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第二章 芽吹きの祈願祭
私の好きな物語
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「大変お見事なダンスでございました、ミリアムお嬢様。愛らしく美しく、正に泉の精が夜の森を舞うようでございました」
戻った私へと真っ先に称賛の言葉を送ってくれたのは、私達が踊っている間にレナート達と合流したらしいハラルドだった。その顔は眼光鋭い梟ではなく好々爺然として、案の定、兵士の幾人かが驚きの眼差しでもって彼を見る姿がちらほら窺えた。
そんなハラルドのそばにはエイナーとラーシュの姿もあり、二人からも大きな拍手を送られて、私は自然と笑みが深くなる。
「お褒めいただいてありがとうございます、ハラルド様。初めてあんなに自由に踊ったので、拙かったとは思うのですけど……イーリスさんのお陰で、とても楽しめました」
「私も、ミリアムと踊れてとても楽しかったわよ」
「イーリス殿も、広間に舞う胡蝶のごとき美しさは実に艶やかでしたぞ」
「まあ、珍しい。ハラルド殿がそんな風に私を褒めてくださるなんて。これも、ミリアムのお陰かしら?」
「……私は何もしていませんよ?」
イーリスに対するハラルドの態度は、私に対するそれと変わらない。いずれ屋敷の執事にと望まれていたくらいなのだから、女性に対しては、普段から平等に紳士的な態度でいるのではないのだろうか。
私が不思議に思って目を瞬くのを見て、イーリスとハラルドがにこやかに笑みを零す。そこに、小さな体がすいと割り込んできた。
「イーリス、ずるいよ! 僕が一番にミリアムと踊ろうと思っていたのに! それに、ドレスだなんて聞いてない!」
頬をぷくりと膨らませ、両の拳をぐっと握り、愛らしい眉を一生懸命眉間に寄せて不満を全身で表すエイナーが、伸びをするようにイーリスに向かって口を開く。
その姿は確かに怒っている筈なのに、本人には申し訳ないながら、抱きしめたくなるほどに愛らしかった。本人にとっては非常に不本意だろうけれど、相変わらずこう言う時のエイナーには、見る側をときめかせる力がある。
「ミリアムは僕のお客様で友達なのに!」
「それは申し訳ないことをしました、エイナー様。ですが、ドレスに関しての文句は、ぜひテレシアへ。これは私の所為ではありませんから」
「……どう言うこと?」
はたと怒りを疑問に転じさせたエイナーに、イーリスは肩を竦めてフレデリクを指し示す。
「来る筈のない人が来たのを、テレシアが見つけてしまって」
端的な一言だったけれど、イーリス達の身に何が起こったのかは想像に難くなかった。実に私自身、何度も経験のあることだ。特に今日はやられてばかり。
獲物を見つけたと目を光らせるテレシアによって、有無を言わさず部屋に引っ張り込まれる二人の姿が脳裏を過って、私は現在の二人の姿に納得してしまう。エイナーもその時の様子を想像してしまったのか、怒っていたことをすっかり忘れたような多大な呆れを含んだ声音で、そうなんだ、と力なく零す。
その様子に、もしかしてエイナーも、これまで幾度となくテレシアの着せ替え人形にされてきたのだろうか、との思いが過った。彼のイーリスを見上げる視線の中に同情の色が含まれるのを見て、腰に手を当てて高笑いをするテレシアの姿が、私の中にふっと浮かんで消える。
それから、私は小さな疑問を覚えてイーリスに顔を向けた。
「フレデリクさんは、同じ騎士団の方ではないんですか?」
焦げ茶の髪を短く刈ったフレデリクは、さっぱりした見た目ながら筋肉質と言うわけではなく、実のところ、お世辞にも日常的に剣を振るうようには見えない。けれどその代わり、私には頭脳労働に長けているように見受けられた。
勝手ながら、兵団で参謀としての地位にいるハラルドと同じような立ち位置だろうと見当をつけていた為、来る筈がなかったと言うイーリスの説明を不思議に思ったのだ。
「僕はエディルで医師をしている。彼女の同僚に手紙を貰って……驚かせようと思って、何も告げずに来たんだ」
「お医者様なのですか!」
首肯して、その拍子にわずかにずれた眼鏡を直すフレデリクを見上げ、私は驚くと共に納得した。多くの知識を持ち合わせていそうだと感じた私の直感は、ある意味で正しかったのだ。
それにしても、騎士と医師とは、二人の出会いに少しばかり興味が湧く。
「お陰で、私はまんまと驚かされたところをオーレンに突かれて試合に負けたんだけど?」
「それは悪かったと思っているよ。でも、そもそも君は劣勢だっただろう。観戦席に座った僕の姿に気付くほど、集中力も失せていた。君が怪我をする前に勝負がついて、僕としてはよかったよ」
「……それは……まあ……?」
フレデリクの、至って真面目な言い分とイーリスへの思いに溢れた言葉に、言い淀んで顔を背けると言うイーリスの珍しい姿を前にして、私の顔に自然と笑みが灯る。
自分の大切な人が恋人と仲睦まじくしている姿は、見ている側にも幸せを呼び込んでくれるものだ。
「……ところで。手紙もそうだけど、レナート? それにキリアンとオーレンも。あなた達、ミリアムを困らせているんじゃないわよ」
恥ずかしさを誤魔化すように、イーリスが思い出したとばかりにじろりとレナート達を睨みつけ、ダンスを踊る前の騒がしくしていた一幕に話題を戻す。
途端にキリアンはそっぽを向き、そんなキリアンを、レナートとオーレンが睨みつける。
そんな三人の様子からは「キリアンが原因」と言うことは伝わってくるものの、誰の口からも何も語られる様子はなく、イーリスは早々に三人から事情を聴くことを諦めて、私へと視線を移した。
「ミリアム。あの馬鹿三人に何をされたか、私に教えてくれる?」
ひとまとめに馬鹿と称された三人は揃って心外だと目を瞠っていたけれど、イーリスの一睨みの威力に負けたのか、開きかけた口から言葉が出てくることはなく。
そんな三人の様子に苦笑しながら、私はイーリスに対して、まずは三人の為にも否定の言葉を口にした。
「違うんです、イーリスさん。私が、レナートさんとオーレンさんがご友人なのかどうか知りたくて、お二人に尋ねたんです」
「――ああ……そう言うこと。よく分かったわ。ありがとう、ミリアム」
付き合いの長いイーリスだからこそ分かるものが、何かあるのだろうか。それとも、二人が友人であるか否かと言う問いは、二人の明かされたくない過去と直結しているとでも言うのか。
新参者の私にはさっぱり分からないけれど、イーリスは私の一言ですっかり理解したようで、鮮やかな紅を刷いた口元に笑みを浮かべていた。
そして、興味に光らせた瞳で、私に別の問いを投げかける。
「ミリアムは、どうして二人にそんなことを聞こうと思ったの?」
先ほどは、レナート達に本当の理由を伝えることが恥ずかしくて、仲がよさそうに見えたからと咄嗟に誤魔化した。勿論、そう見えたことも私が尋ねようと思った理由の一つであることは間違いないのだけれど、本当の理由はそんな一般的なものではない。
子供じみた私の願望から来るものであると言うことを、イーリスならば女同士、正直に伝えてもいいだろうか。
レナート達が、まさか他に理由があったのかと訝しむと共に焦る様子を見せる中、私はイーリスの手を引き、身を屈ませた彼女の耳元で、彼女にだけ聞こえる声量でもって事の発端となった理由を口にした。
「……私の好きな物語に、お二人によく似た人物が登場するんです……」
途端に恥ずかしくなって、私は顔を俯かせてしまう。空想の物語の登場人物に現実の人物を重ねて見てしまうなんて、夢見がちな少女でもそうそうやらないことだ。
果たしてイーリスは、どんな反応をするだろう。
俯いたまま、視線だけを心持ち上げてイーリスの反応を窺えば、まず返って来たのは私を抱きしめる二の腕の感触だった。
次いで聞こえたのは、肯定的な明るい言葉。
「ミリアムったら、なんて可愛いのかしら! いいわね、私そう言うの大好きよ」
「ほ、本当ですか?」
「勿論! そう言う話は大歓迎。もう少し詳しく聞いてもいいかしら? 本の題名とか、その人物の名前とか……」
すっかり興味津々でレナート達のことなど忘れた様子のイーリスの勢いに、私はすっかり嬉しくなってしまった。私の数少ない友人の一人にすんなり受け入れられた喜びと、ダンスを気持ちよく踊り、この場で気を張らなくていいのだと分かって、気が緩んでしまっていたこともあるのだろう。
だから私は――つい、口を滑らせてしまった。
「もうずっと以前に読んだ本なので……実は、うろ覚えなところが多いんです。覚えていることもわずかで、さっきも、オーレンさんにお会いしてやっと、その人物のことを思い出したくらいで――」
口に出してしまってから、私ははっとした。
私が文字の読み書きが過不足なくできることは、エイナーが見舞いで持って来てくれた本を読んでいた時点で、既にイーリス達には知られてしまっている。何故そんなことができるのかについては、生前の母に文字を教わったとでも思ってくれているのか、ありがたいことに言及はされていない。お陰で、私が本を読んでいたことについては、この場では失言と言う失言にはならない。
けれど、今の私の言葉は非常にまずかった。
まだ、たかだか十六年しか生きていない私が、アルグライスでの幼い頃を「ずっと以前」なんて言葉で表現するのは、どう考えてもおかしい。いくら、私がその物語を本で読んだのが、実際に覚えていないくらいずっと昔の、何度目かの人生での出来事であったとしても、馬鹿正直にずっと以前だなんて、なんて表現をしてしまったのだろう。
せめて、母が生きていた頃であったり、小さな子供の頃とでも言っていれば、その当時、私が本を読める環境にいない筈だったとしても、私以外にそれを確かめる術を持つ者はいないので、いくらでも誤魔化しは効いたのに。
言葉を途切れさせた私に、私の失言に気付いているのかいないのか、イーリスが不思議そうに瞬く。
「あ、あの……」
「残念。覚えていないなら、仕方がないわ。でも、二人のことは覚えているのでしょう? 名前を教えてくれない?」
「え、と……?」
もしかして、イーリスには気付かれなかったのだろうか。
イーリスの腕の中から恐る恐る周りの反応を窺ってみても、私が急に口を噤んでしまったことをただ不思議そうにするばかりで、私の失言に気付いている様子は見られない。
「ミリアム、どうかしたの?」
首を傾げるエイナーも不思議そうで、間近のイーリスへと顔を戻しても、やはりイーリスは私の話をただ聞きたいと、言葉を待っているばかり。
(誰も、気付いてない……?)
周囲の反応を確認した私は、内心でほっと息を吐いた。どうやら、いつもの私の悪い方向へ考える思考が、悪い結果を勝手に想像してしまっただけらしい。
そうと分かれば、いつまでもイーリスを待たせていては、今度こそ訝しがられてしまいかねない。私は急いで、今一度イーリスの耳元に口を寄せた。今度こそ、レナート達に聞かれるのは気恥ずかしい。
「レナートさん達には、秘密にしておいてくれますか? その、恥ずかしいので……」
「ええ、約束するわ」
「……月華の騎士様と、山嶺の剣士様、と言うんです……」
言ってしまってから、たちまち恥ずかしさが駆け上って来た。
これまで口に出さずにいた名をいざ口にしてみると、その名の仰々しさに、なんて言葉を口に出してしまったのだろうと一気に頬が熱くなる。
「現実の二人には勿体ないくらいの名前ね。でも、素敵な響きだわ」
「……騎士様と少女の、恋の物語なんです」
結末は、生憎覚えていない。けれど、騎士と少女が次第に惹かれ合っていったことは覚えている。だから、二人はきっと幸せな結末を迎えたに違いないのだ。私が、二人のことだけは、こんなにも強く記憶に刻んでいるくらいなのだから。
「教えてくれてありがとう、ミリアム」
「……いえ。私が最初にお二人におかしなことを尋ねてしまったのが原因なので、これくらいは」
「あら。あの二人のことなら、気にしなくていいのよ? こう言うことには使えない木偶の坊なんだから」
「木偶……!?」
あまりの言いように驚く私を、けれどイーリスはまるで気にすることなく、本当に使えないんだからいいの、と私に言い聞かせるように耳元で繰り返して、二人を蔑むように横目で見た。
その眼差しは実に冷え冷えとして、何やら言いたげなレナート達の口を容易に開かせない圧がある。加えて、イーリスのそばには恋人のフレデリク。対するレナート達はそれぞれ一人で、そこはかとなくイーリスが勝ち誇っているようにも、私には見えた。
まるで、悔しかったら恋人を作ってごらんなさいと言わんばかりのイーリスの態度に苦笑すると共に、私はふと、それでは、と思う。
今、レナートとオーレンには、恋人はいないのか――と。
その瞬間、私は奇妙な胸騒ぎを覚えた。
(え……――?)
二人に恋人がいないからと言って、私が心配したり不安に思ったりする理由なんて、どこにもない筈だ。それこそ、悪い予感なんてもっての外。二人が恋人にと望むほどの女性とならば、彼らには幸せな未来が待っているに違いないのだから。
それに私は、いつか二人の隣に素敵な女性が恋人として寄り添う日が来ることを期待している。あの物語で多くの人に祝福されていた騎士と少女のように、今日のイーリスとフレデリクのように。とても絵になる光景が見られるかもしれないと思うと、胸が高鳴ると言うものだ。
それなのに胸騒ぎだなんて、一体、私はどうしてしまったのか。
私が困惑と共に視線を落とせば、その先にいたエイナーと不意に目が合った。
エイナーは私に声をかけようとしてくれていたのか、急に目が合ったことに一瞬驚くような仕草をしたけれど、すぐに口元に綺麗な笑みを刷いて私を見上げ、するりと寄って来た。
少しだけ眉尻を下げた表情はやっと話が終わったと言いたげにも見えて、そう言えば、今日はエイナーと個人的にゆっくり話す時間を取れていなかったことを思い出す。
午前中はともかく、午後は共に過ごした時間だけは多かったけれど、いつものように気兼ねなく、友人として言葉を交わすことはできていない。自分の心のおかしな反応は一旦脇に置いて、私は軽くスカートを持ち上げて礼をした。
「エイナー様、お疲れさまでした」
私の元へやって来たキリアンの代わりに、イェルドと共に来賓の応対に当たっていたエイナーを、まずは労う。
エイナーには私に関する問いがいくつも投げられた筈で、それに対して、予め決めてあった「訪問先の街を視察中、暴走した馬車に轢かれそうになったところを、咄嗟に身を挺して助けてくれた少女」と言う私の話をしたに違いない。
大怪我を負った私は、その怪我が回復するまで王城にて手厚い看護を受けていた――表向きには、そう言う筋書きなのだ。
「これくらい、どうってことないよ。僕より、ミリアムの方が大変だったんだし。……その、色々とごめんね?」
「エイナー様が謝ることなんてありませんよ」
「ううん。ミリアムには、お祭りだけを楽しんでもらった方がよかったなって……。僕も、兄上達に賛成したから……」
そもそもの元凶はテレシアで、それを許したのはキリアン。エイナーはそんな二人に巻き込まれたと言ってもいい立場なので、そこまで気に病むことはないのだけれど、エイナーなりに色々と考え、今日の私のことを心配してくれていたようだ。
確かに、食堂での一幕は思い返して私も少し悲しく思いはしたものの、私の為だと言うことは理解しているので、こうして謝罪してもらうほどのことではない。それに、エイナーには午後の観戦席でたくさん助けてもらった。それでも、エイナーは私が思う以上に気にしていたのだと言うことが、その表情から言葉以上に伝わって来る。
そんなエイナーの優しさに、自然と私の顔が綻んだ。
「でしたら、これからの祝宴を私と楽しんでいただけませんか?」
私の提案に、エイナーが瞳を瞬かせる。
「私もやっと、午後の祈願祭を楽しめてきたところなんです。ですから、エイナー様と一緒に楽しめたら、もっと素敵だと思うんです」
「それなら……」
言いかけて、エイナーがその視線を何故かラーシュへと向け、小さく頷く。すると、ラーシュはエイナーの視線を受けて、また別の方向へと手を挙げた。
どうしたのだろうと不思議に思う私の前へ、わずかに私との間に距離を空けたエイナーの手が、すっと差し出される。
背筋を伸ばし、指先から爪先に至るまで完璧な姿勢は、とても立派な王子だ。
「――ミリアム。僕と一曲、踊ってくださいますか?」
エイナーから出たのは、ダンスの誘い。
先ほど、イーリスに先を越されたこともあるのだろう。もしかすると、私が最初のダンスから戻って来てずっと、言い出す機会を窺っていたのかもしれない。浮かべられた笑顔には、二番目に私と踊る権利は誰にも譲らないと言う気合いが、どことなく見え隠れしているようだった。
そんなエイナーの誘いを断るなんて選択を、私がする筈もなくて。
「……ええ、喜んで」
差し出されたエイナーの手に、私の手を重ねる。途端に顔を輝かせたエイナーは、それだけでもう満足そうで、そのことを可愛らしく思いながら、私は再び広間の中央へと進み出た。
一度エイナーと向かい合い、距離を詰めたエイナーの手が私の背に回る。次いで、掬うように私の手を取った。それを合図に、音楽が再び流れ出す。
今度は、先ほどとは違って私の耳にも馴染んだゆったりとしたワルツの旋律が、たちまち広間を満たしていく。
その中で、私とエイナーは楽しく見つめ合ったまま、最初のステップを踏み出した。
戻った私へと真っ先に称賛の言葉を送ってくれたのは、私達が踊っている間にレナート達と合流したらしいハラルドだった。その顔は眼光鋭い梟ではなく好々爺然として、案の定、兵士の幾人かが驚きの眼差しでもって彼を見る姿がちらほら窺えた。
そんなハラルドのそばにはエイナーとラーシュの姿もあり、二人からも大きな拍手を送られて、私は自然と笑みが深くなる。
「お褒めいただいてありがとうございます、ハラルド様。初めてあんなに自由に踊ったので、拙かったとは思うのですけど……イーリスさんのお陰で、とても楽しめました」
「私も、ミリアムと踊れてとても楽しかったわよ」
「イーリス殿も、広間に舞う胡蝶のごとき美しさは実に艶やかでしたぞ」
「まあ、珍しい。ハラルド殿がそんな風に私を褒めてくださるなんて。これも、ミリアムのお陰かしら?」
「……私は何もしていませんよ?」
イーリスに対するハラルドの態度は、私に対するそれと変わらない。いずれ屋敷の執事にと望まれていたくらいなのだから、女性に対しては、普段から平等に紳士的な態度でいるのではないのだろうか。
私が不思議に思って目を瞬くのを見て、イーリスとハラルドがにこやかに笑みを零す。そこに、小さな体がすいと割り込んできた。
「イーリス、ずるいよ! 僕が一番にミリアムと踊ろうと思っていたのに! それに、ドレスだなんて聞いてない!」
頬をぷくりと膨らませ、両の拳をぐっと握り、愛らしい眉を一生懸命眉間に寄せて不満を全身で表すエイナーが、伸びをするようにイーリスに向かって口を開く。
その姿は確かに怒っている筈なのに、本人には申し訳ないながら、抱きしめたくなるほどに愛らしかった。本人にとっては非常に不本意だろうけれど、相変わらずこう言う時のエイナーには、見る側をときめかせる力がある。
「ミリアムは僕のお客様で友達なのに!」
「それは申し訳ないことをしました、エイナー様。ですが、ドレスに関しての文句は、ぜひテレシアへ。これは私の所為ではありませんから」
「……どう言うこと?」
はたと怒りを疑問に転じさせたエイナーに、イーリスは肩を竦めてフレデリクを指し示す。
「来る筈のない人が来たのを、テレシアが見つけてしまって」
端的な一言だったけれど、イーリス達の身に何が起こったのかは想像に難くなかった。実に私自身、何度も経験のあることだ。特に今日はやられてばかり。
獲物を見つけたと目を光らせるテレシアによって、有無を言わさず部屋に引っ張り込まれる二人の姿が脳裏を過って、私は現在の二人の姿に納得してしまう。エイナーもその時の様子を想像してしまったのか、怒っていたことをすっかり忘れたような多大な呆れを含んだ声音で、そうなんだ、と力なく零す。
その様子に、もしかしてエイナーも、これまで幾度となくテレシアの着せ替え人形にされてきたのだろうか、との思いが過った。彼のイーリスを見上げる視線の中に同情の色が含まれるのを見て、腰に手を当てて高笑いをするテレシアの姿が、私の中にふっと浮かんで消える。
それから、私は小さな疑問を覚えてイーリスに顔を向けた。
「フレデリクさんは、同じ騎士団の方ではないんですか?」
焦げ茶の髪を短く刈ったフレデリクは、さっぱりした見た目ながら筋肉質と言うわけではなく、実のところ、お世辞にも日常的に剣を振るうようには見えない。けれどその代わり、私には頭脳労働に長けているように見受けられた。
勝手ながら、兵団で参謀としての地位にいるハラルドと同じような立ち位置だろうと見当をつけていた為、来る筈がなかったと言うイーリスの説明を不思議に思ったのだ。
「僕はエディルで医師をしている。彼女の同僚に手紙を貰って……驚かせようと思って、何も告げずに来たんだ」
「お医者様なのですか!」
首肯して、その拍子にわずかにずれた眼鏡を直すフレデリクを見上げ、私は驚くと共に納得した。多くの知識を持ち合わせていそうだと感じた私の直感は、ある意味で正しかったのだ。
それにしても、騎士と医師とは、二人の出会いに少しばかり興味が湧く。
「お陰で、私はまんまと驚かされたところをオーレンに突かれて試合に負けたんだけど?」
「それは悪かったと思っているよ。でも、そもそも君は劣勢だっただろう。観戦席に座った僕の姿に気付くほど、集中力も失せていた。君が怪我をする前に勝負がついて、僕としてはよかったよ」
「……それは……まあ……?」
フレデリクの、至って真面目な言い分とイーリスへの思いに溢れた言葉に、言い淀んで顔を背けると言うイーリスの珍しい姿を前にして、私の顔に自然と笑みが灯る。
自分の大切な人が恋人と仲睦まじくしている姿は、見ている側にも幸せを呼び込んでくれるものだ。
「……ところで。手紙もそうだけど、レナート? それにキリアンとオーレンも。あなた達、ミリアムを困らせているんじゃないわよ」
恥ずかしさを誤魔化すように、イーリスが思い出したとばかりにじろりとレナート達を睨みつけ、ダンスを踊る前の騒がしくしていた一幕に話題を戻す。
途端にキリアンはそっぽを向き、そんなキリアンを、レナートとオーレンが睨みつける。
そんな三人の様子からは「キリアンが原因」と言うことは伝わってくるものの、誰の口からも何も語られる様子はなく、イーリスは早々に三人から事情を聴くことを諦めて、私へと視線を移した。
「ミリアム。あの馬鹿三人に何をされたか、私に教えてくれる?」
ひとまとめに馬鹿と称された三人は揃って心外だと目を瞠っていたけれど、イーリスの一睨みの威力に負けたのか、開きかけた口から言葉が出てくることはなく。
そんな三人の様子に苦笑しながら、私はイーリスに対して、まずは三人の為にも否定の言葉を口にした。
「違うんです、イーリスさん。私が、レナートさんとオーレンさんがご友人なのかどうか知りたくて、お二人に尋ねたんです」
「――ああ……そう言うこと。よく分かったわ。ありがとう、ミリアム」
付き合いの長いイーリスだからこそ分かるものが、何かあるのだろうか。それとも、二人が友人であるか否かと言う問いは、二人の明かされたくない過去と直結しているとでも言うのか。
新参者の私にはさっぱり分からないけれど、イーリスは私の一言ですっかり理解したようで、鮮やかな紅を刷いた口元に笑みを浮かべていた。
そして、興味に光らせた瞳で、私に別の問いを投げかける。
「ミリアムは、どうして二人にそんなことを聞こうと思ったの?」
先ほどは、レナート達に本当の理由を伝えることが恥ずかしくて、仲がよさそうに見えたからと咄嗟に誤魔化した。勿論、そう見えたことも私が尋ねようと思った理由の一つであることは間違いないのだけれど、本当の理由はそんな一般的なものではない。
子供じみた私の願望から来るものであると言うことを、イーリスならば女同士、正直に伝えてもいいだろうか。
レナート達が、まさか他に理由があったのかと訝しむと共に焦る様子を見せる中、私はイーリスの手を引き、身を屈ませた彼女の耳元で、彼女にだけ聞こえる声量でもって事の発端となった理由を口にした。
「……私の好きな物語に、お二人によく似た人物が登場するんです……」
途端に恥ずかしくなって、私は顔を俯かせてしまう。空想の物語の登場人物に現実の人物を重ねて見てしまうなんて、夢見がちな少女でもそうそうやらないことだ。
果たしてイーリスは、どんな反応をするだろう。
俯いたまま、視線だけを心持ち上げてイーリスの反応を窺えば、まず返って来たのは私を抱きしめる二の腕の感触だった。
次いで聞こえたのは、肯定的な明るい言葉。
「ミリアムったら、なんて可愛いのかしら! いいわね、私そう言うの大好きよ」
「ほ、本当ですか?」
「勿論! そう言う話は大歓迎。もう少し詳しく聞いてもいいかしら? 本の題名とか、その人物の名前とか……」
すっかり興味津々でレナート達のことなど忘れた様子のイーリスの勢いに、私はすっかり嬉しくなってしまった。私の数少ない友人の一人にすんなり受け入れられた喜びと、ダンスを気持ちよく踊り、この場で気を張らなくていいのだと分かって、気が緩んでしまっていたこともあるのだろう。
だから私は――つい、口を滑らせてしまった。
「もうずっと以前に読んだ本なので……実は、うろ覚えなところが多いんです。覚えていることもわずかで、さっきも、オーレンさんにお会いしてやっと、その人物のことを思い出したくらいで――」
口に出してしまってから、私ははっとした。
私が文字の読み書きが過不足なくできることは、エイナーが見舞いで持って来てくれた本を読んでいた時点で、既にイーリス達には知られてしまっている。何故そんなことができるのかについては、生前の母に文字を教わったとでも思ってくれているのか、ありがたいことに言及はされていない。お陰で、私が本を読んでいたことについては、この場では失言と言う失言にはならない。
けれど、今の私の言葉は非常にまずかった。
まだ、たかだか十六年しか生きていない私が、アルグライスでの幼い頃を「ずっと以前」なんて言葉で表現するのは、どう考えてもおかしい。いくら、私がその物語を本で読んだのが、実際に覚えていないくらいずっと昔の、何度目かの人生での出来事であったとしても、馬鹿正直にずっと以前だなんて、なんて表現をしてしまったのだろう。
せめて、母が生きていた頃であったり、小さな子供の頃とでも言っていれば、その当時、私が本を読める環境にいない筈だったとしても、私以外にそれを確かめる術を持つ者はいないので、いくらでも誤魔化しは効いたのに。
言葉を途切れさせた私に、私の失言に気付いているのかいないのか、イーリスが不思議そうに瞬く。
「あ、あの……」
「残念。覚えていないなら、仕方がないわ。でも、二人のことは覚えているのでしょう? 名前を教えてくれない?」
「え、と……?」
もしかして、イーリスには気付かれなかったのだろうか。
イーリスの腕の中から恐る恐る周りの反応を窺ってみても、私が急に口を噤んでしまったことをただ不思議そうにするばかりで、私の失言に気付いている様子は見られない。
「ミリアム、どうかしたの?」
首を傾げるエイナーも不思議そうで、間近のイーリスへと顔を戻しても、やはりイーリスは私の話をただ聞きたいと、言葉を待っているばかり。
(誰も、気付いてない……?)
周囲の反応を確認した私は、内心でほっと息を吐いた。どうやら、いつもの私の悪い方向へ考える思考が、悪い結果を勝手に想像してしまっただけらしい。
そうと分かれば、いつまでもイーリスを待たせていては、今度こそ訝しがられてしまいかねない。私は急いで、今一度イーリスの耳元に口を寄せた。今度こそ、レナート達に聞かれるのは気恥ずかしい。
「レナートさん達には、秘密にしておいてくれますか? その、恥ずかしいので……」
「ええ、約束するわ」
「……月華の騎士様と、山嶺の剣士様、と言うんです……」
言ってしまってから、たちまち恥ずかしさが駆け上って来た。
これまで口に出さずにいた名をいざ口にしてみると、その名の仰々しさに、なんて言葉を口に出してしまったのだろうと一気に頬が熱くなる。
「現実の二人には勿体ないくらいの名前ね。でも、素敵な響きだわ」
「……騎士様と少女の、恋の物語なんです」
結末は、生憎覚えていない。けれど、騎士と少女が次第に惹かれ合っていったことは覚えている。だから、二人はきっと幸せな結末を迎えたに違いないのだ。私が、二人のことだけは、こんなにも強く記憶に刻んでいるくらいなのだから。
「教えてくれてありがとう、ミリアム」
「……いえ。私が最初にお二人におかしなことを尋ねてしまったのが原因なので、これくらいは」
「あら。あの二人のことなら、気にしなくていいのよ? こう言うことには使えない木偶の坊なんだから」
「木偶……!?」
あまりの言いように驚く私を、けれどイーリスはまるで気にすることなく、本当に使えないんだからいいの、と私に言い聞かせるように耳元で繰り返して、二人を蔑むように横目で見た。
その眼差しは実に冷え冷えとして、何やら言いたげなレナート達の口を容易に開かせない圧がある。加えて、イーリスのそばには恋人のフレデリク。対するレナート達はそれぞれ一人で、そこはかとなくイーリスが勝ち誇っているようにも、私には見えた。
まるで、悔しかったら恋人を作ってごらんなさいと言わんばかりのイーリスの態度に苦笑すると共に、私はふと、それでは、と思う。
今、レナートとオーレンには、恋人はいないのか――と。
その瞬間、私は奇妙な胸騒ぎを覚えた。
(え……――?)
二人に恋人がいないからと言って、私が心配したり不安に思ったりする理由なんて、どこにもない筈だ。それこそ、悪い予感なんてもっての外。二人が恋人にと望むほどの女性とならば、彼らには幸せな未来が待っているに違いないのだから。
それに私は、いつか二人の隣に素敵な女性が恋人として寄り添う日が来ることを期待している。あの物語で多くの人に祝福されていた騎士と少女のように、今日のイーリスとフレデリクのように。とても絵になる光景が見られるかもしれないと思うと、胸が高鳴ると言うものだ。
それなのに胸騒ぎだなんて、一体、私はどうしてしまったのか。
私が困惑と共に視線を落とせば、その先にいたエイナーと不意に目が合った。
エイナーは私に声をかけようとしてくれていたのか、急に目が合ったことに一瞬驚くような仕草をしたけれど、すぐに口元に綺麗な笑みを刷いて私を見上げ、するりと寄って来た。
少しだけ眉尻を下げた表情はやっと話が終わったと言いたげにも見えて、そう言えば、今日はエイナーと個人的にゆっくり話す時間を取れていなかったことを思い出す。
午前中はともかく、午後は共に過ごした時間だけは多かったけれど、いつものように気兼ねなく、友人として言葉を交わすことはできていない。自分の心のおかしな反応は一旦脇に置いて、私は軽くスカートを持ち上げて礼をした。
「エイナー様、お疲れさまでした」
私の元へやって来たキリアンの代わりに、イェルドと共に来賓の応対に当たっていたエイナーを、まずは労う。
エイナーには私に関する問いがいくつも投げられた筈で、それに対して、予め決めてあった「訪問先の街を視察中、暴走した馬車に轢かれそうになったところを、咄嗟に身を挺して助けてくれた少女」と言う私の話をしたに違いない。
大怪我を負った私は、その怪我が回復するまで王城にて手厚い看護を受けていた――表向きには、そう言う筋書きなのだ。
「これくらい、どうってことないよ。僕より、ミリアムの方が大変だったんだし。……その、色々とごめんね?」
「エイナー様が謝ることなんてありませんよ」
「ううん。ミリアムには、お祭りだけを楽しんでもらった方がよかったなって……。僕も、兄上達に賛成したから……」
そもそもの元凶はテレシアで、それを許したのはキリアン。エイナーはそんな二人に巻き込まれたと言ってもいい立場なので、そこまで気に病むことはないのだけれど、エイナーなりに色々と考え、今日の私のことを心配してくれていたようだ。
確かに、食堂での一幕は思い返して私も少し悲しく思いはしたものの、私の為だと言うことは理解しているので、こうして謝罪してもらうほどのことではない。それに、エイナーには午後の観戦席でたくさん助けてもらった。それでも、エイナーは私が思う以上に気にしていたのだと言うことが、その表情から言葉以上に伝わって来る。
そんなエイナーの優しさに、自然と私の顔が綻んだ。
「でしたら、これからの祝宴を私と楽しんでいただけませんか?」
私の提案に、エイナーが瞳を瞬かせる。
「私もやっと、午後の祈願祭を楽しめてきたところなんです。ですから、エイナー様と一緒に楽しめたら、もっと素敵だと思うんです」
「それなら……」
言いかけて、エイナーがその視線を何故かラーシュへと向け、小さく頷く。すると、ラーシュはエイナーの視線を受けて、また別の方向へと手を挙げた。
どうしたのだろうと不思議に思う私の前へ、わずかに私との間に距離を空けたエイナーの手が、すっと差し出される。
背筋を伸ばし、指先から爪先に至るまで完璧な姿勢は、とても立派な王子だ。
「――ミリアム。僕と一曲、踊ってくださいますか?」
エイナーから出たのは、ダンスの誘い。
先ほど、イーリスに先を越されたこともあるのだろう。もしかすると、私が最初のダンスから戻って来てずっと、言い出す機会を窺っていたのかもしれない。浮かべられた笑顔には、二番目に私と踊る権利は誰にも譲らないと言う気合いが、どことなく見え隠れしているようだった。
そんなエイナーの誘いを断るなんて選択を、私がする筈もなくて。
「……ええ、喜んで」
差し出されたエイナーの手に、私の手を重ねる。途端に顔を輝かせたエイナーは、それだけでもう満足そうで、そのことを可愛らしく思いながら、私は再び広間の中央へと進み出た。
一度エイナーと向かい合い、距離を詰めたエイナーの手が私の背に回る。次いで、掬うように私の手を取った。それを合図に、音楽が再び流れ出す。
今度は、先ほどとは違って私の耳にも馴染んだゆったりとしたワルツの旋律が、たちまち広間を満たしていく。
その中で、私とエイナーは楽しく見つめ合ったまま、最初のステップを踏み出した。
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