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32-4 二人とも……!?

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 今日のLHRでは、学祭のクラスの出し物……お化け屋敷の詳細を詰める。
 決めるべき事項は。



 実行委員2名。
 使用教室。ここ2-Bか、広い教室を借りるか。
 お化け屋敷のコンセプト。
 シフト。
 役割分担。

 こんなところか。



 今日は議長の俺がそこそこやる気ありのため、サクサクとコトが進む。

 準備期間は忙しいけど、当日のシフト免除の実行委員は即決定。学祭を海咲ちゃんと回る予定の佐野と、バリタチのイケメン岸岡だ。
 ノンケとゲイ1名ずつでちょうどいい。

 使用教室は6ヶ所ある広めの多目的教室の使用希望を出し、取れればそこ。ダメなら、再検討ってことに。

 お化け屋敷のコンセプトは、オカルト恐怖系か謎解き脱出系かで多数決になり。
 結果、ポイントにあるヒントを集めないとラストの出口を抜けられない、謎解き脱出系になった。
 テーマは、幽霊でなくゾンビに。

 シフトは、4時間ずつ2交代。その中でトイレ休憩等は取れるよう、人数にはゆとりありで。



 最後に役割分担。
 まずは、お化け役というかゾンビ役。アトラクション内の仕掛けの操作を兼ねるゾンビは人気職で、ジャンケンで20人を選出して2チームに分けた。 
 人を脅かすのって楽しいし、ゾンビメイクしてみたかったな俺も。

 で、残る20人のエスコート役を、はじめに接客対象で分ける。

 うちの学園では、ノンケは女を、ゲイは男をもてなすのがデフォ。客もそう思ってくる。バイはどっちでも好きなほうで。
 あまりにも偏ると厳しいところだけど、ノンケ12人、ゲイ8人で問題なし。今回、ゾンビ役にゲイが多いからこんなもん。

 まぁ、お化け屋敷ってカップルで入る客多いし、男をエスコートっていうのも微妙だからちょうどいいかな。

 これも2チームに分けて、2シフトのメンバー決定が完了。

 LHRの残り10分は、お化け屋敷の仕掛けを考える時間にした。あさってまでにひとり一案、紙に書いて提出してもらうことになってる。



「ねぇ。將梧そうごはゲイじゃないの?」

 決めるべきことを決め終え、みんながワイワイと話し始めてすぐ。教壇に腰を落ち着けた玲史れいじが問う。

「杉原のことは内緒?」

 一緒にいる紫道にも、俺と涼弥のことは話してある。

「この時間終わるまで。ノンケのフリして女の接客担当にならないと……涼弥が心配するからさ」

 この答えに、玲史が愉快そうな表情になる。

「心配って、將梧の貞操を?」

「まぁ……そうかな」

「しょうがないよね。今の將梧、僕だって襲いたいもん」

「え……何!? 冗談……」

 隣に座って俺を見る玲史……捕食者の目つきだ。

「言ったでしょ? 興味湧いたって。杉原にやられる前に僕とどう?」

「いや、いい。遠慮する」

 玲史を本気にさせたら、マジで食われそう。

「てか……涼弥とまだだって、何でわかる?」

「セックスに溺れて発情してる感じがないから。直前って感じがたまらない」

「やめとけ。涼弥に潰されるぞ」

 紫道しのみちが忠告してくれる。

「二人の邪魔するな」

「妬ける?」

「どうだろうな」

 玲史の言葉を否定しない紫道に驚いた。

「紫道、お前……」



 落ちたのか!?



「勘違いするな。俺と玲史は何もない」

「今はね。もうすぐ、僕のモノになる約束でしょ」

「玲史。お前は話を飛躍し過ぎだ」

 溜息をついた紫道が、俺に視線を向ける。

「お前を見倣ってというか……お前と涼弥見て、俺も先に進むことにした」

「え……?」

「僕がいくら紫道に迫っても落ちないのは、怖いからなんだって」

 クエスチョンマークを乗せて、紫道と玲史を交互にみやる。 

「ずいぶん前に、不本意でつき合ったヤツにムリヤリやられたことがある。それから、女とはあったが……男とはない」

「でも、欲情するのは男なんでしょ? 僕みたいな」

「それを……確かめてみる気になった」

 紫道に、そんな過去が……。

「つまり、少しは僕に気があるからだよ」

「……そうだな」

「約束って。どういう……?」

 嬉しげな玲史と、淡々と話す紫道に尋ねると。

「風紀委員に立候補する」

「お前が?」

「俺と玲史が」

「二人とも……!?」

 思わぬ答えが返ってくる。

「僕が風紀委員になったら、つき合ってくれるって」

「じゃあ、紫道がなったら?」

「……俺がいいと言ったこと以外はしない」

 それって。プレイの内容か……?

「あー楽しみ。待ちきれないよ。それまでに誰かつままないと」

「俺はやめろ。つーかさ。紫道に悪いと思わないのか?」

 つい、責め気味な発言をして気づく。

 俺、似たようなこと……自分がやってるじゃん!
 自分勝手な理由はあっても、相手にしたら同じだ。

「紫道は好きだけど。まだフリーだもん」

 悪びれない玲史を咎める資格、ないよね俺。
 でも、聞きたい。

「紫道は? 自分を好きだって男が、ほかのヤツとって……気分悪いだろ?」

「よくはないが……こっちがハッキリしてないからな。嫌ならその前に動けばいい話だ」

 まっすぐで潔い紫道らしい考え。
 涼弥はどう思う……かな。

「もし、紫道だけ風紀になったら?」

「その時に答えを出す」

「結果は同じだよ」

 不敵な笑みを浮かべて、玲史が言い切る。

「どっちかだけでも。どっちもダメでもね」

「お前のその自信は、どこから来るんだ?」

 紫道の問いの答えは……たぶん、俺も知ってる。

「ちょっとしかその気がないなら、この僕とつき合うリスクは負わないでしょ」

 その通り……って。本人が言うのかソレ。

「キミが想像する10倍はすごいよ? 僕の普通は」

 数秒、表情を固めたあと。紫道が諦め顔で微笑んだ。

「約束したからには、一応の覚悟はしてる。俺の意思は……五分五分だな」

 え……マジに?
 過去の傷癒えたとして、いきなり鬼畜に身を委ねるの……!?

「いいのか? その……」

 言い淀む先を、紫道が的確に読む。

「お前は、涼弥が玲史と同類だったら別れるか?」

「……別れない。納得」

「まぁ、半月じっくり考えてから決める」

「ん。俺は、二人とも応援するよ」

 この二人、けっこううまくいく気がする。
 少し……かなり、紫道が心配だけど。

「と、いうわけで。ごめんね。將梧」

 あたたかい気持ちと表情の俺に、玲史が詫びる。

「立候補出なかったら、生徒会選挙のほうよろしく」

「は……!?」

 あ……そうか!
 うちのクラスに生徒会やりたいヤツいない場合、学級委員から候補者出さなきゃいけなくなって。
 玲史も紫道も風紀に立候補するとなると……。



 俺が選挙に出るしかないのか……!?



「悪い。頼むな」

 すまなそうな紫道と、どこか楽しげな玲史を見て。



 玲史と紫道の明るい未来を願う気持ちはそのままに。
 生徒会役員に立候補してくれるクラスメイトがいることを切に願う俺。

 自力で叶えられないモノは、ひたすら……願うしかないよな。



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