79 / 246
23-3 大丈夫になった
しおりを挟む
微かに首を傾げた凱が、方眉を上げる。
「疑われて白状すんじゃなく自分から?」
「そう。俺が頼んでやったって。もし、そうなってあいつに聞かれたら、お前も本当のこと言って」
「必要んなることあんの?」
「ある。言ったろ? 涼弥の心境によっては、俺にも男との経験があったほうがいいって」
「あー……楽になるってやつ? 男とやったことあんのお前に知られてるって、あいつ知ってんの?」
「偶然、話してるの聞いちゃったんだ。その相手と涼弥が。で、あいつ焦っちゃってたから、俺は大丈夫って言っといたのに……避けられてる感じ」
大丈夫って言った経緯と理由を、かいつまんで話した。
「で、お前が今から悠と……その相手とやるとしても、俺をそういう目で見てるとしても大丈夫って言った」
凱が眉を寄せる。
「そいつとやっても大丈夫っつーのは、よけいじゃねぇの」
「うん。それは嘘。好きだってバレたくなかったから。それに、俺のほうは……お前とやる予定だったしさ」
「やっぱ後ろめたいの?」
溜息をひとつついて、凱を見る。
「今日までは少し、後ろめたさはあったよ。だから、涼弥に知られないようにしようって。でも、今は……知られてもかまわない」
まっすぐ。凱を見つめる。
「後悔してないからほんとに。ただ、涼弥がお前に悪感情向けるかもしれないことだけは、ごめん。出来る限り俺んとこで止める」
「それは仕方ねぇだろ。俺はさーお前にオッケーした時点で、涼弥に殴られる覚悟くらいしてるぜ。お前がいーと思うよーにしろよ」
凱の瞳が邪気なく笑う。
「あ。本心は早く伝えてあげてねー。大丈夫って言われていろいろ混乱してんじゃねぇの? 避けてんのは、どーしていーかわかんねぇからだろ」
「混乱?」
「俺にそーゆー目で見られてもいーってことは、俺とそーゆーことする可能性ゼロじゃねぇのか? ノンケなのに? 彼女いんのに? だから考えねぇよーにしてたのに? 考えていーのか? 期待しちゃっていーのか?」
「いいよ。そのために言ったんだし……って、今は自信持って言える」
「一度考えたら消えねぇからな。あからさまに期待の目でお前のこと見ちゃってから早とちりってなんの、怖いんだろ。お前が思ってるよりあいつ、鈍いぜ」
「そうかもしれないけど……」
「ハッキリ好きだって言えよ。ずっとお預けじゃ、あんまりじゃん?」
お預けって……。
気持ちだけじゃないよね?
「あー!」
テーブルに突っ伏した。
「どーした? 疲れたの?」
「……涼弥とセックスするの怖い」
「出来たんじゃねぇの? 心構え」
「出来たよ。挿れられるのが怖いんじゃない」
「まだ何かあんの?」
顔を上げた。
のんきな凱の笑顔に癒される。
「自分がどうなっちゃうかわかんなくて。お前みたいにうまく出来ないよ俺、きっと」
「うまくやろーとしてやってねぇよ。信用する相手とは思いっきりやんの。お前もそーすれば? 俺がすげー気持ちよがってんの見て興奮しただろ?」
「うん……」
「うまいとかじゃねぇの。お前がいーなら、涼弥はそんだけで十分満足。お前のその『怖い』は、ちんこ勃てばどっかいくから大丈夫」
気が……抜ける。楽になるなマジで。
「お前に言われると、ほんとその気になる。もっと言って」
「涼弥とやんのは怖くねぇよ。ワクワクして楽しみにしといて大丈夫」
「ありがと……大丈夫になった」
目を合わせて笑ったところで。
「凱」
ドアにノックと烈の声。
「入っていーよ」
凱が答えると、烈が部屋に入ってきた。
「ショウが、將梧も夕飯食べる?って」
「いや。それは……もう帰るよ俺。こんな時間だし」
お断りすると。
「なら、綾さんが駅まで送るって。バスあんまりないし、もう遅いから」
「え……? それは……」
助けを求めて凱を見る。
「原チャリでバス停行くつもりだから、嫌なら断っていーぜ」
俺が決めるの……?
てことは……凱は綾さんを信用してるのか?
「あの人、お前を襲ったりしねぇよ。そこは安心して」
「それはよかった……」
烈を見る。
あー似てるな二人。でも、烈の瞳には含みがあるような……。
「じゃあ、お世話になろう……かな」
凱に視線を戻す。
「お前、腰痛いんだろ? ゆっくり休めよ。明日また、学校で」
「やさしーね」
唇の端を上げる凱に、笑みを返す。
「やさしいのはお前だろ。楽になった。ありがとな」
腰を上げて息をついた。凱も立ち上がる。
「俺も下まで行く」
凱と烈と3人で階段を下りて玄関ホールに着くと、廊下の向こうからバタバタと人がやって来た。
「凱! 挨拶に寄るんじゃなかったの?」
エプロン姿の元気なおばさんだ。
まぁ、おばさんとしてはまだ若いけど、うちの母親くらい。凱と烈の母親で間違いないな。
「こんばんは。遅くまでお邪魔してすみませんでした。クラスメイトの早瀬將梧です。凱くんにはお世話になっています」
礼儀正しく頭を下げると。目の前で足を止めたその人が満面の笑みを浮かべた。
「かしこまらなくていいわよ。お世話になってるのは凱のほうでしょう? 仲良くしてくれてありがとうね。この子の友達ってほとんど会ったことなくて……嬉しいな。またゆっくり遊びに来て」
「はい……こちらこそ、ありがとうございます」
「気をつけて帰ってね。おうちの方によろしく」
手を振って、凱の母親は再びバタバタと廊下を戻っていく。
「せわしないね。ショウは」
烈のコメントが終わらないうちに、玄関のドアが開いた。
今度は綾さんだ。
「疑われて白状すんじゃなく自分から?」
「そう。俺が頼んでやったって。もし、そうなってあいつに聞かれたら、お前も本当のこと言って」
「必要んなることあんの?」
「ある。言ったろ? 涼弥の心境によっては、俺にも男との経験があったほうがいいって」
「あー……楽になるってやつ? 男とやったことあんのお前に知られてるって、あいつ知ってんの?」
「偶然、話してるの聞いちゃったんだ。その相手と涼弥が。で、あいつ焦っちゃってたから、俺は大丈夫って言っといたのに……避けられてる感じ」
大丈夫って言った経緯と理由を、かいつまんで話した。
「で、お前が今から悠と……その相手とやるとしても、俺をそういう目で見てるとしても大丈夫って言った」
凱が眉を寄せる。
「そいつとやっても大丈夫っつーのは、よけいじゃねぇの」
「うん。それは嘘。好きだってバレたくなかったから。それに、俺のほうは……お前とやる予定だったしさ」
「やっぱ後ろめたいの?」
溜息をひとつついて、凱を見る。
「今日までは少し、後ろめたさはあったよ。だから、涼弥に知られないようにしようって。でも、今は……知られてもかまわない」
まっすぐ。凱を見つめる。
「後悔してないからほんとに。ただ、涼弥がお前に悪感情向けるかもしれないことだけは、ごめん。出来る限り俺んとこで止める」
「それは仕方ねぇだろ。俺はさーお前にオッケーした時点で、涼弥に殴られる覚悟くらいしてるぜ。お前がいーと思うよーにしろよ」
凱の瞳が邪気なく笑う。
「あ。本心は早く伝えてあげてねー。大丈夫って言われていろいろ混乱してんじゃねぇの? 避けてんのは、どーしていーかわかんねぇからだろ」
「混乱?」
「俺にそーゆー目で見られてもいーってことは、俺とそーゆーことする可能性ゼロじゃねぇのか? ノンケなのに? 彼女いんのに? だから考えねぇよーにしてたのに? 考えていーのか? 期待しちゃっていーのか?」
「いいよ。そのために言ったんだし……って、今は自信持って言える」
「一度考えたら消えねぇからな。あからさまに期待の目でお前のこと見ちゃってから早とちりってなんの、怖いんだろ。お前が思ってるよりあいつ、鈍いぜ」
「そうかもしれないけど……」
「ハッキリ好きだって言えよ。ずっとお預けじゃ、あんまりじゃん?」
お預けって……。
気持ちだけじゃないよね?
「あー!」
テーブルに突っ伏した。
「どーした? 疲れたの?」
「……涼弥とセックスするの怖い」
「出来たんじゃねぇの? 心構え」
「出来たよ。挿れられるのが怖いんじゃない」
「まだ何かあんの?」
顔を上げた。
のんきな凱の笑顔に癒される。
「自分がどうなっちゃうかわかんなくて。お前みたいにうまく出来ないよ俺、きっと」
「うまくやろーとしてやってねぇよ。信用する相手とは思いっきりやんの。お前もそーすれば? 俺がすげー気持ちよがってんの見て興奮しただろ?」
「うん……」
「うまいとかじゃねぇの。お前がいーなら、涼弥はそんだけで十分満足。お前のその『怖い』は、ちんこ勃てばどっかいくから大丈夫」
気が……抜ける。楽になるなマジで。
「お前に言われると、ほんとその気になる。もっと言って」
「涼弥とやんのは怖くねぇよ。ワクワクして楽しみにしといて大丈夫」
「ありがと……大丈夫になった」
目を合わせて笑ったところで。
「凱」
ドアにノックと烈の声。
「入っていーよ」
凱が答えると、烈が部屋に入ってきた。
「ショウが、將梧も夕飯食べる?って」
「いや。それは……もう帰るよ俺。こんな時間だし」
お断りすると。
「なら、綾さんが駅まで送るって。バスあんまりないし、もう遅いから」
「え……? それは……」
助けを求めて凱を見る。
「原チャリでバス停行くつもりだから、嫌なら断っていーぜ」
俺が決めるの……?
てことは……凱は綾さんを信用してるのか?
「あの人、お前を襲ったりしねぇよ。そこは安心して」
「それはよかった……」
烈を見る。
あー似てるな二人。でも、烈の瞳には含みがあるような……。
「じゃあ、お世話になろう……かな」
凱に視線を戻す。
「お前、腰痛いんだろ? ゆっくり休めよ。明日また、学校で」
「やさしーね」
唇の端を上げる凱に、笑みを返す。
「やさしいのはお前だろ。楽になった。ありがとな」
腰を上げて息をついた。凱も立ち上がる。
「俺も下まで行く」
凱と烈と3人で階段を下りて玄関ホールに着くと、廊下の向こうからバタバタと人がやって来た。
「凱! 挨拶に寄るんじゃなかったの?」
エプロン姿の元気なおばさんだ。
まぁ、おばさんとしてはまだ若いけど、うちの母親くらい。凱と烈の母親で間違いないな。
「こんばんは。遅くまでお邪魔してすみませんでした。クラスメイトの早瀬將梧です。凱くんにはお世話になっています」
礼儀正しく頭を下げると。目の前で足を止めたその人が満面の笑みを浮かべた。
「かしこまらなくていいわよ。お世話になってるのは凱のほうでしょう? 仲良くしてくれてありがとうね。この子の友達ってほとんど会ったことなくて……嬉しいな。またゆっくり遊びに来て」
「はい……こちらこそ、ありがとうございます」
「気をつけて帰ってね。おうちの方によろしく」
手を振って、凱の母親は再びバタバタと廊下を戻っていく。
「せわしないね。ショウは」
烈のコメントが終わらないうちに、玄関のドアが開いた。
今度は綾さんだ。
0
お気に入りに追加
326
あなたにおすすめの小説
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜
ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。
高校生×中学生。
1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。
兄弟がイケメンな件について。
どらやき
BL
平凡な俺とは違い、周りからの視線を集めまくる兄弟達。
「関わりたくないな」なんて、俺が一方的に思っても"一緒に居る"という選択肢しかない。
イケメン兄弟達に俺は今日も翻弄されます。
召喚された美人サラリーマンは性欲悪魔兄弟達にイカされる
KUMA
BL
朱刃音碧(あかばねあおい)30歳。
ある有名な大人の玩具の開発部門で、働くサラリーマン。
ある日暇をモテ余す悪魔達に、逆召喚され混乱する余裕もなく悪魔達にセックスされる。
性欲悪魔(8人攻め)×人間
エロいリーマンに悪魔達は釘付け…『お前は俺達のもの。』
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる