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第12章 祈り
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しばらくの間、まるでキノの心の砦を攻めあぐねているかのように黙って部屋の中を歩き回っていた涼醒は、その足を止め溜息をついた。
「浩司の話がショックだったのはわかるさ。祈りも…継承者のこともな」
キノは頑ななまでに未だ動かず喋らず、浩司のいなくなった宙をぼんやりと見つめ続けている。そのすぐ横に腰を下ろし、涼醒が再度深い息を吐く。
「だけど、ただそうしてたって何にもならないだろ? 浩司の祈りをどう思うのか、あいつにちゃんと伝えないままでいいのか? あの祈りを納得出来ないなら、変えたいと思うなら…おまえに出来るかぎりのことをしておかなけりゃ、後でひどく後悔するんじゃないのか? 浩司が戻って来たら、思ってることを話せよ。その前に今は…」
覗き込むように首を傾け、涼醒はキノの肩にそっと手を置いた。
「悲しいなら悲しいって言え。リシールやラシャなんか知らなけりゃよかったって思うなら、恨み言のひとつでも言えばいい」
キノの横顔は変わらない。
「希音…俺がどうしてここにいると思ってる? 聞こえてるなら、こっちを向いてくれ」
その言葉に応えるように、キノが視線を動かした。けれども、涼醒にではなく、自分の手元へと。まるでそこにあるものを見たくないかのように、それが何か知るのを恐れるかのように、閉じられた指を一本ずつほぐしていく。
キノの手の平の上で、四角い飾りのついた細い銀色の鎖が輝いた。
食い入るようにそれを見つめながら、キノはいや増す静かな嘆きを溜息とともに飲み込んだ。今にも壊れそうなガラス細工を扱うように華奢なネックレスをベッドサイドの棚に置き、閉じた目で天井を仰ぐ。
「希音…」
涼醒が指先の力を強める。
ゆっくりと涼醒に顔を向けたキノの目に、新たな涙はない。ただその跡だけが、熱を持った瞼と乾いた頬に残るのみ。
「今はひとりでいたいなら、俺は隣に行く。だけど、忘れないでくれ。俺は…いつでも望む時にそばにいたいと思ってる。おまえをひとりで泣かせたくないんだ」
涼醒の指の下で、キノの身体が震えた。
「頼むから…何か言ってくれよ」
焦点を定めたキノの強く切ない眼差しが、言葉を成さない思いを訴えるように涼醒を射る。見つめ合う二人の瞳を近づけたのは、キノの方だった。
涼醒の唇に自分のそれを押しあて、キノは一度だけまばたいた。しっかりと開いたその目に触れそうなほど近く、見開いた涼醒の瞳がとまどいの色を深める。
「涼醒…」
唇をわずかに離し、キノが囁いた。ようやく声を取り戻したキノの口からは、涼醒の予測だにせぬ言葉が続く。
「抱いてくれる…?」
真剣なキノの瞳から目を逸らさずに、涼醒は頭を上げた。
「何言って…どうかしちまったのか?」
「身体から心が抜け出していきそうで…自分がここにいるって実感したいの。少しの間だけ忘れさせて。涼醒なら…」
キノは涼醒の腕をつかみ、強く引いた。再び距離を縮めた二人の目が閉じられる。キノの指が涼醒の頬を撫で、彼の手は彼女の首へと回される。
倒れ込んだベッドの軋む音に、涼醒は反射的に目を開けた。その視界に捉えた一筋の光の正体を知り、激しさを増していたキスを止める。
「涼醒…?」
キノは薄く目を開けた。自分を見下ろす涼醒の瞳を見つめる。
「やめないで続けて…」
一瞬のためらいに目を閉じた後、涼醒は微かに首を振り、押さえつけていたキノの腕を離した。その手で、キノのこめかみに残る涙を拭い取る。
「今寝たら、きっと…後で自分が嫌になる。たぶん、俺よりもおまえの方が…」
涼醒の言葉に、キノが目を伏せる。
「もし、おまえがただ単にセックスしたいって言うんなら…好きなだけやってやるさ。まぎらわすのが寂しさだけなら、たとえお互いに何とも思ってなくてもな」
上体を起こしベッドの縁に座り直した涼醒は、俯き深い息を吐く。
「でも…違うだろ? 今の俺は、今のおまえとは…出来ない」
絞り出すようにつぶやいた涼醒の声の後に、熱い涙の融ける沈黙が続く。
キノはゆっくりとベッドから降りると、軽やかな夜風の吹き込む窓へと向かった。すっかり陽を失った空と森を眺めながら、服の乱れを整える。
「涼醒…ごめんね」
キノが静かに言った。顔を上げた涼醒を見つめるその表情に、張り詰めた危うさはもうない。
「もう少し、ここにいてくれる?」
「…いるよ」
短く答えた涼醒の視線がキノを追う。
上着を羽織り、ベッドサイドのネックレスをポケットにしまい、テーブルの上のバッグをつかむと、キノは涼醒の前で足を止めた。
「涼醒が持ってて。浩司との約束…守れないと困るから」
困惑してキノを見上げる涼醒の手が受け取ったのは、黒い小さな石だった。
「希音…?」
「私、大丈夫よ。ありがとう…涼醒がいてくれなかったら、きっとダメだった。護りも、私も…本当に」
キノは微笑んだ。少なくとも、出来るかぎりそうする努力をした。
「だけど、今は…追って来ないで。お願い」
「希音、おまえ…」
呻きにも似た涼醒のつぶやきと眼差しをすり抜け、キノはドアの向こう側へと姿を消した。
ぎこちない微笑みに透ける憂いの陰りと、その淵に沈む瞳の残像、そして、力の護りを後に残して。
部屋に戻った浩司は、ひとりうなだれる涼醒を見つけた。
「どうしてだ?」
何故キノがここにいないのかのあらましを聞きそう尋ねる浩司に、涼醒は視線を向けずに問い返す。
「あんたならやれるのか? ほかの男のことで泣く女と?」
「それで楽にしてやれるならな。ただし、俺にとって…キノは別だ」
「俺にだってそうさ」
涼醒が浩司を見る。
「あんたとその意味は違うけど…」
互いの持つその意味をそれぞれの瞳の奥に窺いながら、二人は自らの心をも見据えていたのだろうか。溜息をついた浩司が、何かを追い払うように頭を振った。
「俺やおまえは、愛なんかなくても誰が相手でも抱き合えるだろう。何かをまぎらわせられるような気がしてな。だが…キノは違う。そばにいたのがほかの男でも、同じことを言ったと思うか?」
一瞬なくした涼醒の表情が険しくなる。
「希音を探さなけりゃ…」
「たぶん、希由香のところだろう」
つぶやくようにそう言うと、浩司は涼醒の肩を軽く叩いた。
「俺も行こう。キノに…言い忘れたことがある。納得してもらう理由になるとは思えないがな」
行き交うリシールたちの視線が浩司を追う理由を、涼醒は尋ねなかった。彼らのその目から察するに、浩司に対しては、嫌悪でも親愛でもない表現し難い感情があるらしい。
あえて言うならば、敬意と畏怖の入り混じったものだろうか。
ヴァイのリシールたちを、ジャルドはどう納得させたのか。彼らにとって、浩司はどんな役割を果たす者として迎え入れられたのか。多少の関心はあっても、今の涼醒にそれらに割いている心の余裕はない。
「浩司…発動者の記憶を消すのは…本当は一番の望みじゃないだろ?」
階段を下りながら、答えを期待しない口調で涼醒が言った。
「希音は、どこかでそれをわかってる。だから…」
言葉を濁す涼醒を見据え、浩司が静かな声で尋ねる。
「涼醒…おまえだったらどうした? 俺の選択は間違ってると思うか?」
「…あんたがそれを俺に聞くのか? 俺が何て答えるか知ってて?」
問いだけを重ねる二人が欲するのは、それに対する明確な答えではない。ただ何かを確かめるために、そこに辿り着くための道標を探していた。
「おまえなら、逃げるような真似はしないだろう。悲しませる前に、幸せに出来るだろうからな」
客間の灯りをつけ、浩司が微かな笑みを浮かべる。
「何でそう思うんだよ?」
続き部屋へと真直ぐに向かい、浩司と涼醒はドアの前で立ち止まった。
「キノは、おまえといると安心する、ずっと安心させてくれたと言っていた。俺は、希由香に不安ばかり与えていた。心はろくに見せずに…あいつの真剣な瞳をいつも避けてたしな」
涼醒が眉を寄せる。
「呪いのせいで、仕方なかったんだろ? それがなけりゃ…」
「俺のことはもういい。それより、おまえがキノに惹かれてるだけじゃなく、キノにとってもおまえは特別な存在だと自覚しろ。この先もそばにいるつもりならな」
話を打ち切るように、浩司がノブへと手を伸ばす。
灯りのついたままのこの部屋に、キノの姿はなかった。けれども、あの後キノがここへ来たことに間違いはない。
自分の運命の行く先を知らず、あるいは信じ、動かぬ時の中で眠る希由香。その冷たい胸元で儚気な光を放つのは、浩司の外した銀色のネックレスだった。
「浩司の話がショックだったのはわかるさ。祈りも…継承者のこともな」
キノは頑ななまでに未だ動かず喋らず、浩司のいなくなった宙をぼんやりと見つめ続けている。そのすぐ横に腰を下ろし、涼醒が再度深い息を吐く。
「だけど、ただそうしてたって何にもならないだろ? 浩司の祈りをどう思うのか、あいつにちゃんと伝えないままでいいのか? あの祈りを納得出来ないなら、変えたいと思うなら…おまえに出来るかぎりのことをしておかなけりゃ、後でひどく後悔するんじゃないのか? 浩司が戻って来たら、思ってることを話せよ。その前に今は…」
覗き込むように首を傾け、涼醒はキノの肩にそっと手を置いた。
「悲しいなら悲しいって言え。リシールやラシャなんか知らなけりゃよかったって思うなら、恨み言のひとつでも言えばいい」
キノの横顔は変わらない。
「希音…俺がどうしてここにいると思ってる? 聞こえてるなら、こっちを向いてくれ」
その言葉に応えるように、キノが視線を動かした。けれども、涼醒にではなく、自分の手元へと。まるでそこにあるものを見たくないかのように、それが何か知るのを恐れるかのように、閉じられた指を一本ずつほぐしていく。
キノの手の平の上で、四角い飾りのついた細い銀色の鎖が輝いた。
食い入るようにそれを見つめながら、キノはいや増す静かな嘆きを溜息とともに飲み込んだ。今にも壊れそうなガラス細工を扱うように華奢なネックレスをベッドサイドの棚に置き、閉じた目で天井を仰ぐ。
「希音…」
涼醒が指先の力を強める。
ゆっくりと涼醒に顔を向けたキノの目に、新たな涙はない。ただその跡だけが、熱を持った瞼と乾いた頬に残るのみ。
「今はひとりでいたいなら、俺は隣に行く。だけど、忘れないでくれ。俺は…いつでも望む時にそばにいたいと思ってる。おまえをひとりで泣かせたくないんだ」
涼醒の指の下で、キノの身体が震えた。
「頼むから…何か言ってくれよ」
焦点を定めたキノの強く切ない眼差しが、言葉を成さない思いを訴えるように涼醒を射る。見つめ合う二人の瞳を近づけたのは、キノの方だった。
涼醒の唇に自分のそれを押しあて、キノは一度だけまばたいた。しっかりと開いたその目に触れそうなほど近く、見開いた涼醒の瞳がとまどいの色を深める。
「涼醒…」
唇をわずかに離し、キノが囁いた。ようやく声を取り戻したキノの口からは、涼醒の予測だにせぬ言葉が続く。
「抱いてくれる…?」
真剣なキノの瞳から目を逸らさずに、涼醒は頭を上げた。
「何言って…どうかしちまったのか?」
「身体から心が抜け出していきそうで…自分がここにいるって実感したいの。少しの間だけ忘れさせて。涼醒なら…」
キノは涼醒の腕をつかみ、強く引いた。再び距離を縮めた二人の目が閉じられる。キノの指が涼醒の頬を撫で、彼の手は彼女の首へと回される。
倒れ込んだベッドの軋む音に、涼醒は反射的に目を開けた。その視界に捉えた一筋の光の正体を知り、激しさを増していたキスを止める。
「涼醒…?」
キノは薄く目を開けた。自分を見下ろす涼醒の瞳を見つめる。
「やめないで続けて…」
一瞬のためらいに目を閉じた後、涼醒は微かに首を振り、押さえつけていたキノの腕を離した。その手で、キノのこめかみに残る涙を拭い取る。
「今寝たら、きっと…後で自分が嫌になる。たぶん、俺よりもおまえの方が…」
涼醒の言葉に、キノが目を伏せる。
「もし、おまえがただ単にセックスしたいって言うんなら…好きなだけやってやるさ。まぎらわすのが寂しさだけなら、たとえお互いに何とも思ってなくてもな」
上体を起こしベッドの縁に座り直した涼醒は、俯き深い息を吐く。
「でも…違うだろ? 今の俺は、今のおまえとは…出来ない」
絞り出すようにつぶやいた涼醒の声の後に、熱い涙の融ける沈黙が続く。
キノはゆっくりとベッドから降りると、軽やかな夜風の吹き込む窓へと向かった。すっかり陽を失った空と森を眺めながら、服の乱れを整える。
「涼醒…ごめんね」
キノが静かに言った。顔を上げた涼醒を見つめるその表情に、張り詰めた危うさはもうない。
「もう少し、ここにいてくれる?」
「…いるよ」
短く答えた涼醒の視線がキノを追う。
上着を羽織り、ベッドサイドのネックレスをポケットにしまい、テーブルの上のバッグをつかむと、キノは涼醒の前で足を止めた。
「涼醒が持ってて。浩司との約束…守れないと困るから」
困惑してキノを見上げる涼醒の手が受け取ったのは、黒い小さな石だった。
「希音…?」
「私、大丈夫よ。ありがとう…涼醒がいてくれなかったら、きっとダメだった。護りも、私も…本当に」
キノは微笑んだ。少なくとも、出来るかぎりそうする努力をした。
「だけど、今は…追って来ないで。お願い」
「希音、おまえ…」
呻きにも似た涼醒のつぶやきと眼差しをすり抜け、キノはドアの向こう側へと姿を消した。
ぎこちない微笑みに透ける憂いの陰りと、その淵に沈む瞳の残像、そして、力の護りを後に残して。
部屋に戻った浩司は、ひとりうなだれる涼醒を見つけた。
「どうしてだ?」
何故キノがここにいないのかのあらましを聞きそう尋ねる浩司に、涼醒は視線を向けずに問い返す。
「あんたならやれるのか? ほかの男のことで泣く女と?」
「それで楽にしてやれるならな。ただし、俺にとって…キノは別だ」
「俺にだってそうさ」
涼醒が浩司を見る。
「あんたとその意味は違うけど…」
互いの持つその意味をそれぞれの瞳の奥に窺いながら、二人は自らの心をも見据えていたのだろうか。溜息をついた浩司が、何かを追い払うように頭を振った。
「俺やおまえは、愛なんかなくても誰が相手でも抱き合えるだろう。何かをまぎらわせられるような気がしてな。だが…キノは違う。そばにいたのがほかの男でも、同じことを言ったと思うか?」
一瞬なくした涼醒の表情が険しくなる。
「希音を探さなけりゃ…」
「たぶん、希由香のところだろう」
つぶやくようにそう言うと、浩司は涼醒の肩を軽く叩いた。
「俺も行こう。キノに…言い忘れたことがある。納得してもらう理由になるとは思えないがな」
行き交うリシールたちの視線が浩司を追う理由を、涼醒は尋ねなかった。彼らのその目から察するに、浩司に対しては、嫌悪でも親愛でもない表現し難い感情があるらしい。
あえて言うならば、敬意と畏怖の入り混じったものだろうか。
ヴァイのリシールたちを、ジャルドはどう納得させたのか。彼らにとって、浩司はどんな役割を果たす者として迎え入れられたのか。多少の関心はあっても、今の涼醒にそれらに割いている心の余裕はない。
「浩司…発動者の記憶を消すのは…本当は一番の望みじゃないだろ?」
階段を下りながら、答えを期待しない口調で涼醒が言った。
「希音は、どこかでそれをわかってる。だから…」
言葉を濁す涼醒を見据え、浩司が静かな声で尋ねる。
「涼醒…おまえだったらどうした? 俺の選択は間違ってると思うか?」
「…あんたがそれを俺に聞くのか? 俺が何て答えるか知ってて?」
問いだけを重ねる二人が欲するのは、それに対する明確な答えではない。ただ何かを確かめるために、そこに辿り着くための道標を探していた。
「おまえなら、逃げるような真似はしないだろう。悲しませる前に、幸せに出来るだろうからな」
客間の灯りをつけ、浩司が微かな笑みを浮かべる。
「何でそう思うんだよ?」
続き部屋へと真直ぐに向かい、浩司と涼醒はドアの前で立ち止まった。
「キノは、おまえといると安心する、ずっと安心させてくれたと言っていた。俺は、希由香に不安ばかり与えていた。心はろくに見せずに…あいつの真剣な瞳をいつも避けてたしな」
涼醒が眉を寄せる。
「呪いのせいで、仕方なかったんだろ? それがなけりゃ…」
「俺のことはもういい。それより、おまえがキノに惹かれてるだけじゃなく、キノにとってもおまえは特別な存在だと自覚しろ。この先もそばにいるつもりならな」
話を打ち切るように、浩司がノブへと手を伸ばす。
灯りのついたままのこの部屋に、キノの姿はなかった。けれども、あの後キノがここへ来たことに間違いはない。
自分の運命の行く先を知らず、あるいは信じ、動かぬ時の中で眠る希由香。その冷たい胸元で儚気な光を放つのは、浩司の外した銀色のネックレスだった。
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