはず。
そう思ってはいるけど。さっき聞こえた悲鳴みたいな音が気にかかるし、凱の姿を確認するまでは自分の存在を隠しておきたい気もしたから。
うっすらと見える木々の輪郭を頼りに木の幹に身を寄せながら歩いていると、視界が少し明るくなった。
30メートルくらい先に、黄色く光る光源がある。
小さくて、あまり強くない灯り。
15メートルくらいのところまで進んで、僕は足を止めた……というより、立ち竦んだ。
僕の約15メートル先に、東屋みたいなものがある。
1.5メートル四方を囲むように立てられた、高さ2メートルほどの木の柱が4つ。
その上には半分朽ち落ちた屋根。
その下にある長方形のテーブルのような台と一段低いベンチ。
僕から見て左奥の柱の根元に、小型のLEDカンテラが置いてある。
そこには二人いた。
ひとりは、テーブルの上で仰向けになった女性。
女だってわかったのは、テーブルの横に流れる長い髪と……まくり上げられた短いスカートから剥き出しで上に向かう白い腿。裸の上半身の胸のふくらみから。
もうひとりは、ほとんど裸の女の腕をテーブルに押しつけ、開いた足の間に自分の身体を入れて女に覆いかぶさる男。
はだけた服装と髪型、横から見る顎のラインと丸みのない骨ばった体型から、男だとわかる。
そして、もうひとつわかった。
男は凱だった。
夕食のあと、凱がダイニングを後にしてから小1時間ほど待ってから外に出た。
私道を行くか庭の柵のほうの森を行くか迷ったけど、私道を行くことにした。
昼間とは別の顔を見せる森を左右に見ながら、凱の気配を探す。
僕たちリシールは、お互いを感知できる。
草木の生い茂るここだと、50メートルくらいまで近づけばお互いの気配を感じられるはず……意識を集中してないとダメだけど。
今は午後9時半頃。
空は晴れていて、たくさんの星が瞬いている。
細めの下弦の月はまだ姿を見せていない。
凱は今、どこで何をしているのか。
僕の予想では、彼の言葉通りクラスメイトと星の観測をしている確率は14パーセント。
街に遊びに行って館の敷地内にはいない確率7パーセント。
そして。
この森のどこかで僕を待っている確率が、69パーセント。
残り10パーセントは、凱自身にも想定外の出来事が起こって予想不可ってところ。
黙々と道を歩いた。
私道を進んで1キロ弱。
獣道とまではいかないけど、ちょっと草が踏み荒らされて道っぽくなってるところが左側に続いている。
この先には、あの小屋がある。
左に折れず、先に行く。
ヤツが自分専用みたいに使ってる小屋に凱がいる気はしなかったし、星を見るなら南側だと思ったから。
館から私道を行く場合、右側が南になる。
小屋に続く場所からほんの50メートル。一瞬、悲鳴に似た音が聞こえた。
立ち止まって耳を澄ます。
何も聞こえない。
歩き出し、すぐに足を止めた。
悲鳴のような声。
短い、息づかいみたいな叫び。
聞こえたのは右前方からだ。
少し速足で進む視界に、何か白い物体が映った。
近づくと、それは天体望遠鏡だった。私道の右側の路肩に生えた木の根元に置いてある。
ほんとに星を見るために、凱はここに……?
でも、凱の姿はない。
ここに天体望遠鏡を置いて……どこに行ったんだろう。
それに、あの音……女の声みたいだった。
森に入って歩き出した。
奥に行くほど、私道の明かりは届かなくなる。
この辺りはまだ平坦で。転がり落ちるとかの心配はないし、暗闇に恐怖も感じない。
星のせいか……空自体が真っ暗じゃないから、自分の指先も見えないほど完全な闇じゃない。
だけど。
足元がよく見えないのは歩きにくいし、さっきの天体望遠鏡みたいな目印を見落とすかもしれない。
持って来た懐中電灯をつけようかと思い始めた頃、リシールの気配を感じた。
凱が近くにいる。
自分の気配を消して、そろそろと進んだ。
僕が来るのを凱が望んでいるとしたら、いくら気配を消しても感知されるだろう。
待ちかまえてる人間なら、僅かな気配もキャッチ出来るはず。
そう思ってはいるけど。さっき聞こえた悲鳴みたいな音が気にかかるし、凱の姿を確認するまでは自分の存在を隠しておきたい気もしたから。
うっすらと見える木々の輪郭を頼りに木の幹に身を寄せながら歩いていると、視界が少し明るくなった。
30メートルくらい先に、黄色く光る光源がある。
小さくて、あまり強くない灯り。
15メートルくらいのところまで進んで、僕は足を止めた……というより、立ち竦んだ。
僕の約15メートル先に、東屋みたいなものがある。
1.5メートル四方を囲むように立てられた、高さ2メートルほどの木の柱が4つ。
その上には半分朽ち落ちた屋根。
その下にある長方形のテーブルのような台と一段低いベンチ。
僕から見て左奥の柱の根元に、小型のLEDカンテラが置いてある。
そこには二人いた。
ひとりは、テーブルの上で仰向けになった女性。
女だってわかったのは、テーブルの横に流れる長い髪と……まくり上げられた短いスカートから剥き出しで上に向かう白い腿。裸の上半身の胸のふくらみから。
もうひとりは、ほとんど裸の女の腕をテーブルに押しつけ、開いた足の間に自分の身体を入れて女に覆いかぶさる男。
はだけた服装と髪型、横から見る顎のラインと丸みのない骨ばった体型から、男だとわかる。
そして、もうひとつわかった。
男は凱だった。
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