滅びろ人間!小児性犯罪者への復讐

Kinon

文字の大きさ
上 下
1 / 110
第1章 始まり

始まりの日の朝

しおりを挟む
 僕は10歳の時にレイプされた。
 母親と一緒に。

 その後。母は殺され、僕は逃げ出した。

 僕たちを襲ったヤツらに、生きる価値はない。
 同じようなことをする人間に、生きる価値はない。
 人間そのものが、滅びて当然の生き物なのかもしれない。



   ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 苦痛に満ちた叫び声が聞こえる。

 助けたいと思った。
 聞いていたくなかった。
 でも、誰もいなかった。

 叫び声の主は、この僕だった。



 目覚めたとき、冷や汗でぐっしょりだった。
 レイプされる身体からだの感触が、生々しい記憶としてよみがえる。
 あの時の夢をみると、決まってこうだ。

「ジャルド? 大丈夫か?」

 隣のベッドで寝ていたリージェイクの声。

 リージェイクは今17歳で、一緒に暮らす家族だ。といっても本当の兄じゃない。1年前に僕が叔父のラストワに引き取られる数年前に、同じように叔父のもとに来たらしい。

「大……丈夫」

「うなされてたから……少し早いけど起こしたよ」

「うん。ありがとう」

 心配そうに僕を見るリージェイクに、薄く笑ってみせる。

 リージェイクは僕の悪夢を知っている。
 知っているけど、同情やよけいなアドバイスはしてこない。
 彼には、その無意味さがよくわかっているんだと思う。

「早く家に帰りたいな」

 僕の言葉に、リージェイクが笑みを浮かべる。
 白っぽい金髪の間に覗く灰蒼ブルーグレイの瞳は、口元のように笑ってはいない。

「昨日着いたばかりじゃないか。そんなにイギリスの山奥がいいの?」

「この国にいると、みんなジロジロ見るんだもん。外国人なんか珍しくないのに」

「気にしすぎだよ」

「……人間は嫌いだ」

「ジャルド……」

 リージェイクの声のトーンが落ちる。

「でも、リシールはまだいい。少しはマシだから」

「……同じだよ。同じ汚さと醜さを持ってる。きみには、もっと広い視野で物事を見てほしい。ラストワの言うことが全てじゃないんだ」

「わかったわかった」

 リージェイクの話を切り上げるように頷いた。

 最近は、よくこういうことを言われる。
 リシールについて、リージェイクとラストワの意見が衝突しているのをよく見かける。




 リシールっていうのは、僕たち特殊な一族のこと。
 世界の真実……世界は三つあって、ここはそのうちのひとつで。それぞれがラシャという場所に繋がっていて、そこと行き来する道をまもるのが、リシールだ。

 ラストワとリージェイク、そして、僕は。今現在この世界に7人いる継承者けいしょうしゃのうちの3人だ。
 継承者は、リシールの……いわゆるリーダーっていうところ。

 今日は、この国の……このやかたの責任者になる継承者の女性との顔合わせがある。
 昨夜遅くにここに着いたから、まだ会ってはいない。



「ねえ。ここの継承者って何歳なの?」

 明るい声で尋ねる僕を暫し見つめ、リージェイクが答える。

「私より少し下……15歳だったかな」

「ふうん」



 15歳で重い責任を背負わされる。
 彼女にとって、それは不幸なこと?
 それとも、幸せなこと?

 まあ、いいや。
 今の僕には関係ない。
 人間を護るためにラシャがあるっていうけど……なら、要らないよね。

 人間に、護る価値なんかない。
 人間なんて、救う必要はない。

 だから、誰も僕を救ってくれない。



「シャワー浴びてくる」

 そう言って、バスルームに入りドアを閉めた。
 鏡の中の自分を見る。

 耳までの長さの黄色みの強い褐色の髪は、汗でボサボサ。
 暗黄色の目は、悪夢のせいで充血している。

「見るな……」

 僕を見返す二つの目を隠すように鏡面に両手をあてて呟いた。



 世界中の人がみんな、透明人間だったらいい。
 そうすれば、誰がどこで何をしているかなんてわからない。
 知っている人と、予定した時と場所でしか会わなくてすむのに……。


 早く大人になりたい。
 生きる価値のない人間を滅ぼせるくらい、強い大人に……。



 まだ無力な子どもである自分の姿を鏡に見るたび湧き上がるその願いが、今日はいつもより心にのしかかる。
 
 滅ぼすべき誰かがふいに背後に現れたかのような錯覚に囚われて、素早く後ろを振り返った。
 何もいない空間を睨みつけながら、僅かに速まる胸の鼓動を意識する。



 無自覚に。自分の中にある何かが解き放たれ、始動する未来を予感していた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...