リアルBL!不安な俺の恋愛ハードルート

Kinon

文字の大きさ
33 / 246

13-4 形勢逆転から、また先生

しおりを挟む
 ヤバ……見つかる!

 そう思うより早く。
 こっちに振り向いた江藤が後ろによろめいて、うっと声を上げた。

 かいの姿が消えてる……んじゃない。床に倒れ込むように腰を落とすと同時に、思い切り腕を引いて手枷になっていたブレザーを脱いだらしい。
 そして、江藤に体勢を整える間を与えず。自分がされたのと同じようにヤツのブレザーを背中から剥がし腕を押さえた凱が、もぎ取ったナイフを目の前にかざし見る。

「江藤!」

 叫んで駆け寄ろうとした斉木が、凱と江藤の5メートルくらい手前で足を止めた。
 水本はドアの斜め前辺りで鈴屋を押さえたまま、凱を睨みつけてる。

「こんなの出したら危ねぇじゃん? こうやって形勢逆転されちゃうしさー」

「それで? どうするつもり?」

 立場が入れ替わる前と変わらないのん気さで話す凱に、まだ余裕の残る声で尋ねる江藤。

「別にー。あんたを殴ったり犯したりする気はねぇよ。何事もなくここから出たいだけ。腹減ったしねー」

「調子に乗んなこのガキが。どうせお前に刃物使う度胸はねぇだろ。こいつボコられたくなかったらじゅんを放せ」

 水本が凱を脅す。

「先に鈴屋放して、そっち二人がここから出たらね」

「ふざけんな!」

「俺は本気だぜ?」

 一瞬の間。

「うあぁぁぁ……!?」

 いきなりの江藤の叫び声。
 俺と涼弥からは、凱がナイフを持った手で江藤の顔を押さえ、目元に口をつけてるのが見える。
 だけど、位置的に。斉木と水本からは、凱の頭に隠れて江藤が何をされてるか見えないだろう。

「あぁっう、やめッ……!」

「やめろ!」
「何してんだこの野郎!」

 斉木と水本。二人分の足音に反応するように、凱が江藤から顔を離して反転した。右手のナイフは、投げるような持ち方で前にかまえている。

「ストップ!」

 凱の声に、二人が足を止める。ブレザーの枷をした両手を後ろで凱に掴まれたまま、江藤の身体がふらりと揺れた。

「大……丈夫だ。何ともない」

 江藤の弱々しい声を聞いて、水本が憤る。

「何しやがった!?」

「目玉舐めただけ。痛くもかゆくもしてねぇって。すぐ洗っとけば平気。こんなんでビビっちゃってかわいーね、この人」

 目玉? 眼球を舐めたのか……!?

「サンキュー、鈴屋」

 斉木と水本がこっちを向いてる間に、鈴屋はテーブルを回って凱のほうに足を進めていたらしく。残りの距離を素早く詰めて、凱の横に辿り着いた。

「んじゃ、早く出てって。こいつもすぐ行くからさ」

「あんまナメんじゃねぇぞ」

「お互いさまだろ。それにもうお開きにしたほうがいーよ。誰か来る」

「同じ手食うか、バカが」

 そう言って向かって来ようとする水本。掴んでいた江藤のブレザーを離す直前に、さっと手首の振りで閉じたナイフをヤツのズボンのポケットに滑り込ませる凱。
 そして、ドアの開く音と怒鳴り声。

「お前ら! 何やってる!」

 部屋にいるほかの全員が声の主に顔を向けてフリーズする中、凱が床から自分のブレザーを拾い上げる。
 声の主は昨日と同じ、現国の鷲尾だった。ドアの鍵を鈴屋が開けたのを、凱は見て知ってたのか。

「斉木。水本とここで何してるんだ?」

 部屋に入って来た鷲尾が、まず目に入った3年の二人に尋ねる。

「ちょっと話してただけっすよ」

 答える斉木のところまで来た鷲尾は、凱たち3人も認識する。

「またお前か、柏葉。それに鈴屋」

 凱と鈴屋から江藤に視線を移し、目を細める鷲尾。

「江藤。模範生が2年生連れ込んで何の話だ? このあと集会だろう。お前がこんなところで油売ってていいのか?」

「俺が鈴屋に告ってただけで、二人は応援。その2年は鈴屋の付き添い」

 言葉の出ない江藤の代わりに、ほぼ本当のことを言った斉木。
 鷲尾がそれをどう考えるか……想像に難くない。

「応援だ? ふん。断られたらレイプでもする助っ人か。水本、お前ノンケから宗旨替えしたのか?」

「何だと!?」

「先生」

 教師相手に凄む水本を制するかのように、鈴屋が口を開く。

「僕たちは何もされてませんから。今ちょうど出ようとしていたところです」

 鈴屋と凱に向き直った鷲尾が首を傾げる。

「柏葉? 異論はないか?」

「はい。え……と、斉木先輩と鈴屋くんの言う通りです。先輩方は僕たちに無体なことをするつもりはなかったと思います。鈴屋くんを心配した僕が一緒に来ることも、彼らは快く了承してくれましたし。話が終わって出るところだったのも事実です」

 言葉遣いに加えて顔つきまで変わってる凱に、みんな唖然としてる。
 このイイコちゃん演技を見るのは2度目の俺は、笑みを浮かべたけど。

「嘘くせぇな」

「本当です。僕はまだこの学園に慣れていないので、都合のいい嘘などつけません」

「まぁそういうことにしておいてやる。ほら、全員ここから出ろ」

 鷲尾が後ろを向くと、斉木と水本はすでに無言でドアへと歩き出してた。鈴屋、凱、そして江藤とあとに続く。
 鷲尾が床に倒れたイスを起こすのに屈んだ時、振り返った凱がまっすぐに窓の端……俺と涼弥を見てニヤリとした。



 俺たちがいるの知ってんじゃん……!

 ハッタリじゃなかったんだな。名前を出さなかったのは、巻き込まずに済むならそのほうがいいと思ったからか?



 こんな状況でもよく頭の回る凱のおかげで、みんなが事なきを得た昼下がり。
 安堵感に息をついて張ってた気を緩める俺。

 とりあえずやれやれ、だな。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

男の娘と暮らす

守 秀斗
BL
ある日、会社から帰ると男の娘がアパートの前に寝てた。そして、そのまま、一緒に暮らすことになってしまう。でも、俺はその趣味はないし、あっても関係ないんだよなあ。

眼鏡オタクが脱オタ目指してアイドルキャラを演じていたら忠実な下僕が出来ました?

篠崎笙
BL
高校まで地味で眼鏡なオタクと呼ばれてモテず、大学生デビューと称して脱オタを目指し無理してアイドルキャラを演じていたトワだったが、トワのファンを名乗る一見もさいが実は美形な男が現れ、身の回りの物を貢ぎ、奉仕しようとする。初めは遠慮していたが、だんだん慣れていき、夜の奉仕まで受け入れてしまう。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

学園の卒業パーティーで卒業生全員の筆下ろしを終わらせるまで帰れない保険医

ミクリ21
BL
学園の卒業パーティーで、卒業生達の筆下ろしをすることになった保険医の話。 筆下ろしが終わるまで、保険医は帰れません。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

うちの前に落ちてたかわいい男の子を拾ってみました。 【完結】

まつも☆きらら
BL
ある日、弟の海斗とマンションの前にダンボールに入れられ放置されていた傷だらけの美少年『瑞希』を拾った優斗。『1ヵ月だけ置いて』と言われ一緒に暮らし始めるが、どこか危うい雰囲気を漂わせた瑞希に翻弄される海斗と優斗。自分のことは何も聞かないでと言われるが、瑞希のことが気になって仕方ない2人は休みの日に瑞希の後を尾けることに。そこで見たのは、中年の男から金を受け取る瑞希の姿だった・・・・。

処理中です...