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7-2 偽装彼氏になったワケ
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もうひとつ。
深音のオファーを引き受けた俺側のメリットとしての理由がある。
蒼隼学園の中等部に入学して程なく。
新入生たちが先輩方から延々と受け継がれてきた同性愛が自然な校風に染められていく中、俺はその環境にうまく馴染めずにいた。
男しかいないんだから男でいいじゃん! と。
事実を受け入れ妥協してか。自ら洗脳されてか、本来の性指向か。
早々に、隣クラスの誰々を抱きたいだの、3年の誰々に抱かれたいだのとホモ街道を進んでいく周りのヤツら。
対して。
外に出れば女はいるし、セックスにペニスは1本で十分だし。そもそも男相手に勃たないし、と。
本来なら多数を占めるはずがここでは少数派になる、女にしか欲情しないヤツらもいる。
そして、俺はというと。
男女どっちにも性的な興味を持てなかった。全然じゃないけど、ほとんどね。
原因はたぶんコレ。
寮に入って最初の連休に家に帰った時、衝撃の出会いをしちゃったんだな……薄い本に。開けちゃったの。腐の世界への扉を。紗羅のお導きで。
男同士の恋愛。男同士のセックスを読んで妄想して楽しむBLワールドにハマった俺は、当然思ったよ。
あー俺、ゲイ素質アリかーって。
なのに。
BLの中での男同士の絡みには萌えるのに、3次元の男子には萌えないの。
全くの別物、なんだよね。
あの世界はファンタジー。あの中の攻めも受けも男であって男ではない、架空の生物。
そう割り切って、思い直した。
あー俺、腐男子だけどゲイじゃないんだなーって。
なのに。
女にも惹かれないのはどうしてか。
Gカップで際どい水着で妖艶に笑うグラビアアイドルはもちろん、ノンケを貫くクラスメイトの間で回されるAVで女の裸や痴態を見ても。
この頃知り合った深音の至近距離のパンチラにも。
ムラムラしないしペニスは無反応。
俺……どっかおかしいんじゃないのって思った。
そんなこんなで4年間。
ヘタに誘われないようにノンケを装い、襲われても何とか切り抜けること数回。
自分の性指向は不明のまま、セックスどころかキスの経験すらなく高1を終え……る間際。
背もそこそこ伸びて身体も鍛え、委員長仮面も板についてきて。高等部に入ってから襲われることのなかった俺は、油断してたんだろうな。
これ以上ギリギリはないくらい間一髪のところ。レイプされる寸前で助け出される事態にまで陥った。
その時に、まぁ……考えることがいろいろあって。
特に、自分がゲイかどうかを切実に知りたいと思った。
それが理由。
恋人役を頼まれたのは、この件の半月後だったから。
深音の想い人の提案は一理ある。
俺は男だから、要点はこう。
女を知らないまま男が好きっていうのは、思い込みかもしれない。女を知った上で男のほうがいいって確信出来るか。
だから思った。
深音が俺とつき合って男を試すように、俺も女を試してみようって。
もちろん、そんな目的で女とつき合うのはよくないっていうか間違ってる。
だけど、俺たちの場合は合ってる。
深音が実験したいことを、俺もしたいんだからな。
実際にセックスまでいかなくても、友達同士ではやらないスキンシップに嫌悪感を抱くか否かを知るだけでもいいし。
深音がレズを隠すカモフラージュになるし、俺が今とりあえず演じてる暫定ノンケの証明にもなるしね。
こんな経緯で、俺と深音の偽装交際はスタートした。
以後半年の間。4人で集まる腐会のほかに、月2、3回のペースで俺たちは二人で会ってる。たいていは金曜の放課後か土曜か日曜。
傍から見ればデート。内実は、ノンケが同性の友達と遊ぶのと変わらない。くだらないこと喋ったり悩み相談したり愚痴ったり。
世の中のカップルが、全て恋愛感情で一緒にいるとは限らないよな。
深音のオファーを引き受けた俺側のメリットとしての理由がある。
蒼隼学園の中等部に入学して程なく。
新入生たちが先輩方から延々と受け継がれてきた同性愛が自然な校風に染められていく中、俺はその環境にうまく馴染めずにいた。
男しかいないんだから男でいいじゃん! と。
事実を受け入れ妥協してか。自ら洗脳されてか、本来の性指向か。
早々に、隣クラスの誰々を抱きたいだの、3年の誰々に抱かれたいだのとホモ街道を進んでいく周りのヤツら。
対して。
外に出れば女はいるし、セックスにペニスは1本で十分だし。そもそも男相手に勃たないし、と。
本来なら多数を占めるはずがここでは少数派になる、女にしか欲情しないヤツらもいる。
そして、俺はというと。
男女どっちにも性的な興味を持てなかった。全然じゃないけど、ほとんどね。
原因はたぶんコレ。
寮に入って最初の連休に家に帰った時、衝撃の出会いをしちゃったんだな……薄い本に。開けちゃったの。腐の世界への扉を。紗羅のお導きで。
男同士の恋愛。男同士のセックスを読んで妄想して楽しむBLワールドにハマった俺は、当然思ったよ。
あー俺、ゲイ素質アリかーって。
なのに。
BLの中での男同士の絡みには萌えるのに、3次元の男子には萌えないの。
全くの別物、なんだよね。
あの世界はファンタジー。あの中の攻めも受けも男であって男ではない、架空の生物。
そう割り切って、思い直した。
あー俺、腐男子だけどゲイじゃないんだなーって。
なのに。
女にも惹かれないのはどうしてか。
Gカップで際どい水着で妖艶に笑うグラビアアイドルはもちろん、ノンケを貫くクラスメイトの間で回されるAVで女の裸や痴態を見ても。
この頃知り合った深音の至近距離のパンチラにも。
ムラムラしないしペニスは無反応。
俺……どっかおかしいんじゃないのって思った。
そんなこんなで4年間。
ヘタに誘われないようにノンケを装い、襲われても何とか切り抜けること数回。
自分の性指向は不明のまま、セックスどころかキスの経験すらなく高1を終え……る間際。
背もそこそこ伸びて身体も鍛え、委員長仮面も板についてきて。高等部に入ってから襲われることのなかった俺は、油断してたんだろうな。
これ以上ギリギリはないくらい間一髪のところ。レイプされる寸前で助け出される事態にまで陥った。
その時に、まぁ……考えることがいろいろあって。
特に、自分がゲイかどうかを切実に知りたいと思った。
それが理由。
恋人役を頼まれたのは、この件の半月後だったから。
深音の想い人の提案は一理ある。
俺は男だから、要点はこう。
女を知らないまま男が好きっていうのは、思い込みかもしれない。女を知った上で男のほうがいいって確信出来るか。
だから思った。
深音が俺とつき合って男を試すように、俺も女を試してみようって。
もちろん、そんな目的で女とつき合うのはよくないっていうか間違ってる。
だけど、俺たちの場合は合ってる。
深音が実験したいことを、俺もしたいんだからな。
実際にセックスまでいかなくても、友達同士ではやらないスキンシップに嫌悪感を抱くか否かを知るだけでもいいし。
深音がレズを隠すカモフラージュになるし、俺が今とりあえず演じてる暫定ノンケの証明にもなるしね。
こんな経緯で、俺と深音の偽装交際はスタートした。
以後半年の間。4人で集まる腐会のほかに、月2、3回のペースで俺たちは二人で会ってる。たいていは金曜の放課後か土曜か日曜。
傍から見ればデート。内実は、ノンケが同性の友達と遊ぶのと変わらない。くだらないこと喋ったり悩み相談したり愚痴ったり。
世の中のカップルが、全て恋愛感情で一緒にいるとは限らないよな。
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