リアルBL!不安な俺の恋愛ハードルート

Kinon

文字の大きさ
上 下
139 / 246

34-1 愛されてるね

しおりを挟む
 あのあと、少なからず昂った心身をクールダウンさせるために。俺と涼弥はもう30分くらい、夜の公園で過ごした。

 もちろん、ガキみたいに遊ぶわけじゃなく。さすがに、高校生男子2人がはしゃいで遊具ガコガコ鳴らしてる光景はサムイからな。せいぜい、ブランコに腰下ろして喋る程度。

 公園のせいか。話したのは、小学校時代の思い出や、俺が寮に入ってた中学の頃のこと。



『お前が学校で襲われそうになったって聞くたび、俺がどんな思いしてたかわかるか?』



 涼弥に静かな声で聞かれた時、答えられなかった。

 当時、すでに俺に恋愛感情を持ってた涼弥が、ほかの男に性的対象として見られて……レイプしようと触られたり何だりされた話を聞かされて。

 そうしたヤツに怒ったか。
 仕返し出来なくて悔しかったか。
 近くにいられなくて心配したか。

 涼弥の気持ちを全く知らなかった俺は……。
 男だけの中学生活の特異さを、軽い口調で笑い話っぽく話したよな。
 しかも、一度じゃなく。

 だから、俺に言えたのは、『ごめん』のひと言だけ。



『お前は女も男も興味ないって言ってたから、安心してたのにだぞ?』



 言われて、もう一度『ごめん』。

『でも、襲われるのは不可抗力だろ? 興味なかったのはほんとだし。高校上がって、先輩にやられかけた時まで……お前とするまで、キスもしたことなかったんだからな』

 俺の言葉に、何故か涼弥の眉間に皺が寄った。不快ってより、嫌なコトを考えて苦痛を感じたみたいに。
 あのレイプ未遂を思い出したのか。
 俺もちょい思い出したけど、もう全然平気。遠い過去だ。

 そのあとの涼弥はごく普通で。

 また土曜か日曜遊ぶかって話して。俺と涼弥はそれぞれの自宅に帰った。



 翌日の木曜。
 何事もなく平和な今日の5、6限目は、芸術の時間だ。

 俺の選択は美術。
 美術室の作業台で、かい玲史れいじと向かい合って絵を描いてる。

「風紀の立候補、オッケーだったよ。紫道しのみちも」

 鉛筆を手に、玲史が口を開く。

 ギリギリに美術室に来た玲史は、昼休みに風紀委員の本部に行ってたはず。立候補者の認定をもらいに。

「あと杉原もね。風紀やるのって、將梧そうごのため?」

「涼弥、大丈夫だったんだ」

 ホッとして呟いて、玲史を見る。

「俺が選挙出るからだよ。もし、役員になっちゃった場合……風紀委員なら近くで助けられるから……って」

「へーすごい。愛されてるね」

 愛……!?
 その言い方は照れる……激しく!

「涼弥はほんとまっすぐだよな。好きだから、で動くじゃん? 口だけじゃねぇしさー」

 凱も続ける。

「うん……」

 まっすぐで強い思い……俺も返せてるかな。

「好きも心配も。そこまでされると重くない?」

「いや。重くないよ。そんなに心配するなっては思うけど」

 玲史に聞かれ、あらためて考えてみても。涼弥の気持ちを負担に感じたことはない。

「ちょこっとでも浮気したら大変だね」

「しないから大丈夫」

「過去の男にも嫉妬しそう。あ。経験は女だけ? 男はあるの?」

「あー……うん。一度だけ……タチで」

 ないって、堂々と言えればよかったか?

 ほんのチラッと。
 視線が凱にいっちゃったけど。
 鉛筆を動かしてた凱は手元から目を上げなかったから、あやしい目配せにはならず。

「ふうん……將梧がタチでか」

 玲史が俺をじっくりと見る。

 いつも思う。
 玲史の目、スキャン機能ついてるよねきっと。

 凱もだけど、洞察力高い人間の前で隠し事するのってキビシイ……だから正直に答えたの。もう逃して。



 誰と……って。聞いてくれるなよ!?



「じゃあ、相手に口止めしとかないとね」

「え? 何で?」

 追及を免れるも、意外な言葉に問う。

「つき合う前のことじゃん」

「杉原は気にするタイプでしょ。相手にも迷惑だし。男とは経験ないで通せばいいよ」

「……男とやった話はセックスしてから聞くけど……あるかないかだけ教えろって。で、タチは一度あるって言った」

「あーあ。隠しとけばよかったのに」

「お前はそのほうがいいのか?」

「僕はどっちでもいい。知られたくない過去なら聞き出す気ないし。全部知ってほしいなら聞くし」

「涼弥は知りたいんだ。全部。俺も……隠すつもりない。悪いことしてないしさ」

「あるってだけ知ったら、よけい気になって想像して。ひとりで幻に嫉妬してるんじゃない?」

「それは、つらい……けど。涼弥が聞きたいタイミングで話すよ」

「適当に安心させれば? 後輩に頼まれて仕方なく、とか」

「俺、そんな理由で出来ない」

「將梧の好きにしていーんじゃん?」

 顔を上げた凱が、話に加わる。

「嘘つきたくねぇんだろ?」

「うん。つかれるのも嫌だ。どうでもいいことなら別にいいんだけどな」

「そういうことか」

 玲史が納得したふうに頷いた。

「杉原も將梧も。セックスするって行為、大切にしてるんだね」

「そー。お前にはわかんねぇ感覚」

「凱もでしょ」

 玲史と凱が笑みを交わす。二人の瞳は鋭くて……暗い。

「とにかく、嘘ついて隠されると……あとで知った時、よけい重く感じるだろ。ちゃんと言わないと、あり得ない誤解させるかもしれないしさ」

「この前のも、杉原が誤解してつけ込まれたんだっけ?」

「半分はそう。だから学んだ。涼弥に疑わせない。気持ちは素直に伝える」

「駆け引きも楽しいのにな」

「悪だくみじゃねぇの?」

 凱の言葉にハッとした。

「水本、あれから何もないか? あの……写真のことで」

「うん。保険、効いてるみたいねー」

「僕にもないよ」

 二人の答えに安堵する。

「すれ違った時、照れて目逸らされたくらい」

 玲史。それ、照れてるんじゃないと思うよ?

「完全フリーなら相手してもよかったけどな」

「へー落ちたの? 紫道」

「もうすぐそこ。風紀委員になったらオッケーだって」

 嬉しげに凱に報告する玲史。

「そのおかげで。俺が選挙出るんだからな。つき合うなら大事にしろよ」

「もちろん。やっとだもん」

「あんまいじめんなよ。紫道はタフそうだけどさ」

 玲史が肩を竦めた。

「あ。將梧。選挙、俺が出てやれねぇ代わりに、ほかのサポートはするねー」

「え? うん……」

 サポートって何だろうと思いつつ。

「ありがとな。いつも、いろいろしてくれてるじゃん? お前は、助けほしいことないか? 困ってることとか」

「ん。今んとこ大丈夫。追試が面倒なのだけ」

「補習しっかり受けてがんばれ」

「オッケー」

 凱の笑顔に笑みを返した。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

処理中です...