208 / 246
51-2 元カノカップルをエスコート
しおりを挟む
お化け屋敷は早くも盛況で、入口に行列が出来てる。
客がひと組ずつ仕掛けの前を通るよう、十分な間を空けて入れることになってるけど……想定したより、中で時間食ってる模様。
「元気そうだな。うまくいってるみたいでよかった」
14、5人目くらいに並ぶ深音と和沙に、まずは挨拶。
「うん。すごく順調でハッピー。ね?」
深音が、満面の笑みで和沙を見やる。
「おかげさまで。そっちは?」
和沙に見据えられ、尋ねられ。
「同じ……順調でハッピー……」
そう返す俺の後ろから。
「おっナンパか? そういやお前、女もイケるもんな」
よけいなコメントを寄越したのは……。
上沢だ。
「いいのか? 浮気したら、杉原に何されっかわかんねぇぞ?」
ほんっと! よけいな時に出てきて、よけいなこと言うのヤメテ……!
「ナンパも浮気もしないって」
「ま、そうだろうけどよ」
「早瀬さぁ、マジで涼弥とデキてんの? あいつが男とって想像しにくいんだけど」
上沢の横に現れた、A組の体育会系ノンケの小林が言った。
「つき合ってる。想像はしなくていい」
「女オッケーなのに何で男とやるのかわかんない」
好きだから!
レンアイしてるから!
つっても、コイツには通じなそう……スルーで。
「あれ? そのコ、お前の女じゃなかった? 一緒にいんの見たことある」
あーもう……!
口を開く前に。
「私とはとっくに別れてるの。將悟は涼弥くん一筋なんだから、邪魔しないであげて」
深音が答えた。
「やさしいコは好きだな。でも俺、こっちのコがメチャ好み」
小林が和沙をじっと見る。
「どう? オトモダチから。俺とつき合わない?」
「ダメ! 和沙は私のなの」
深音がキッパリと言い放つ。
「ほかあたってね」
小林は口を半開き。
和沙は満足げに細めた目で深音を見てる。
よく言った!
これでスッキリだ。
俺はナンパしてない。
深音は元カノ。
和沙は深音の彼女だから、手を出すなと。
よかった。
何より……和沙の表情が緩んでホッとした。
自分のだって。恋人がハッキリ言ってくれるのは、嬉しいよな。
「マジか……ここがホモだらけなのはともかく、女子部まで……もったいない」
「女はいっぱいいんだろ。午後、店の客で気に入るの探せ。並ぶぞ」
上沢に宥められ、小林が列の後方に向かう。
「早瀬。早いとこ、うちの店見て来いよ。杉原のヤツ……イイ味出してるぜ」
「ん。シフト中にダッシュで行くよ」
上沢が去り。あらためて。
「え……と。俺のエスコートって要る?」
「うん。せっかく来たんだもん」
当然って感じの深音。
「でもさ。二人の邪魔するのも悪い……し……」
俺が一緒だと、和沙はおもしろくないんじゃ……。
「いいの。エスコートしてほしい」
和沙の瞳に険はなく。
「私、こういうとこ……得意じゃないから」
「そうなんだ」
「それに。もう、將悟にヤキモチ焼かないから。安心して」
余裕の笑みを見て。
和沙も、納得してわかったんだと思った。涼弥みたいに。
誰に嫉妬する必要もない。自分に敵うヤツはいない。
「ん。オーケー」
和沙と微笑みを交わした。
これで、深音も安心だ。
次の次の番になり。簡単な手引書を受付台から取って、二人に渡す。
◇◇◇◇◇◇
ビックリマークの目印を頼りに、5つのヒントカードをゲット。
ヒントから得たアイテムのボタンを押す。
正解なら扉がオープン。
不正解の場合は、ゾンビのお腹の中にあるヒモを最後まで引っ張ろう。
不安な方はぜひ、エスコートをご利用ください。
入場料1人100円也。
◇◇◇◇◇◇
「おもしろそう!」
「ただ歩けばいいだけじゃないんだ……」
瞳を輝かせる深音と、表情を曇らせる和沙。
お化け屋敷、ほんとに苦手そうだ。
深音がコレ系好きだから来た手前、あんまり怖がるとこ見せたくないとか……あるのかな?
女同士だし。深音に甘えてもいいんじゃないのか?
レズの世界はよくわからないけどさ。
「大丈夫! 將悟がいるでしょ」
そうでなく。
「深音がいるから。手離さないで進んで。俺は後ろにつくよ」
自信なさげな和沙を励ますように頷いた。
受付を済ませた深音と和沙の手にはペンライト。
俺の頭には……白い猫耳だ。蛍光黄緑のブチ柄の。
『細くて軽いプラのバンドだから、つけてんの忘れるくらい軽いぜ』
言われた通り、軽いつけ心地で頭に違和感はない。
少なくとも、物理的苦痛は皆無だ……けども。
「似合うね。かわいい」
深音に褒められた。
「ほんと。杉原が喜びそう」
和沙の言葉にちょっと苦笑。
「あ……ありがと」
猫……うさぎよりマシか?
せめて、トラとかならよかった…同じか。
まぁ、精神的苦痛も……思いのほか少ない……か。
自分じゃ見えないからな。
「いってらっしゃい! 無事帰って来いよ」
岸岡に見送られたちょうどその時。
教室内から聞こえた野太い叫び声と悲鳴に、和沙が顔をしかめた。
中に入ると、想像したより明るかったらしく。
ペンライトは使わず、怯えることなく歩き出す二人。
最初のシチュエーションは、街の通り。
ビビットな店の看板やポスターが貼ってある建物沿いを行く感じ。
ひとつ目の仕掛けの手前で立ち止まる。壁を背に体育座りで俯くゾンビ4体。
もちろん、2体は人間だ。
「ビックリマーク1……」
ゾンビたちの後ろ。蛍光塗料で描かれたデカいマークを指さして、深音が呟く。
「奥の人の頭の横……カードあるよ。箱に……」
和沙が囁くと。
「將悟。アレ取ればいいんでしょ?」
振り向いて、深音が聞いた。
「そう。ヒント1」
ゆっくりとゾンビの前を進んでく。
ゾンビのいる道の左側に深音。隣に和沙。腕を組み、手もガッチリ握り合う二人が3体目のゾンビの正面に差しかかった時……。
すぐ後ろを歩く俺の横に座ってた2体目のゾンビと、4体目のゾンビがいきなり立ち上がった。
低い唸り声とともに。
「うああ゛……」
「きゃあ……ッ」
「いやあッ……!」
叫び。
深音を連れて、和沙がダッシュ……先にある角を曲がってった。
あー……。
声をかける間もなく残された俺。
ゾンビ役の二人と目を合わせ、肩を竦める。
「ヒントもらってっていいよな?」
「しょうがねぇか」
「やっぱ女のコ驚かすほうが楽しいね」
怖がられて逃げられて、ゾンビたちは満足げ。
台に置かれた箱からヒントカードを1枚取り、急ぎ足で先に進んだ。
客がひと組ずつ仕掛けの前を通るよう、十分な間を空けて入れることになってるけど……想定したより、中で時間食ってる模様。
「元気そうだな。うまくいってるみたいでよかった」
14、5人目くらいに並ぶ深音と和沙に、まずは挨拶。
「うん。すごく順調でハッピー。ね?」
深音が、満面の笑みで和沙を見やる。
「おかげさまで。そっちは?」
和沙に見据えられ、尋ねられ。
「同じ……順調でハッピー……」
そう返す俺の後ろから。
「おっナンパか? そういやお前、女もイケるもんな」
よけいなコメントを寄越したのは……。
上沢だ。
「いいのか? 浮気したら、杉原に何されっかわかんねぇぞ?」
ほんっと! よけいな時に出てきて、よけいなこと言うのヤメテ……!
「ナンパも浮気もしないって」
「ま、そうだろうけどよ」
「早瀬さぁ、マジで涼弥とデキてんの? あいつが男とって想像しにくいんだけど」
上沢の横に現れた、A組の体育会系ノンケの小林が言った。
「つき合ってる。想像はしなくていい」
「女オッケーなのに何で男とやるのかわかんない」
好きだから!
レンアイしてるから!
つっても、コイツには通じなそう……スルーで。
「あれ? そのコ、お前の女じゃなかった? 一緒にいんの見たことある」
あーもう……!
口を開く前に。
「私とはとっくに別れてるの。將悟は涼弥くん一筋なんだから、邪魔しないであげて」
深音が答えた。
「やさしいコは好きだな。でも俺、こっちのコがメチャ好み」
小林が和沙をじっと見る。
「どう? オトモダチから。俺とつき合わない?」
「ダメ! 和沙は私のなの」
深音がキッパリと言い放つ。
「ほかあたってね」
小林は口を半開き。
和沙は満足げに細めた目で深音を見てる。
よく言った!
これでスッキリだ。
俺はナンパしてない。
深音は元カノ。
和沙は深音の彼女だから、手を出すなと。
よかった。
何より……和沙の表情が緩んでホッとした。
自分のだって。恋人がハッキリ言ってくれるのは、嬉しいよな。
「マジか……ここがホモだらけなのはともかく、女子部まで……もったいない」
「女はいっぱいいんだろ。午後、店の客で気に入るの探せ。並ぶぞ」
上沢に宥められ、小林が列の後方に向かう。
「早瀬。早いとこ、うちの店見て来いよ。杉原のヤツ……イイ味出してるぜ」
「ん。シフト中にダッシュで行くよ」
上沢が去り。あらためて。
「え……と。俺のエスコートって要る?」
「うん。せっかく来たんだもん」
当然って感じの深音。
「でもさ。二人の邪魔するのも悪い……し……」
俺が一緒だと、和沙はおもしろくないんじゃ……。
「いいの。エスコートしてほしい」
和沙の瞳に険はなく。
「私、こういうとこ……得意じゃないから」
「そうなんだ」
「それに。もう、將悟にヤキモチ焼かないから。安心して」
余裕の笑みを見て。
和沙も、納得してわかったんだと思った。涼弥みたいに。
誰に嫉妬する必要もない。自分に敵うヤツはいない。
「ん。オーケー」
和沙と微笑みを交わした。
これで、深音も安心だ。
次の次の番になり。簡単な手引書を受付台から取って、二人に渡す。
◇◇◇◇◇◇
ビックリマークの目印を頼りに、5つのヒントカードをゲット。
ヒントから得たアイテムのボタンを押す。
正解なら扉がオープン。
不正解の場合は、ゾンビのお腹の中にあるヒモを最後まで引っ張ろう。
不安な方はぜひ、エスコートをご利用ください。
入場料1人100円也。
◇◇◇◇◇◇
「おもしろそう!」
「ただ歩けばいいだけじゃないんだ……」
瞳を輝かせる深音と、表情を曇らせる和沙。
お化け屋敷、ほんとに苦手そうだ。
深音がコレ系好きだから来た手前、あんまり怖がるとこ見せたくないとか……あるのかな?
女同士だし。深音に甘えてもいいんじゃないのか?
レズの世界はよくわからないけどさ。
「大丈夫! 將悟がいるでしょ」
そうでなく。
「深音がいるから。手離さないで進んで。俺は後ろにつくよ」
自信なさげな和沙を励ますように頷いた。
受付を済ませた深音と和沙の手にはペンライト。
俺の頭には……白い猫耳だ。蛍光黄緑のブチ柄の。
『細くて軽いプラのバンドだから、つけてんの忘れるくらい軽いぜ』
言われた通り、軽いつけ心地で頭に違和感はない。
少なくとも、物理的苦痛は皆無だ……けども。
「似合うね。かわいい」
深音に褒められた。
「ほんと。杉原が喜びそう」
和沙の言葉にちょっと苦笑。
「あ……ありがと」
猫……うさぎよりマシか?
せめて、トラとかならよかった…同じか。
まぁ、精神的苦痛も……思いのほか少ない……か。
自分じゃ見えないからな。
「いってらっしゃい! 無事帰って来いよ」
岸岡に見送られたちょうどその時。
教室内から聞こえた野太い叫び声と悲鳴に、和沙が顔をしかめた。
中に入ると、想像したより明るかったらしく。
ペンライトは使わず、怯えることなく歩き出す二人。
最初のシチュエーションは、街の通り。
ビビットな店の看板やポスターが貼ってある建物沿いを行く感じ。
ひとつ目の仕掛けの手前で立ち止まる。壁を背に体育座りで俯くゾンビ4体。
もちろん、2体は人間だ。
「ビックリマーク1……」
ゾンビたちの後ろ。蛍光塗料で描かれたデカいマークを指さして、深音が呟く。
「奥の人の頭の横……カードあるよ。箱に……」
和沙が囁くと。
「將悟。アレ取ればいいんでしょ?」
振り向いて、深音が聞いた。
「そう。ヒント1」
ゆっくりとゾンビの前を進んでく。
ゾンビのいる道の左側に深音。隣に和沙。腕を組み、手もガッチリ握り合う二人が3体目のゾンビの正面に差しかかった時……。
すぐ後ろを歩く俺の横に座ってた2体目のゾンビと、4体目のゾンビがいきなり立ち上がった。
低い唸り声とともに。
「うああ゛……」
「きゃあ……ッ」
「いやあッ……!」
叫び。
深音を連れて、和沙がダッシュ……先にある角を曲がってった。
あー……。
声をかける間もなく残された俺。
ゾンビ役の二人と目を合わせ、肩を竦める。
「ヒントもらってっていいよな?」
「しょうがねぇか」
「やっぱ女のコ驚かすほうが楽しいね」
怖がられて逃げられて、ゾンビたちは満足げ。
台に置かれた箱からヒントカードを1枚取り、急ぎ足で先に進んだ。
0
お気に入りに追加
329
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる