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第四章 母の故国に暮らす
執務室、とある日常
しおりを挟む「さすがにアースガイル。
使節船も立派なものだ。」
砂漠の国“デザリア”で宰相を務める男は星空の下、近づいてくる大型の船を見つめていた。
到着は翌日と思われていたが、返信をした日の内に着くとは、相手も随分と無理をしたらしい。
「急かしたわけではないのだがな。」
問題が起こっている。
どこにも寄らずに王宮に来いと言っておいて急かしてないはない。
使節団の代表がアースガイル国王の愛する第2王子と知った上で、どう動くか試したのだ。
「流石、勤勉と謳われる王子だけある。
愚鈍でないと分かって安心した。」
アースガイルの使節船はデザリアで好まれる派手な装飾でないにしろ、シンプルにも洗礼された美しい船だった。
見事に横付けにされた使節船から帽子の大きな男が降りてきた。
「これはこれは、豪勢なお出迎え痛み入ります。」
男は目の前に立つ老功に軽く頭を下げた。
「無事の到着なによりです。
貴方は・・・。」
宰相がといかけると、男は帽子を脱ぎ胸に当てた。
「ハッ。
私はアースガイル貴族、フィルディナンド・クロス。
伯爵位を賜っております。
この度は使節船の船長という大役を任されておりました。
ディビット・ドゥ・アースガイル第2王子は間も無く参ります。
今暫くお待ちください。」
クロス伯爵と名乗った男に宰相は1つ頷くと静かに浮かぶ船を見上げた。
そこに、1人の若者が現れるとアースガイルの騎士や船員が背筋を伸ばす。
宰相はこの若者こそが第2王子かと、見極めるように見つめた。
若者は軽やかに階段を降りてくるとクロス伯爵の肩にポンと手を置いて微笑んだ。
「楽しい船旅でした。
世話になりました。
帰りも頼みます。」
「ハッ!
光栄であります。
ディビット様をアースガイルにお送りするまでが私の仕事です。
どうぞ、“デザリア”の滞在が実りあるものである事を願います。」
クロス伯爵の通る声にディビットは笑いを堪えながら頷いた。
そして出迎えの先頭にたっていた老功に目をやると、かけていた眼鏡をクィッと上げて微笑んだ。
「待たせてしまいましたか?」
「とんでもない事でございます。
ようこそ“デザリア”までお越しくださいました。
私、宰相を務めますナロ・シウバと申します。
責任をもって王宮までご案内致します。」
老功の挨拶にディビットは優しく頷いた。
「ありがとう。
あの有名なナロ・シウバ殿に会えて嬉しいかぎりです。
『砂漠における革新的防衛の考察』の論文を拝見しました。
興味深い記述が多く、呼んでいて勉強になりました。」
「なんと!
アレは私が20代の折に書いた、およそ傑作とはほど遠いと論ぜられた物ですぞ?
読まれたのですか?」
「えぇ。
我が国は砂漠ではありませんが、通じる物がないとも言い切れないでしょう。
論文とは研究者達の本気の証。
国の統治に関わる者は、どんな考えでも拒まずに知識として頭に入れるべきです。
・・・まぁ、偉そうな事を言いましたが、本当は私が読み物が好きというだけの話ですがね。」
“デザリア”の宰相ナロ・シウバはアースガイルの若き王子との出会いで、国を揺るがす問題が解消されるのではないかと願わずにいられなかった。
使節船も立派なものだ。」
砂漠の国“デザリア”で宰相を務める男は星空の下、近づいてくる大型の船を見つめていた。
到着は翌日と思われていたが、返信をした日の内に着くとは、相手も随分と無理をしたらしい。
「急かしたわけではないのだがな。」
問題が起こっている。
どこにも寄らずに王宮に来いと言っておいて急かしてないはない。
使節団の代表がアースガイル国王の愛する第2王子と知った上で、どう動くか試したのだ。
「流石、勤勉と謳われる王子だけある。
愚鈍でないと分かって安心した。」
アースガイルの使節船はデザリアで好まれる派手な装飾でないにしろ、シンプルにも洗礼された美しい船だった。
見事に横付けにされた使節船から帽子の大きな男が降りてきた。
「これはこれは、豪勢なお出迎え痛み入ります。」
男は目の前に立つ老功に軽く頭を下げた。
「無事の到着なによりです。
貴方は・・・。」
宰相がといかけると、男は帽子を脱ぎ胸に当てた。
「ハッ。
私はアースガイル貴族、フィルディナンド・クロス。
伯爵位を賜っております。
この度は使節船の船長という大役を任されておりました。
ディビット・ドゥ・アースガイル第2王子は間も無く参ります。
今暫くお待ちください。」
クロス伯爵と名乗った男に宰相は1つ頷くと静かに浮かぶ船を見上げた。
そこに、1人の若者が現れるとアースガイルの騎士や船員が背筋を伸ばす。
宰相はこの若者こそが第2王子かと、見極めるように見つめた。
若者は軽やかに階段を降りてくるとクロス伯爵の肩にポンと手を置いて微笑んだ。
「楽しい船旅でした。
世話になりました。
帰りも頼みます。」
「ハッ!
光栄であります。
ディビット様をアースガイルにお送りするまでが私の仕事です。
どうぞ、“デザリア”の滞在が実りあるものである事を願います。」
クロス伯爵の通る声にディビットは笑いを堪えながら頷いた。
そして出迎えの先頭にたっていた老功に目をやると、かけていた眼鏡をクィッと上げて微笑んだ。
「待たせてしまいましたか?」
「とんでもない事でございます。
ようこそ“デザリア”までお越しくださいました。
私、宰相を務めますナロ・シウバと申します。
責任をもって王宮までご案内致します。」
老功の挨拶にディビットは優しく頷いた。
「ありがとう。
あの有名なナロ・シウバ殿に会えて嬉しいかぎりです。
『砂漠における革新的防衛の考察』の論文を拝見しました。
興味深い記述が多く、呼んでいて勉強になりました。」
「なんと!
アレは私が20代の折に書いた、およそ傑作とはほど遠いと論ぜられた物ですぞ?
読まれたのですか?」
「えぇ。
我が国は砂漠ではありませんが、通じる物がないとも言い切れないでしょう。
論文とは研究者達の本気の証。
国の統治に関わる者は、どんな考えでも拒まずに知識として頭に入れるべきです。
・・・まぁ、偉そうな事を言いましたが、本当は私が読み物が好きというだけの話ですがね。」
“デザリア”の宰相ナロ・シウバはアースガイルの若き王子との出会いで、国を揺るがす問題が解消されるのではないかと願わずにいられなかった。
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