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19-2 一緒にサウナ
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「涼弥」
目の前にいる涼弥は、今来たばかりらしく。ジーンズにTシャツにシャツを羽織った格好で、俺以上に驚いてるように見えた。
「偶然……だな。お前とここで会うの、半年ぶりくらいか?」
普通に。普通にだ。
俺たちはジムで偶然会った幼馴染み。
親友っていうには、今はすれ違ってる感すごいけど。
「ああ。最近は夜に来てるんだが、今日は……仲間のひとりに頼まれた」
「効果的な筋トレのやり方教えてくれって?」
「まぁ、そんなところだ。お前はもう終わりか?」
「いや。ちょっと休憩にサウナ」
あらためて。涼弥が、タオル1枚を身に着けただけの俺に目を走らせる。
「俺も行く。そいつに言ってくるから、先に入っててくれ」
「え? 涼弥!」
呼び止めるより早く、涼弥はロッカールームの奥へと消えた。
来るの? サウナに?
ここ数日の避けられてる感は気のせいか?
わざわざ声かけてきたんだから、涼弥は別に普段通りだったのかも。うん。
ただ。
俺サイドだけの心理的問題かもしれないけどさ。一緒にサウナって……なんか落ち着かないというか、緊張しそうっていうか。
そう思いつつ。
とりあえず、サウナルームの中に入った。
このジムのサウナは、広くもなく狭くもなく。
12帖くらいかな? コの字型に板張りベンチが2段ずつ。無理なく入れるのは15、6人って感じ。
中にいるのは二人だけ。奥の下段に若い男がひとり。左手前の下段に初老の男がひとり。
右側の奥の上段に座り、ドアの上方の壁に設置されたTV画面をぼうっと眺めながら涼弥を待つ。
ここのサウナの音声なしのTV見てて、いつも思うんだけどさ。
音がないとつまんないんだよね、TVって。
しかも、日曜の午後の今の時間。映ってるのはゴルフ中継で。
興味がないものって、ほかに何も見るものなくても暇を潰せなくない?
一度本持って入ったら。汗で濡れた紙が高温でパリパリになったし、係員に注意された。発火したりの危険はなさそうだったけど、禁止らしい。
暇つぶしになるものなしのこの空間で、涼弥と。
間が持つのか?
何話せばいいんだ?
二人きりじゃないのが、せめてもの救いだな。
サウナルームで熱せられること3分。
ドアが開いて、涼弥が入ってきた。
「休憩って言ってたが、このあとまだトレーニングするのか?」
聞きながら、涼弥が俺の隣に腰を下ろす。
「うーん……サウナと風呂で時間潰しかな。沙羅が5時までやる気だからさ」
「最近は、おかしなの寄ってきてないか?」
幼馴染みの友人として、涼弥も沙羅を心配してる。
沙羅がここでストーカーもどきにつきまとわれた時、俺が話をつけてやるって意気込む涼弥を宥めるのは大変だったっけ。
「大丈夫。よく見れば俺たちが似てるのわかるだろうけど、パッと見彼氏に見えるから。一緒に来てれば問題なし」
「ならいいが……お前のほうは?」
「え……俺?」
「お前も江藤に目をつけられたらしいな」
やや険しい表情で、涼弥が俺を見る。
「火曜の集会のあと凱が江藤たちと揉めたって、上沢に聞いた」
「あーあれは、江藤と揉めたわけじゃなくて。周りが凱に……ちょっと過剰に反応しただけ」
そういえば。
あの日俺の家に向かってる時、凱に言われたな。
お前まで江藤に興味持たれるハメになっちゃってごめんね。これ以上巻き込まねぇようにするから……って。
巻き込まれたとは思ってないし、勝手にやれと放っておく気もない。
凱が江藤のとこに話しに行く時は、何かあったら救出する手筈を整えておくつもりだ。
御坂と鈴屋、あと紫道にも応援を頼んで……。
「行くなよ絶対に。江藤の寮の部屋には」
小声ながら、強い口調で言い放つ涼弥。
「凱も行かせるな。あの男は危険だ」
真剣な涼弥の瞳にたじろいで、視線を落とした……のがマズかった。
俺より色黒な、シャワーで濡れた裸の胸に腹。腰にはタオル……。
何度も目にしたことのある、鍛えられた筋肉質な涼弥の身体。
それが、今は……今の俺にとっては、動揺のモトになる。
いやいや!
決して。エロい目で見ちゃってるんじゃないよ?
たださ。
自分の気持ちしっかり自覚してから初の涼弥の裸だから、つい意識しちゃうのは当然だよね?
女の裸と違って、特に見どころがあるわけじゃないし。
プール行けば男はみんな海パン1枚だし。
ジムの風呂では真っ裸だし。
男の裸なんか見ても何とも思わない……けど。
ただ。でも。だって……。
涼弥がこんな近くで俺の目の前にいて……ほぼ裸で!
好きな人の裸って、破壊力あるよな。
ダメだ俺。
エロい目で見てんじゃん……いや。
やっぱ違う。
ドキドキ感はあるけど、エロい気分にはなってない。
ちょっと狼狽えただけ……。
「將梧? どうした? お前まさか、江藤のとこ行くつもりだったのか?」
「え……? あ、俺は行かないよ。大丈夫……」
いかん。
ボーっとしてた……って。
我に返って顔を上げると、涼弥の視線に射られてる俺。
そ……んなに見つめないでくれ……!
この半年。この前天文部のとこで接近したの抜かせば、ほとんど近くで見てないのに。
いきなりこの距離でガン見はキツい。
「だけど、凱は行く」
「止めろ。ヤツの噂、知ってるだろ?」
「その噂が本当かどうか、確かめるのに話したいって。俺だって行かせたくないけど、止めるのは無理だ。あいつ、レイプする人間、異様に敵視してるから」
「凱は……いや。お前は……」
涼弥が言い淀む。
何を言おうとしてるのかは定かじゃない。
でも。
今、いい機会じゃない?
涼弥の誤解を解くチャンス。
目の前にいる涼弥は、今来たばかりらしく。ジーンズにTシャツにシャツを羽織った格好で、俺以上に驚いてるように見えた。
「偶然……だな。お前とここで会うの、半年ぶりくらいか?」
普通に。普通にだ。
俺たちはジムで偶然会った幼馴染み。
親友っていうには、今はすれ違ってる感すごいけど。
「ああ。最近は夜に来てるんだが、今日は……仲間のひとりに頼まれた」
「効果的な筋トレのやり方教えてくれって?」
「まぁ、そんなところだ。お前はもう終わりか?」
「いや。ちょっと休憩にサウナ」
あらためて。涼弥が、タオル1枚を身に着けただけの俺に目を走らせる。
「俺も行く。そいつに言ってくるから、先に入っててくれ」
「え? 涼弥!」
呼び止めるより早く、涼弥はロッカールームの奥へと消えた。
来るの? サウナに?
ここ数日の避けられてる感は気のせいか?
わざわざ声かけてきたんだから、涼弥は別に普段通りだったのかも。うん。
ただ。
俺サイドだけの心理的問題かもしれないけどさ。一緒にサウナって……なんか落ち着かないというか、緊張しそうっていうか。
そう思いつつ。
とりあえず、サウナルームの中に入った。
このジムのサウナは、広くもなく狭くもなく。
12帖くらいかな? コの字型に板張りベンチが2段ずつ。無理なく入れるのは15、6人って感じ。
中にいるのは二人だけ。奥の下段に若い男がひとり。左手前の下段に初老の男がひとり。
右側の奥の上段に座り、ドアの上方の壁に設置されたTV画面をぼうっと眺めながら涼弥を待つ。
ここのサウナの音声なしのTV見てて、いつも思うんだけどさ。
音がないとつまんないんだよね、TVって。
しかも、日曜の午後の今の時間。映ってるのはゴルフ中継で。
興味がないものって、ほかに何も見るものなくても暇を潰せなくない?
一度本持って入ったら。汗で濡れた紙が高温でパリパリになったし、係員に注意された。発火したりの危険はなさそうだったけど、禁止らしい。
暇つぶしになるものなしのこの空間で、涼弥と。
間が持つのか?
何話せばいいんだ?
二人きりじゃないのが、せめてもの救いだな。
サウナルームで熱せられること3分。
ドアが開いて、涼弥が入ってきた。
「休憩って言ってたが、このあとまだトレーニングするのか?」
聞きながら、涼弥が俺の隣に腰を下ろす。
「うーん……サウナと風呂で時間潰しかな。沙羅が5時までやる気だからさ」
「最近は、おかしなの寄ってきてないか?」
幼馴染みの友人として、涼弥も沙羅を心配してる。
沙羅がここでストーカーもどきにつきまとわれた時、俺が話をつけてやるって意気込む涼弥を宥めるのは大変だったっけ。
「大丈夫。よく見れば俺たちが似てるのわかるだろうけど、パッと見彼氏に見えるから。一緒に来てれば問題なし」
「ならいいが……お前のほうは?」
「え……俺?」
「お前も江藤に目をつけられたらしいな」
やや険しい表情で、涼弥が俺を見る。
「火曜の集会のあと凱が江藤たちと揉めたって、上沢に聞いた」
「あーあれは、江藤と揉めたわけじゃなくて。周りが凱に……ちょっと過剰に反応しただけ」
そういえば。
あの日俺の家に向かってる時、凱に言われたな。
お前まで江藤に興味持たれるハメになっちゃってごめんね。これ以上巻き込まねぇようにするから……って。
巻き込まれたとは思ってないし、勝手にやれと放っておく気もない。
凱が江藤のとこに話しに行く時は、何かあったら救出する手筈を整えておくつもりだ。
御坂と鈴屋、あと紫道にも応援を頼んで……。
「行くなよ絶対に。江藤の寮の部屋には」
小声ながら、強い口調で言い放つ涼弥。
「凱も行かせるな。あの男は危険だ」
真剣な涼弥の瞳にたじろいで、視線を落とした……のがマズかった。
俺より色黒な、シャワーで濡れた裸の胸に腹。腰にはタオル……。
何度も目にしたことのある、鍛えられた筋肉質な涼弥の身体。
それが、今は……今の俺にとっては、動揺のモトになる。
いやいや!
決して。エロい目で見ちゃってるんじゃないよ?
たださ。
自分の気持ちしっかり自覚してから初の涼弥の裸だから、つい意識しちゃうのは当然だよね?
女の裸と違って、特に見どころがあるわけじゃないし。
プール行けば男はみんな海パン1枚だし。
ジムの風呂では真っ裸だし。
男の裸なんか見ても何とも思わない……けど。
ただ。でも。だって……。
涼弥がこんな近くで俺の目の前にいて……ほぼ裸で!
好きな人の裸って、破壊力あるよな。
ダメだ俺。
エロい目で見てんじゃん……いや。
やっぱ違う。
ドキドキ感はあるけど、エロい気分にはなってない。
ちょっと狼狽えただけ……。
「將梧? どうした? お前まさか、江藤のとこ行くつもりだったのか?」
「え……? あ、俺は行かないよ。大丈夫……」
いかん。
ボーっとしてた……って。
我に返って顔を上げると、涼弥の視線に射られてる俺。
そ……んなに見つめないでくれ……!
この半年。この前天文部のとこで接近したの抜かせば、ほとんど近くで見てないのに。
いきなりこの距離でガン見はキツい。
「だけど、凱は行く」
「止めろ。ヤツの噂、知ってるだろ?」
「その噂が本当かどうか、確かめるのに話したいって。俺だって行かせたくないけど、止めるのは無理だ。あいつ、レイプする人間、異様に敵視してるから」
「凱は……いや。お前は……」
涼弥が言い淀む。
何を言おうとしてるのかは定かじゃない。
でも。
今、いい機会じゃない?
涼弥の誤解を解くチャンス。
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