黒竜住まう国の聖女~呪われ令嬢の終わりと始まり~

奏ミヤト

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第五章 絡み合う思惑の果て

力試しと助言

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 崖登りをしてみせろ。
 そう言われたのは、客をもてなすことに浮かれるヤーヴァルを誰も説得できず、彼の勢いに流されるまま、私とイーリスの砦滞在が決まってしまったすぐあとのことだった。
 群れの長には必ず従うグーラ種の馬とは違い、人間は自分達を率いる者がそう決めたからと言っても、「はい、そうですか」と素直に従う者ばかりではない。自分の目で見、耳で聞いて判断しなければ気が済まない質の者なら、なおさらその傾向は強いだろう。
 そして、砦にいるキスタス人兵士の多くは、自らの力を他者に示して強さを誇る戦士であり、自らの目と耳を何より信じる者ばかりだった。
 その為、たとえ私が会ってわずかでシシシュを屈服させたのだとしても、疾く駆けるシシシュの速さに失神しないだけの胆力を持っていたのだとしても、それらを理由にヤーヴァルが私を大層気に入り、「ヴィシュヴァが保護するに足る子供」と認めたとしても、言葉だけでは到底納得できないと言う者が多かったのだ。

 結果、もてなす前にまずは私と言う人間を示せと言う話になり、本来ならそんな兵士達を宥めるなり諫めるなりする立場のヤーヴァルも、まさかの「それは面白そうだ」の一言で、一緒になって興味を示す始末。
 そして、まるで鍛えられていない体に剣の腕はないと早々に判断されてしまった私は、ならば馬ならどうだと言うことで、前述の崖登りを提案されることになったのだ。
 これには多少反対する声もあったものの、ヤーヴァルが率先して賛同の声を上げたことと、私の護衛であるイーリスが静観していたことが、反対の声を見事に消し去ってしまった。

「嬢ちゃんはまだ子供だし、精々あの崖の中腹までってとこだな」
「おいおい。中腹まででもきついんじゃないか?」
「そうそう。こんなお嬢様にあんな崖、登れっこないって。誰だよ、崖登りを言い出したの」
「だが、あのヴィシュヴァが保護しているんだ。存外やるかもしれんぞ?」
「どうだかな。何なら、どこまで登れるか賭けるか?」

 砦の敷地の外れ、厩舎と馬場の奥にある崖登り専用の訓練場へと移動した私の耳に、共にこの場までやって来た兵士達の会話が届く。その大半は、崖登りに賛同した割に、乗馬ができる程度の私はどうせ大した高さを登れやしないと考えているらしく、見世物見物よろしく楽しもうとする人の割合の方が多かった。その所為か、私が到達できる崖の高さの予想も軒並み低い。
 だだ、話を聞いていると、どうも私に戦士の素養がないと言うことが、私に対するそもそもの評価を低くさせているようであった。
 どこまでできるかと期待するような物言いをしつつも、結果はたかが知れているだろうと鼻で笑う者が圧倒的。つまり、ヤーヴァルの宣言を受け入れなかった彼らは、私を認めるつもりがないのだ。
 嫌でも耳に入ってくる周囲の声に対して、私は努めて感情を表に出さないようにしながら、脇に立つイーリスと目配せし合って小さく頷いた。

「無理をしては駄目よ?」
「はい。無理はしません」

 キリアンもレナートもいない場所で無理など、元よりするつもりはない。ただし、私に崖登りができないと思っている皆をあっと驚かせたくはある。特に、私を認めるつもりがない彼らは、ぎゃふんと言わせてやりたい。
 レナートは必要以上のことをこなそうとする私のことを心配していたけれど、人間何事もやっておけば、不思議と役立つ瞬間に巡り合うものだ。それが、まさかこんなに早く、それも王都から遥か遠方の地で披露することになるとは、私自身予想もしていなかったけれど。
 視界を遮る危険のあるベールだけは脱いでイーリスに手渡し、私は用意された馬に跨った。鐙を履いて踏ん張ると、しっかり手綱を握る。そして。

「――行きます!」

 気合を入れた一声と同時に馬の腹を蹴り付け、私は王城の訓練場にあったものよりも遥かに高い崖に向かって、勢いよく駆け出した。

 *

 馬の蹄が小気味いい音を立てて崖を駆け降り、馬体が優雅に跳躍する。
 目を瞠る人々の前へと危なげなく降り立ち、私が手綱を引いて馬を止めれば、その瞬間に歓声が沸き上がった。

「こいつぁーすげぇ!」
「中腹まで軽々たぁ、小さいし細っこいってのにやるもんだなぁ!」
「隊長が気に入るのも納得ってぇもんだ!」
「ヴィシュヴァもヴィシュヴァ・ラヌも、こりゃあ確かに渋るわけだぜ」
「よく見りゃ綺麗な顔もしてるしよ。抱くにゃあちょいと貧相だが、戦士の嫁には十分じゃねえか」
「流石は、俺らの英雄ヴィシュヴァが選んだ子供だ!」

 若干気になる発言が混じっていたような気がしつつも、崖登りをする前とは真逆の好意的な声を上げる人々の様子に、私はひとまず馬上で安堵する。
 流石に崖を登り切るとはいかなかったけれど、私は中腹を越えた辺りにあった、馬一頭が体を休められるだけの足場がある場所までは、登ることができた。それでも、王城の訓練場の倍近い高さだ。
 馬を止めた拍子にうっかり下を見てしまい、その高さにこれ以上は登れないと判断して降りることにしたのだけれど、流石にこれだけ手の平を返した反応を見せておいて、私のことを認めないとは言わないだろう。

「よかったわね、ミリアム」
「はい!」

 真っ先に私の元へ歩み寄って来たイーリスが笑顔で出迎えてくれて、私の顔にも自然と笑みが浮かぶ。

「ぬわっはっはっ! 流石だな、娘さん……いや、ミリアムさんよ! わしは、お前さんの胆力に感服したぞ! 天晴だ! 皆もそうだろう!」

 イーリスに続いてやって来たヤーヴァルは、私が馬上にいるにもかかわらず、それを感じさせない視線の高さでもって私の頭を撫で、肩を叩いた。そして、彼の発した言葉には私の崖登りを見ていた人の多くが、同意を示して頷きを返してくれる。
 中には、異議なし、とはっきり言葉にしてくれる人もいて、私がこの地を訪れた目的の一つでもある、国境警備隊に私を認めさせると言う目的が無事達成できたことに、私はほっと息を吐いた。

「ありがとうございます、ヤーヴァル様、みなさん」

 私と共に崖を登ってくれた馬にも礼を言って降り、厩舎へ戻されるその後ろ姿を見送る。その私に、隣で同じく馬を見送っていたイーリスが不意に顔を寄せてきた。

「ミリアム。あなたに失礼なことを言った馬鹿共には、私からきつーく言っておくから、あなたは気にしちゃ駄目よ。むしろ、聞かなかったことにして忘れなさいね」
「は、はい……」

 イーリスの顔に浮かぶのは変わらない笑みではあったけれど、私の耳元でそう囁いたあとにいまだ興奮冷めやらないと言った様子の兵士達へと寄越した瞳は、欠片も笑みの気配がなかった。そのことに得も言われぬ恐怖が背を駆けて、私の顔が一瞬引き攣る。本当にきつく言うだけで済むのか、実に怪しいものだ。
 何故なら、私の脳裏にものの見事にイーリスに屈し、恐怖で震える彼らの姿がいとも簡単に想像されたのだ。相手は屈強なキスタス人の兵士なのにも拘わらず。
 もしかしたら、ヒューゴに対して烈火の如く怒る非常に珍しいイーリスの姿を、一度ならず目にしてしまったからかもしれない。
 うっかり思い浮かべた自分の想像に私が背を震わせていると、イーリスの向こうから大きな体が覗いて、私はつられるように顔を上げた。

「しかし、ミリアムさんはヴィシュヴァ・ラヌには実に勿体ない女子おなごだの! 今からでも、ヴィシュヴァと交渉できぬものだろうか……のう、ミリアムさん?」
「馬鹿言わないでくださいよ、隊長。んなことしたら、ヴィシュヴァ・ラヌに俺達全員袋叩きですよ! ですよね、ミリアムさん?」
「え……と。ヴィシュヴァ……ラヌ?」

 ヤーヴァルとタァニがそれぞれ私に同意を求める中、私は砦に来てから度々耳にしたものの意味が判然としていない言葉に、小さく首を傾げた。
 「ヴィシュヴァ」が、アレクシアのキスタス人としての名であることは知っている。
 今現在彼女が名乗っているアレクシアと言う名は、彼女がサロモンに嫁ぐ際、彼の両親にエリューガル風の名を名乗ることを結婚の条件として出された為に付けたものだ。

 ちなみに、当初から名乗るならばアレックスがいいと言っていたそうだけれど、それは多く男性に付けられる名であると言うことで、愛称をそれにすると言う妥協をもって現在の名になったのだとか。そして、サロモンがアレクシアを呼ぶ際に口にする「ヴィア」と言う彼女本来の名の愛称は、伴侶のみに許された特権だと教えられた。
 キスタス人にとって個を表す名はそれだけ大事であり特別なのだそうで、それを知ったサロモンは愛の形だと言って、普段からアレクシアのことをヴィアと呼ぶことにしているのだ。
 そんなわけで、前者はアレクシアを指していることは分かるのだけれど、では後者の「ラヌ」は一体何を意味する言葉なのか。それがまるで分らない。

《何だ、知らんのか? ラヌとは、キスタスの言葉で息子を意味するものだ》

 私が目を瞬いていると、厩舎に戻ることなく私の崖登りを見ていたシシシュが人を掻き分けてやって来て、私の視界を遮るように鼻先を突っ込んできた。

「息子、ですか?」

 反射的にその鼻先を撫でながら私が聞き返せば、シシシュが軽く首肯する。

《つまり、ヴィシュヴァ・ラヌはヴィシュヴァの息子……レナートの小僧のことを指している》
「どうしてそんな言い方を……」

 個を表す名は大事なものだと言うのであれば、レナートのこともきちんと名で呼ぶべきではないのだろうか。

《我が主達にとって、ヴィシュヴァ殿の存在は大きいのだ。今でこそ、あの小僧もこの国の王太子側近の地位にいるそうだが、国境に住む我らにとっては遠い地の話。その存在の大きさはヴィシュヴァ殿を凌ぐものではない》

 つまり、ヤーヴァル達にとってのレナートは、アレクシアの存在が偉大過ぎて、レナート個人としての認識よりも「英雄ヴィシュヴァの息子」と言う認識の方が真っ先に来ると言うことなのだろう。
 例えば、貴族の家柄を重視するアルグライスで、私のことを「リンドナー家のご令嬢」と言うのと同じで。
 けれど、そうなると先の二人の会話は、ヤーヴァルは私をレナートに勿体ないと言い、タァニはレナートに袋叩きにされると言ったことになり、それはそれで私に新たな疑問を生じさせるものだった。
 だって、リーテの愛し子とは言え、たかが小娘の私の何がどうレナートに勿体なくて、そのレナートが彼らを袋叩きにする理由になると言うのか。
 新たな疑問にわずかに眉間に皺を寄せていると、シシシュが私へと顔を寄せた。

《そんなことより、おぬしに少し話がある。我に付いて来い》

 それだけを言うと、シシシュは私の返事を待たずに馬場へ向かって歩き出してしまう。私が慌てて呼び止めるけれど、シシシュは立ち止まりもしない。それを目にして、私は隣のイーリスに声をかけた。

「イーリスさん。シシシュさんが私に話があると言うので、少しこの場を離れます」
「そう、分かったわ」

 タァニが目を丸くする気配に、そう言えば、この場にいる人達には私が動物と意思疎通が可能であることをはっきり伝えていなかったと思いながらも、私はイーリスの了承の言葉に感謝を示してシシシュの元へと足を向けた。
 背後でイーリスがタァニへ説明してくれている声を聞きつつ、人だかりからわずかに離れた馬場の柵の手前で私を待つシシシュに追い付く。

「お待たせしました、シシシュさん。それで、お話と言うのは?」
《おぬしの力のことだ》

 更に少しばかり人だかりから距離を取り、私のことを強い日差しから守るように自分の影の中へ入れて立ち止まってから、シシシュが端的に告げる。

「私の力……ですか?」
《我が、おぬしに服従の姿勢を見せたことは覚えているな?》

 それは、あまりにも私を馬鹿にするシシシュに対して怒りを覚え、主以外の人間も尊重しろと一喝した時のことだろう。シシシュが急に態度を翻したことが不思議だった為、よく覚えている。

《あれは、我の意思ではない。おぬしの力が、我を強制的に従わせたものだ》
「……え? それは、どう言う……?」

 こちらを見下ろす隻眼の眼力に嫌な予感が重なって、私は腹の底が冷えるのを感じた。

《おぬしは、その力を獣と意思疎通ができるだけのものと捉えているようだが、それ以上のことが可能と言うことだ》

 相手に自分の意思が伝わると言うことは、相手に自分の意思を理解させることができると言うこと。それは、友好的に相手と関係を築いたり、互いの理解を深めたりするのに大いに役立つ。
 実際、私はこの力のお陰でレイラ達のことをよりよく知ることができ、今まで以上に仲が深まった。屋敷の庭によく来る小動物や鳥達の中にも、こちらから声をかけている内に個体を識別できるようになったものもいるし、私のことを恐れずに近寄ってくれるものも出て来るようになった。
 けれど、まさか神から授かった力が、その程度で終わるような代物である筈がないとシシシュは言う。エイナーが、彼の力は他者の感情を視る以上のことができるのだと言っていたように、私の力も意思疎通が可能なことを前提に、更に踏み込んだことを成せるのだと。

「私、そんなつもりじゃ……っ」

 私に屈すまいと、恐らくは彼の意思に反して動く体を何とか押し止めようと震えながら抵抗していたシシシュの姿が思い出され、私はたちまち顔から血の気が引いた。
 あんなことをシシシュにさせるつもりなんてなかった。私はただ、彼がフィンの父親であることを事前に知っていたこともあって、最初から友好的に私に接してくれたフィンとはまるで掛け離れた、そのあまりに失礼な態度に頭に来てしまっただけで。彼の意思を無視してまで私に従わせようなんて、微塵も思っていなかったのに。
 自分がやってしまったことの恐ろしさに、その力の強大さに、指先が小刻みに震える。

《分かっている。おぬしがあのようなことを平然と成す人間であるとは、我は思っていない。恐らく、おぬしの感情の昂ぶりが無意識に力を発現させてしまったのだろう。力の制御が十全でない時には、しばしば起こることだ》
「でも、それじゃ、まさかシシシュさんが私を認めてくれた時も……」

 あの時、直前に私はシシシュと強く睨み合っていた。睨み合いの間、私が無意識にシシシュに対して私を認めろと強く思ってしまっていたとしたなら。その結果が、シシシュのあの言葉なのだとしたら。
 敬意には敬意を持って返そうとシシシュに膝を折った私の、なんと滑稽なことだろう。彼は、その意思を捻じ曲げて私を認めざるを得なかっただけかもしれないのに。

《心配せずとも、おぬしを認めたのは紛うことなき我の本心。我の意思だ。我とあれだけ睨み合って視線を逸らさなかった度胸、それにおぬしの真っ直ぐな心根は、我が認めるに値する。それは疑ってくれるな》
「本当……ですか?」
《そう言っているではないか。そもそも、この我が未熟な力にそう何度も屈するものか。次に同じことをやられたとしても、おぬしのちんけな力など我の強靭な意思が簡単に跳ね除けるわ》

 心外だとばかりにふんと鼻を鳴らすシシシュは堂々として自信に満ち、私の不安をあっさりと吹き飛ばす。それでも私の強張った顔は笑みを作るまでには至らず、いまだ震える指先をぎゅっと握り締めて、シシシュへ感謝の言葉を口にするだけで精一杯だった。
 そんな私に、シシシュが慰めるように顔を寄せてくれる。

《ミリアムよ、己の力を恐れるな。それが、その身に宿る力を制する最善の方法だ》
「……はい」
《とは言え、今は未熟に過ぎるのも事実。同じ愛し子である王太子殿に相談をしてみよ。あの方は力の扱いには長けておいでだ。我も同じく力を宿す存在ではあるが、おぬしとは種が違い過ぎるのでな》

 助言程度しかできない、とシシシュは少しばかりおどけた調子で続けて笑う。
 けれど、その助言がなければ、私は自分が無意識の内に力を使って相手を強制的に従わせていたことに気付くことはできなかっただろうし、何かの拍子に自力でそのことに気付いたとしたら、力を行使することをただ闇雲に恐れていたかもしれない。
 私にとって、シシシュの言葉は何よりありがたいものだ。

「シシシュさん、本当にありがとうございます」
《礼には及ばん。身の内に宿る力を制するのは、結局はおぬし自身なのだからな》
「はい。私、頑張りますね!」

 シシシュの逞しい首に抱き着いて感謝を表し、私はようやく顔に笑みを灯すことができた。そのことにシシシュが嬉しそうに尾を振り、話はこれで終わったと言うように厩舎へ向かって歩き出す。
 けれど、体を反転させたところで首だけが私を振り向き、助言ついでにと、もう一言だけ私に忠告めいたことを口にした。

《先ほどの崖登りでおぬしを認めた人間は、多くが男だった。……女には、十分気を付けることだ》
「えっ!」

 思わず声を上げて驚く私をそのままに、シシシュはそれだけを言うと今度こそ振り向くことなく厩舎へ向かってしまい、私はその場にぽつんと残されてしまう。あまりに不穏な言葉に笑顔もすっかり引っ込んで、私の口端がひくりと痙攣した。

 この砦に勤める国境警備隊は、男性の方が多いとは言え、女性も決して少なくはない。むしろ、近衛騎士団や王都警備兵団などに比べると、女性の数は圧倒的に多いと言っていいだろう。そして、当然ながらその大半がアレクシアへの憧れが強いキスタス人だ。
 シシシュが言うには、そんな彼女達にどうやら私はまだ認められていない……らしい。
 これでも、初めての高さまで登って頑張ったのだけれど。その崖登りで駄目なら、私は何をしてみせれば女性兵士達に認められるのだろうか。一気に重くなる気持ちを抱えながらも、ひとまずイーリスの元へ戻ってこのことを相談してみようと、私は去って行くシシシュに背を向けた。
 と、その視界に、まるで私を待ち構えるように進路を塞ぐ複数の女性兵士の姿を認めて、踏み出した足が一歩で止まる。
 そして、気付いた。シシシュの忠告は、彼女達がそこにいることを知ってのものだったのだと。これでは、イーリスに相談する間も、十分気を付ける間もないではないか。

「あー……っと、驚かせちまったかい? でも、そう警戒しないどくれよ。その……あたしらは、大将からお嬢さんに砦を案内してくれと頼まれたんだ」
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