2 / 83
第1章 運命の始まりの夢
夢の中の男 ①
しおりを挟む
☆☆☆
「それをこちらに渡しなさい」
低く静かな、けれども、少し緊張した声がそう言った。
「これは私たちの手にあるよりも、今ここに存在しないほうがいいでしょう」
別の声が答える。息を切らしながらも落ち着いた、なぜか心に響く声。
「この決定に異を唱えはしても、互いに納得したのではなかったか。いったいどうしようというのだ。それを破壊することはできない。行き場があると思うか? ラシャから降りる道は、0時にならなければ開けない」
冷たいコンクリートの床を石で打つような音がゆっくりと近づく。
そして、沈黙。
張りつめた空気の中、音のない溜息が聞こえた気がした。
「充分にわかっております」
その言葉に息を飲む小さな音。重なる衣擦れの音。
「まさか、おまえ…」
「…どうかお許しを!」
「よせ! カイラ…!」
二つの叫びが木霊し、次の瞬間、何かが水面に直撃したような衝撃音が鳴り響き、キノは飛び起きた。
☆☆☆
★★★
夢? 今のは何? まだドキドキしてる。何か恐いものを見たみたい…あれ? 私、何か見たっけ? 音は聞こえたけど…息を吐いたら破れそうな空気に、二人の男が話してて…それから、叫び声と、あれは…何かが水にぶつかる音…?
キノは現実に戻りきらない頭で考える。起き上がった拍子に開いたまぶたが再び視界を遮ろうとし、パッと開かれる。
何か…変。
目覚める前にキノが眠りについたのは、遮光カーテンのおかげで昼間でも薄暗い自分の部屋のいつものベッド。けれども、スモールライトの灯りでオレンジがかった薄闇に見えるはずの見慣れた光景が、そこにはなかった。
キノの目に映っていたのは、淡いブルーのカーテンをくぐり抜けて届く太陽の光で薄明るい室内。見たことのないテーブルにソファーに壁時計。フローリングの床ではなく、馴染みのない畳に襖まで見える。
すっかり焦点の定まった視線を落とすと、キノが今再びもぐり込もうとしていたあたたかい布団さえも見慣れないもの。そして、そこには見知らぬ男が、心地良さそうな寝息をたてていた。
キノが酔って記憶をなくすことはない。数時間前の過去を思い出すのに苦労したりもしない。けれども、ここが今までに来たことのない部屋で、彼が会ったことのない男なのは確かだった。
キノは初めて目にする男の寝顔を、静かに見つめる。頭の中は混乱しているが、その表情にも動作にも、全く動揺は見えない。
何が…どうなってるの? ここはどこ? この男は誰? これも…夢? だってこんなことありえない…ああ、もう! 何が何だかわからない。でも…。
キノはそっと男の頬に指をあてた。あごから首筋へと優しくなぞる。無意識の、かつて何度も繰り返されたことがあるかのように、自然な動作だった。
だからなのか、男の胸にゆっくりと頭をあずけて行く自分に、キノは驚きもとまどいもしなかった。
眠りから戻らぬままの男の腕がキノの重みを感じ取り、その肩を抱く。キノは規則正しく鼓動を刻む胸に顔を埋め、目を閉じ深く息を吸った。
ああ…ここが好き。この腕の中だけが安心出来るところ…どうして? 何でそう感じるの? 私、この男がひどく愛しい。恋しくてたまらない。私のどこか、頭じゃなくて心よりもっと奥の方が…そう思ってる。ここにいるのは私なの? 何か…おかしな感じ…五感は確かに感じるのに、身体は私の意志とは別の何かが動かしてるみたいな…本当に夢なの? だって私、この感触を知ってる。この体温を知ってる。もう…どっちでもいい。ずっとこうしていられるなら…。
キノがそう思い始めるのを待っていたかのように、男の腕が力を取り戻した。
薄く開けたキノの目に、ふとあるものが留まる。男の手がキノの髪を撫でている。あたたかくて優しいその指が絡め取った、明るい栗色の髪。
キノが顔を上げるのと同時に男が言った。
「希由…?」
★★★
キノの目の前には男がいるはずだった。寝顔しか知らない男の瞳があるはずだった。あの刹那、わからないことをわからないままでかまわぬほど愛しく思った男が。
その代わりにキノが見たものは、見慣れた背表紙が並ぶ本棚。いつもの四角い独りの空間。
しばらくの間、キノはまばたきひとつすることが出来なかった。夢から現実に戻る時間が、普段より多く必要だった。固く目をつぶって深呼吸し、ゆっくりとまぶたを開く。
間違いなく自分の部屋。キノは頬に手をあてる。そこに残る男のぬくもりを探すかのように。
夢…か、やっぱり。でも、ものすごくリアルな…あの安心感と、愛しい気持ち…今まで、誰にも感じたことないかも…。
キノは身体を起こすと、本棚の上段に手を伸ばす。まだ鳴っていない目覚まし時計を枕もとに移動し、再び横になる。
朝目覚めてからのこの空白の時間が、キノは好きだった。起きなくてはならない時刻よりも少し早めにかけるアラームの音で目覚めた後、眠りの余韻に浸る無為な数分間。意識を保ったまま無意識の眠りを楽しむような、心を無に漂わせるような感覚。実際に眠ってしまって遅刻しないためのアラームをかけてまでも、キノは一度のベルで潔く起き出すことが出来ない。
30分も早く目が覚めるなんて、あの夢のせい? もっと見てたかったな…何かすごく気になる。あれはいったい誰?って…ただの夢なのに。あの男も、あの私も…。
キノは閉じた目の奥に、鮮明に残る夢の情景を浮かべる。
夢から醒めたらあの部屋にいて、それも夢だったわけだけど…不思議。いつもは夢なんてすぐ忘れちゃうのに、今朝のはまだはっきりと憶えてる。最初の夢の叫び声が、耳に残ってる。それに…あの男、あのぬくもり…すごく愛しかった。あれは私の気持ち? 夢の中の私が、夢の中の男をあんなに愛してるの? あの腕の中、ずっといたかったな…。
胸の奥が熱くなるのと同時に、額の奥にしびれに似た痛みを感じ、キノは手の平を押しあて頭を擦った。ショートボブの髪をぼんやりと指で梳きながら、夢の中で最後に目にした光景を思い出す。
男の長く繊細な指先に絡む彼女の髪。そして、彼女を呼ぶ彼の声。
髪が長かった。確か『キユ』って…。
キノは心地良いまどろみの中、記憶を反芻し続ける。現実と幻との境を彷徨う。
なぜこんなにも気になるのか。それを知る手がかりを見つけられぬまま、キノの思考は夢から離れることが出来なかった。所詮夢だと頭ではわかっていても、その夢の何かが、キノの心をとらえて放さない。
動き始めた運命の端、いつもの部屋でいつもの時間、いつもの音でアラームが鳴り響き、止んだ。
職場の近くにある人気のイタリアンレストランで、キノは遅めの昼食をとっていた。正午には満席だった店内も、午後3時を過ぎた今では空席の方が目立つ。
「で、いい男だったの?」
キノの夢の話を聞いていた美紅が言う。美紅はキノと同じデパートの中に入っている店舗の店員で、3年前に二人が入社して以来の友人だった。
冷たいグラスに付いた小さな水滴を、キノの指が優しく繋いで行く。
「私にとってはね。美紅の好きなワイルド系じゃなかった。何か繊細な顔立ちで」
「それは残念。でもキノの好みってわかんないからな。統一性がないっていうか」
「好みの顔ってないの。その時好きな人が好みでしょ? それに…夢の人は、寝顔しか見てないし」
「起きたって、顔は同じよ」
「瞳で変わるもん。あともうちょっとだったのにな」
キノが悔し気にそう言って煙草に火をつけると、美紅は声を上げて笑った。キノが険しい視線を美紅に向ける。
「大丈夫、わかってるよ。夢は夢。現実にはいない男に本気になったりしないから。あぶない友達にはならない」
その瞳が笑い、そして、急に真剣なものへと変わる。
「でもね、普通の夢と何か違うの。うまく言えないけど…また会える気がする」
「…夢の中で?」
キノは答えずに、煙草の先から立ちのぼる細い煙が目の前で分解していくのを、ただぼんやりと見続けていた。
その夜、浴槽に浅く揺れる湯の中で、キノは物思いにふけっていた。
シャワーで済ますこともたまにあるが、湯舟にゆっくりつかって汗を流す方がキノは好きだった。久しぶりに灯したアロマキャンドルの甘い香りと静寂に包まれ、白い水面に反射するロウソクの灯りを眺めていると、なんとなく儀式めいた気分になってくる。
キノは目を閉じた。見つめていた小さな炎の残像が瞼の裏に見える。
夢はどこが見るんだろう。脳? 心? それとも…別のところ?
キノは鼓動が速まっていくのを感じる。湯に熱せられたせいだけでなく、夢を思い昂った感情が胸を熱くする。
あの夢、眠ったら忘れちゃうかな。でも、また見れるような気がする…。
ドキドキする心と身体を落ち着かせるように、殊更ゆっくりと頭から爪先まで洗い、顔を洗う。ほてった肌に冷水が心地良い。
キノは風呂からあがると、手帳を開きペンを走らせた。
『あの人に、また会いたい』
ベッドに入ってから眠りに落ちるまで、いつもより時間がかかった気がする。キノの心が夢への期待で興奮気味だったのか。あるいは別のどこかが、運命の手を感じ、怯え、そこへ行くのをためらっていたからかもしれない。
意識を手放すその瞬間、キノの心が無意識に震えた。
「それをこちらに渡しなさい」
低く静かな、けれども、少し緊張した声がそう言った。
「これは私たちの手にあるよりも、今ここに存在しないほうがいいでしょう」
別の声が答える。息を切らしながらも落ち着いた、なぜか心に響く声。
「この決定に異を唱えはしても、互いに納得したのではなかったか。いったいどうしようというのだ。それを破壊することはできない。行き場があると思うか? ラシャから降りる道は、0時にならなければ開けない」
冷たいコンクリートの床を石で打つような音がゆっくりと近づく。
そして、沈黙。
張りつめた空気の中、音のない溜息が聞こえた気がした。
「充分にわかっております」
その言葉に息を飲む小さな音。重なる衣擦れの音。
「まさか、おまえ…」
「…どうかお許しを!」
「よせ! カイラ…!」
二つの叫びが木霊し、次の瞬間、何かが水面に直撃したような衝撃音が鳴り響き、キノは飛び起きた。
☆☆☆
★★★
夢? 今のは何? まだドキドキしてる。何か恐いものを見たみたい…あれ? 私、何か見たっけ? 音は聞こえたけど…息を吐いたら破れそうな空気に、二人の男が話してて…それから、叫び声と、あれは…何かが水にぶつかる音…?
キノは現実に戻りきらない頭で考える。起き上がった拍子に開いたまぶたが再び視界を遮ろうとし、パッと開かれる。
何か…変。
目覚める前にキノが眠りについたのは、遮光カーテンのおかげで昼間でも薄暗い自分の部屋のいつものベッド。けれども、スモールライトの灯りでオレンジがかった薄闇に見えるはずの見慣れた光景が、そこにはなかった。
キノの目に映っていたのは、淡いブルーのカーテンをくぐり抜けて届く太陽の光で薄明るい室内。見たことのないテーブルにソファーに壁時計。フローリングの床ではなく、馴染みのない畳に襖まで見える。
すっかり焦点の定まった視線を落とすと、キノが今再びもぐり込もうとしていたあたたかい布団さえも見慣れないもの。そして、そこには見知らぬ男が、心地良さそうな寝息をたてていた。
キノが酔って記憶をなくすことはない。数時間前の過去を思い出すのに苦労したりもしない。けれども、ここが今までに来たことのない部屋で、彼が会ったことのない男なのは確かだった。
キノは初めて目にする男の寝顔を、静かに見つめる。頭の中は混乱しているが、その表情にも動作にも、全く動揺は見えない。
何が…どうなってるの? ここはどこ? この男は誰? これも…夢? だってこんなことありえない…ああ、もう! 何が何だかわからない。でも…。
キノはそっと男の頬に指をあてた。あごから首筋へと優しくなぞる。無意識の、かつて何度も繰り返されたことがあるかのように、自然な動作だった。
だからなのか、男の胸にゆっくりと頭をあずけて行く自分に、キノは驚きもとまどいもしなかった。
眠りから戻らぬままの男の腕がキノの重みを感じ取り、その肩を抱く。キノは規則正しく鼓動を刻む胸に顔を埋め、目を閉じ深く息を吸った。
ああ…ここが好き。この腕の中だけが安心出来るところ…どうして? 何でそう感じるの? 私、この男がひどく愛しい。恋しくてたまらない。私のどこか、頭じゃなくて心よりもっと奥の方が…そう思ってる。ここにいるのは私なの? 何か…おかしな感じ…五感は確かに感じるのに、身体は私の意志とは別の何かが動かしてるみたいな…本当に夢なの? だって私、この感触を知ってる。この体温を知ってる。もう…どっちでもいい。ずっとこうしていられるなら…。
キノがそう思い始めるのを待っていたかのように、男の腕が力を取り戻した。
薄く開けたキノの目に、ふとあるものが留まる。男の手がキノの髪を撫でている。あたたかくて優しいその指が絡め取った、明るい栗色の髪。
キノが顔を上げるのと同時に男が言った。
「希由…?」
★★★
キノの目の前には男がいるはずだった。寝顔しか知らない男の瞳があるはずだった。あの刹那、わからないことをわからないままでかまわぬほど愛しく思った男が。
その代わりにキノが見たものは、見慣れた背表紙が並ぶ本棚。いつもの四角い独りの空間。
しばらくの間、キノはまばたきひとつすることが出来なかった。夢から現実に戻る時間が、普段より多く必要だった。固く目をつぶって深呼吸し、ゆっくりとまぶたを開く。
間違いなく自分の部屋。キノは頬に手をあてる。そこに残る男のぬくもりを探すかのように。
夢…か、やっぱり。でも、ものすごくリアルな…あの安心感と、愛しい気持ち…今まで、誰にも感じたことないかも…。
キノは身体を起こすと、本棚の上段に手を伸ばす。まだ鳴っていない目覚まし時計を枕もとに移動し、再び横になる。
朝目覚めてからのこの空白の時間が、キノは好きだった。起きなくてはならない時刻よりも少し早めにかけるアラームの音で目覚めた後、眠りの余韻に浸る無為な数分間。意識を保ったまま無意識の眠りを楽しむような、心を無に漂わせるような感覚。実際に眠ってしまって遅刻しないためのアラームをかけてまでも、キノは一度のベルで潔く起き出すことが出来ない。
30分も早く目が覚めるなんて、あの夢のせい? もっと見てたかったな…何かすごく気になる。あれはいったい誰?って…ただの夢なのに。あの男も、あの私も…。
キノは閉じた目の奥に、鮮明に残る夢の情景を浮かべる。
夢から醒めたらあの部屋にいて、それも夢だったわけだけど…不思議。いつもは夢なんてすぐ忘れちゃうのに、今朝のはまだはっきりと憶えてる。最初の夢の叫び声が、耳に残ってる。それに…あの男、あのぬくもり…すごく愛しかった。あれは私の気持ち? 夢の中の私が、夢の中の男をあんなに愛してるの? あの腕の中、ずっといたかったな…。
胸の奥が熱くなるのと同時に、額の奥にしびれに似た痛みを感じ、キノは手の平を押しあて頭を擦った。ショートボブの髪をぼんやりと指で梳きながら、夢の中で最後に目にした光景を思い出す。
男の長く繊細な指先に絡む彼女の髪。そして、彼女を呼ぶ彼の声。
髪が長かった。確か『キユ』って…。
キノは心地良いまどろみの中、記憶を反芻し続ける。現実と幻との境を彷徨う。
なぜこんなにも気になるのか。それを知る手がかりを見つけられぬまま、キノの思考は夢から離れることが出来なかった。所詮夢だと頭ではわかっていても、その夢の何かが、キノの心をとらえて放さない。
動き始めた運命の端、いつもの部屋でいつもの時間、いつもの音でアラームが鳴り響き、止んだ。
職場の近くにある人気のイタリアンレストランで、キノは遅めの昼食をとっていた。正午には満席だった店内も、午後3時を過ぎた今では空席の方が目立つ。
「で、いい男だったの?」
キノの夢の話を聞いていた美紅が言う。美紅はキノと同じデパートの中に入っている店舗の店員で、3年前に二人が入社して以来の友人だった。
冷たいグラスに付いた小さな水滴を、キノの指が優しく繋いで行く。
「私にとってはね。美紅の好きなワイルド系じゃなかった。何か繊細な顔立ちで」
「それは残念。でもキノの好みってわかんないからな。統一性がないっていうか」
「好みの顔ってないの。その時好きな人が好みでしょ? それに…夢の人は、寝顔しか見てないし」
「起きたって、顔は同じよ」
「瞳で変わるもん。あともうちょっとだったのにな」
キノが悔し気にそう言って煙草に火をつけると、美紅は声を上げて笑った。キノが険しい視線を美紅に向ける。
「大丈夫、わかってるよ。夢は夢。現実にはいない男に本気になったりしないから。あぶない友達にはならない」
その瞳が笑い、そして、急に真剣なものへと変わる。
「でもね、普通の夢と何か違うの。うまく言えないけど…また会える気がする」
「…夢の中で?」
キノは答えずに、煙草の先から立ちのぼる細い煙が目の前で分解していくのを、ただぼんやりと見続けていた。
その夜、浴槽に浅く揺れる湯の中で、キノは物思いにふけっていた。
シャワーで済ますこともたまにあるが、湯舟にゆっくりつかって汗を流す方がキノは好きだった。久しぶりに灯したアロマキャンドルの甘い香りと静寂に包まれ、白い水面に反射するロウソクの灯りを眺めていると、なんとなく儀式めいた気分になってくる。
キノは目を閉じた。見つめていた小さな炎の残像が瞼の裏に見える。
夢はどこが見るんだろう。脳? 心? それとも…別のところ?
キノは鼓動が速まっていくのを感じる。湯に熱せられたせいだけでなく、夢を思い昂った感情が胸を熱くする。
あの夢、眠ったら忘れちゃうかな。でも、また見れるような気がする…。
ドキドキする心と身体を落ち着かせるように、殊更ゆっくりと頭から爪先まで洗い、顔を洗う。ほてった肌に冷水が心地良い。
キノは風呂からあがると、手帳を開きペンを走らせた。
『あの人に、また会いたい』
ベッドに入ってから眠りに落ちるまで、いつもより時間がかかった気がする。キノの心が夢への期待で興奮気味だったのか。あるいは別のどこかが、運命の手を感じ、怯え、そこへ行くのをためらっていたからかもしれない。
意識を手放すその瞬間、キノの心が無意識に震えた。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる