上 下
27 / 167

027 知らない:R

しおりを挟む
 坂口が戻るのを待つ間、翔太と友好を深めた。
 いろいろ話すうちに。この素直な後輩がわりと抜け目なく如才なく、シニカルな面もあるおもしろい子だってわかってきて。

「さっきの身のこなしもキレがよかったですもんね。タチだっていうし、見た目とギャップあり過ぎでしょ」

 翔太のほうも遠慮ない物言いになってきた。

「外見は僕のせいじゃないし、変なの寄ってきてうんざりだったし。自分を守る術は必要だから身につけたし。タチは好みの問題」

「高畑さんが好きだって人、見てみたいな」

「恋愛したことないから……きみと同じような好きか、わからないけど。見れるよ。あっちにいる」

「え? 今ここ、風紀にいるんですか?」

「委員長と面接してる。もう終わってるかも」

 翔太が僕をジッと見る。

「つき合うんですよね。合格したから」

「うん」

「……恋愛したことがない?」

「うん。友達として好きはあるけどね。紫道しのみちのことはすごく抱きたい」

「それ、恋じゃないんですか?」

「んー……向こうも恋愛感情あるかわからないみたいだし。遊びでセックスしないって言うから。つき合えば遊びじゃないじゃん? だからつき合うことにしたの」

「なんか……」

 翔太が微妙な笑みを浮かべる。

「高畑さんて、タフで老獪そうなのに心のその部分だけ置き去りっていうか。どこかアンバランスな感じ……俺、人の弱いとこに敏感なんです」

「僕のどこが弱いの」

「知らないんでしょ? 愛のチカラってやつ」



 愛!?
 の、チカラって……!

 そんなクサい言葉リアルで使うの、はじめて聞いたよ……!?



「知らない。愛って僕には幻だから。あるなら見せて」

「残念。相手にしか見えないっていうか、感じられない……だけど。チカラがあるって信じると、無敵になります」

 僕より数段キレイな瞳をした後輩に、懐疑的な目を向けた。

「俺、合格したでしょ? 坂口さんとの面接選んだのも、そのチカラのお導きで……バッチリ!」

 堂々と言い放つ翔太。

「じゃあ、無敵にならなきゃいけない場面で信じてみるよ」

 礼儀上そう返したところで、ガチャリとドアが開いた。



 戻ってきた坂口に。

「放置しちゃってごめんねー、あっちと一緒にもうすぐ解散」

 そう言われて仮眠室を出ると、そこには2年が4人だけ。

「合格の人たちですか?」

「そう。1年はきみ以外落ちたけど、寮からの3人がいるから」

「はい。うちのクラスにひとりいます」

 坂口と翔太の会話を背に、もう一度確認……。



 紫道、いないじゃん……!



 まさかダメだった?
 杉原は、いる……。

「紫道は? 落ちたの!?」

「いや。面接中だ」

 デスクのとこのイスに座ってる杉原が答える。

「そっか……」

「あれ? まだ終わってないのか。ラストひとり……長いな。即決出来そうなヤツだったのに」

 ホッとしたところに坂口の言葉。

瓜生くりゅう……委員長の面接、速いヤツは1分で落とされてたぞ。だから、まぁ……大丈夫だろ」

 杉原がフォロー……。

「あ。出てきた」

 坂口の声で、ドアのほうに目を向けた。
 紫道と瓜生がこっちへ。

「どう?」

「採用だ」

 坂口が聞いて、瓜生が答え。

「これで7人。正式決定はまだだが、仕事の予行はしてもらう。連絡先を記入していけ」

 淡々と続ける。
 さすが風紀委員長。校外で見るより威圧感あるね。

「じきに予鈴だ。授業に遅れるなよ」

 言われた通り。配られた紙に急いで電話番号とメアドを書いて、風紀の本部を後にした。



 予鈴の響く中、紫道と廊下を小走り。次は芸術で僕は美術室、紫道は書道室だから、階段を下りたら別々になる。

 瓜生の面接はどんなだったのか、とか。
 風紀はほぼ決まりだけど、僕側の約束は正式決定した時に完了? とか。
 つき合うのはいつから、とか。

 聞きたいことあるけど、今は時間ナシ。



「今日、終わったらゆっくりね」

「玲史」

 紫道が物言いたげな瞳を向けてくる。

「立候補、認定されたな……」

「うん。一緒に風紀委員になれるね」

「……あとで、帰りに……話そう」

「オッケー」

 1階に着いた僕たちは、それぞれの教室へと向かった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

支配された捜査員達はステージの上で恥辱ショーの開始を告げる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので

こじらせた処女
BL
 大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。  とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…

おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話

こじらせた処女
BL
 網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。  ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

処理中です...