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焼きそばパン[小石川結乃]
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小石川結乃、滝立市立滝立中学校に入学して1週間だけど、4月2日生まれだから13歳の中学1年生。
好きな物は、ハートがキュンキュンする恋愛マンガ、恋愛アニメ。
中学生になれば、自分も恋愛マンガのようなキュンキュンな恋ができるかもと思っていたけど、そんな気配は今のところなし。
廊下を歩いていたら男の子とぶつかって、そこからロマンスが始まる……みたいな、昭和レトロな出会いがしてみたい。
「わたっ」
なんて事を考えながら昼休みの廊下を歩いていたら、後ろから誰かにぶつかられた。
もしかして、マジで昭和レトロな出会いが。
と思って振り返ると、金髪の男の子が、鋭い目つきであたしをにらんでいた。
「ご、ごめんなさい」
思わず謝る、あたし。
この金髪の男の子は、同じクラスの親住くんだ。見た目通りのヤンキーで、高校生の不良軍団ともつながりがあるってウワサを聞いた事がある。
ちがう意味で昭和レトロな出会いがきた。
後ろからぶつかられたんだから、あたしは悪くない気もするんだけど、とにかくこの場から解放されたい。
「お前、どこか人が来ないような場所を知らない?」
「ええ、人が来ないっ?」
人が来ないところに連れて行かれて、ひどい事をされるかもしれない。まわりにいる人達もざわざわし始めたけど、助けてくれそうな感じはない。
「あの、中庭だと、あまり人が来ない、と、思います」
「外か、それは考えてなかったな」
そうつぶやくと、親住くんはあたしを放置して昇降口の方へ歩いていった。
「た、助かった……の?」
もしかしたらもどってくるかもしれないから、あたしは学食に向かった。
「わてっ」
「あ、すみません」
学食の出入口のところで、ちょうど出てきた女の子とぶつかってしまった。
今日は人とぶつかる日なのか?
相手は同じクラスの成原さんだった。たしかご両親とも有名な会社に勤めていて、郊外の立派なお屋敷に住んでいるという、絵に描いたようなお嬢様だ。
「どこか人が来ない静かな場所を知りませんか?」
「ええっ!?」
成原さんの話に、思わず体がビクンとふるえた。
1日に別の人から2回も同じ事を聞かれるなんて、そうそうある事じゃないよね。
でも、これって、もしかして。
「あ、そういう事か……中庭ならあっちだよ」
「中庭ですか?」
成原さんは「ありがとうございます」と丁寧にお礼を言うと、昇降口の方へ歩いていった。
その後ろ姿を見送りながら、あたしは胸がドキドキと高鳴るのを実感していた。
成原さんの姿が見えなくなったのを確認してから、あたしは小走りであとを追いかけて、中庭に向かった。
▼ ▽ ▼ ▽ ▼
そして、あたしはいま中庭にいる。
正確には大きな桜の木の後ろに隠れて、中庭をのぞき……もとい、こっそりと見ている。
あたしの視界の中に、焼きそばパンを半分に分けて食べている、成原さんと親住くんがいた。
思った通りだ。
「あの2人、隠れて付き合っているんだ」
そうでもなきゃ、男女でパンを半分に分けて食べるなんてするわけないもんね。
片やお嬢様の成原さん。
片やヤンキーの親住くん。
属性が全然ちがう2人が付き合っているなんて知られたら、まわりになんて言われるかわからない。
もしかしたら別れさせられるかもしれない。
だから、人が来ない2人きりになれる場所を探していたんだ。
こんなの滅茶苦茶キュンキュンするじゃん。
あたしは断然2人を応援する。
2人の関係が他の人にバレないようにガンバろう。
*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*
次回 カップラーメン
*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*
好きな物は、ハートがキュンキュンする恋愛マンガ、恋愛アニメ。
中学生になれば、自分も恋愛マンガのようなキュンキュンな恋ができるかもと思っていたけど、そんな気配は今のところなし。
廊下を歩いていたら男の子とぶつかって、そこからロマンスが始まる……みたいな、昭和レトロな出会いがしてみたい。
「わたっ」
なんて事を考えながら昼休みの廊下を歩いていたら、後ろから誰かにぶつかられた。
もしかして、マジで昭和レトロな出会いが。
と思って振り返ると、金髪の男の子が、鋭い目つきであたしをにらんでいた。
「ご、ごめんなさい」
思わず謝る、あたし。
この金髪の男の子は、同じクラスの親住くんだ。見た目通りのヤンキーで、高校生の不良軍団ともつながりがあるってウワサを聞いた事がある。
ちがう意味で昭和レトロな出会いがきた。
後ろからぶつかられたんだから、あたしは悪くない気もするんだけど、とにかくこの場から解放されたい。
「お前、どこか人が来ないような場所を知らない?」
「ええ、人が来ないっ?」
人が来ないところに連れて行かれて、ひどい事をされるかもしれない。まわりにいる人達もざわざわし始めたけど、助けてくれそうな感じはない。
「あの、中庭だと、あまり人が来ない、と、思います」
「外か、それは考えてなかったな」
そうつぶやくと、親住くんはあたしを放置して昇降口の方へ歩いていった。
「た、助かった……の?」
もしかしたらもどってくるかもしれないから、あたしは学食に向かった。
「わてっ」
「あ、すみません」
学食の出入口のところで、ちょうど出てきた女の子とぶつかってしまった。
今日は人とぶつかる日なのか?
相手は同じクラスの成原さんだった。たしかご両親とも有名な会社に勤めていて、郊外の立派なお屋敷に住んでいるという、絵に描いたようなお嬢様だ。
「どこか人が来ない静かな場所を知りませんか?」
「ええっ!?」
成原さんの話に、思わず体がビクンとふるえた。
1日に別の人から2回も同じ事を聞かれるなんて、そうそうある事じゃないよね。
でも、これって、もしかして。
「あ、そういう事か……中庭ならあっちだよ」
「中庭ですか?」
成原さんは「ありがとうございます」と丁寧にお礼を言うと、昇降口の方へ歩いていった。
その後ろ姿を見送りながら、あたしは胸がドキドキと高鳴るのを実感していた。
成原さんの姿が見えなくなったのを確認してから、あたしは小走りであとを追いかけて、中庭に向かった。
▼ ▽ ▼ ▽ ▼
そして、あたしはいま中庭にいる。
正確には大きな桜の木の後ろに隠れて、中庭をのぞき……もとい、こっそりと見ている。
あたしの視界の中に、焼きそばパンを半分に分けて食べている、成原さんと親住くんがいた。
思った通りだ。
「あの2人、隠れて付き合っているんだ」
そうでもなきゃ、男女でパンを半分に分けて食べるなんてするわけないもんね。
片やお嬢様の成原さん。
片やヤンキーの親住くん。
属性が全然ちがう2人が付き合っているなんて知られたら、まわりになんて言われるかわからない。
もしかしたら別れさせられるかもしれない。
だから、人が来ない2人きりになれる場所を探していたんだ。
こんなの滅茶苦茶キュンキュンするじゃん。
あたしは断然2人を応援する。
2人の関係が他の人にバレないようにガンバろう。
*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*
次回 カップラーメン
*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*
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