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24-5 キスは思わぬ結果へと

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 キスされるって予想出来てても。
 された瞬間、ビクッてなった。

 軽く触れた唇を少しだけ離して、涼弥が閉じてた目を開ける。目を閉じてなかった俺と合った瞳が……すごく切なげで。
 無意識に生唾を飲み込んで息を吐いた口を、乱暴に塞がれた。

「ん……ふ……はぁっ、りょ……んんっ」

 口内に入ってきた涼弥の舌に、戸惑ったのは1秒。
 遠慮がちに触れてくる舌先を舐め。そのまま自分の舌を横から奥へと這わせ、涼弥の口の中に差し入れる。
 薄く開けた目で涼弥を見ると。
 驚きと……熱に満ちた瞳で俺を見返して、目を閉じた。同時に舌を強く吸われ、俺も目をつぶる。

「っん……は……あ……」

 身体中が熱くなる。血が沸騰するみたいに。
 互いの舌を吸い合って。唇の内側を歯茎を舐り合って……涼弥と。



 好きだ……もっと、感じたい……!



 キスで目を閉じるのは、視覚を失くすため。
 瞳から間違った感情を読み取らないように。
 嘘に気づかなくて済むように。
 そして、よけいな情報を遮断して、触覚で心を見るために。

「んっ……あ……はっんんっ……あぁ……」

「はぁっ……ん……は……うっ……」

 涼弥の荒い息づかいに、俺を求めて性急に動く舌。
 ゾクゾクする快感が押し寄せる。



 初めてしたキスは、涼弥とだけど軽く一瞬で。
 深音みおとして、性欲を刺激するキスは気持ちいいものだと知って。
 快感がほしくて、安心したくて興奮したくて……かいがほしくてしまくったキスは、心も身体も近づけて気持ちよくて満たされた。

 恋愛感情を抱く相手……好きなヤツとのキスは。



 満たされたと思ったらすぐ足りなくなって、終われる気がしない……!



 もちろん、俺のペニスも反応してる。
 昨日、男に欲情する自分を認めて、素直に快楽を求められるようになったおかげで。せきを切ったように、快感への欲求が湧き出てくる。
 それもあるけど、それとは別に。

 心で涼弥がほしい。
 近づくだけじゃなく、重なって浸食して一緒になりたい。

 まるでキスでそれが出来るって思ってるみたいに。
 快感以上の何かを涼弥に求めてる。



「ん……涼弥……はっんんっ……!」

 キスの合間に名前を呼んだら、そんな余裕は許さないとばかりに深く舌を捻じ込められて。
 理性が飛んでく。
 何も考えられなくなってく。

 ひとしきり、口の中で貪る快感を追ううちに。立ってられなくなって、ズルズルと壁を擦りながら腰を落とす。



 このままじゃ……ヤバ……ここ学校……!



 俺に覆いかぶさるように膝をつき、なおも激しくキスを続ける涼弥の胸を両手で押した。
 けど。
 涼弥の身体はビクとも動かず。
 それどころか、俺の両手首を掴んで壁に押しつけて、口内を舐り続ける。

「はぁっ、ん……ふ、あっ……」

 舌を吸って唾液を飲んで。腰回りがじくじくと疼いて。
 離された唇を耳の下に感じた直後、首筋を下へと舐める涼弥の舌のねろりとした感触に声が出る。

「ん、ああッ……!」

將梧そうご……」

 熱にうかされたような瞳で俺を見つめる涼弥。



 ダメ……だ。これ以上……ここで俺まで止められなくなったら……!



「やめろ! もう……ここじゃ……」

 俺の言葉を、授業開始のチャイムが遮った。

 その音はひどく大きくて。俺たちの意識を一気に現実に引き戻す。物理室を出てから、まだ10分しか経ってないことが信じられなかった。

 さらに信じられないことに。

「ごめん……俺……は……」

 チャイムが響き終わる前に、俺の手を離して立ち上がった涼弥が言った。

「悪かった……許してくれ……」

 床に座り込んだままの俺を。ものすごく悲痛な表情で見下ろした涼弥が、そのあとどうしたか。

「え……!? おい! 涼弥!」



 ハイスピードで階段駆け下りてったよ……!?



 ワケがわからず。
 呆然と涼弥が下の階に消えてくのを見送った俺。

 遠ざかる足音と……怒鳴り声? あいつの? いや、先生か? 運悪く見つかったか?
 だとしても、チャイム鳴ったとこだし。早く行けって言われるくらいか。

 それよりも。何よりも。



 何でごめん!?
 何で謝る!?
 何を許せって……!?

 まさか。まさかだけど、あいつ……。



 自分が、ムリヤリ俺にキスしたとでも思ってるのか……!?



 そんなはずないよね?
 だってさ。だって……。



 俺、超自分からほしがってキスしてたじゃん!



 わかってくれてなかったのか?
 俺が感じてたのも?
 好きだからキスに応えたのも?
 わかんないまま、あんな激しく?

 いや。ないだろ。
 そこまで鈍くないよな?
 つーか。
 俺が嫌がってるって思ってあんなキス続けてたとしたら、逆に怖いわ。

 だけど……チャイムで現実に戻されたあとの涼弥の言葉と行動は、そんな……感じ。
 いったいぜんたい、どうしてそうなるんだ?

 あ……俺がやめろって言ったから、か……?

 いや。
 でも、それはさ。



 あそこで止めなきゃ、その先までいきそうだったから!



 キスして気持ちよくて……俺は勃っちゃってたよ?
 だから……涼弥もそうなんじゃ……って。
 そうなら、ほかのことどうでもいいまで二人して理性飛んだら……マズいじゃん! 今ここで!



 はぁ……もう……なんなの。あいつ……俺も。

 学校で盛るなんて、以前の俺じゃあり得ない。自分が怖い。
 涼弥も……あんな瞳で俺を……ほんとに……思ってくれてるんだ……って!
 俺はわかったのに!
 涼弥が俺を好きだってこと、言葉で言われなくても感じたのに。



 あいつ、ちゃんと言わなきゃわかんないの……?



 わかんない……んだろうな。
 だから、逃亡したんだよね。俺、置き去りにして。
 よくないだろコレ。
 欲情収めて一緒に戻るのも微妙だけど、話す時間あれば……お互いの気持ち確認出来たんじゃないの?

 俺が、もっと早く言えばよかったんだよな。

 でも。
 涼弥の態度に仕返しみたいにして。好きだって伝えるのあとにしたの、俺だけどさ。
 あいつだって、自分の気持ち伝えないでキスしてきたじゃん?
 し始めたら、言う暇なかったし!



 伝えなきゃ。ちゃんと。



 はー……教室戻ろう。
 勃ったの収まったし。ここいても、涼弥が戻ってくるとは思えないしね。



 ひとり、屋上に続く階段を下りながら。
 途中までは予想の範疇だったはずが、何故かこうなった突然の出来事に溜息連発の俺。

 これってほんと予想外……思わぬ結果だよな。



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