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第二章 芽吹きの祈願祭
祈願祭祝宴
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シュナークル山脈の西の端に太陽がその姿を隠し始める頃、熱戦を繰り広げた修練場は立見席の前に設けられていた柵が取り払われ、城門から修練場までが一つながりの形へ変更されていた。
修練場のぐるりを新たな飲食店が囲み、中央には巨大な焚火が赤々と燃える。また、観戦席の一角を陣取った楽団が軽快な音楽を奏で、人々がその音に合わせてダンスを楽しんでいる。
城門までの道にも等間隔に火が焚かれ、次第に夜の帳が下りる空とは反対に地上を明々と照らし、これから夜通し続く祝宴の始まりを人々に告げていた。
そんな坂の下の陽気な賑やかさとは打って変わって、王城内の大広間では、抑制された控えめな騒めきが空間を満たしていた。
そこに集う人々は、一部の来賓を除けば、その殆どが兵団、騎士団の制服を身に纏った者とその同伴者で構成され、当然、主役となる祈願祭の出場者は、ほぼ全員がその場にいた。まだこの場に姿を現していないのは、決勝を戦った二人と、王族だけだ。
立食形式で行われる祝宴の開始に向けて着々と運び込まれる料理の数々に、体力こそが一番の資本である兵士、騎士達の一部は早くも目を光らせていたが、多くの人々は祝宴の始まりを待ちながらも、どこか気もそぞろな様子だ。
人々が囁き交わす言葉の中に多く混じるのは、泉の乙女や、その者を婉曲的に示す言葉達。ようやく自分達の間近で見られる、例年、優勝者のエスコートでこの広間に現れるその人の登場を、皆が今か今かと待っているのだ。
やがて、空の色が一段と濃さを増した頃、国王を先頭に、王族が大広間の最奥に設けられた段上へ現れた。そして全員が注目する中、開かれた扉の向こうからまず姿を現したのは、決勝を戦い惜しくも敗れた若い兵士。
多くの拍手に出迎えられながら国王の前へ進み出た兵士に、国王が健闘を称える祝辞を述べ、その胸に、女神リーテの住まう泉の周囲に咲くと言う、鮮やかな黄の水仙を一輪飾る。
再びの拍手が大広間を包み込み、兵士が脇へとその身を寄せると、人々の注目が大広間の大扉へと向かう。
静まる広間の中で優勝者の名を述べる声が響き渡り、重々しい音と共に開いた扉の向こうから、今日の芽吹きの祈願祭最大の功労者が、隣に見たこともない美女を伴ってその姿を現した。
騎士は堂々と、美女は伏し目がちに、広間に集まる人々の注目を浴びている。二人は実に似合いの男女にも見え、美しく着飾っていること以上に、女神の祝福とでも言うべき輝きを放っているようでもあった。
国王の元へ歩みを進める彼らの様子を、決して直接見えはしない王都の一角、赤屋根を持つ時計塔の薄闇の中で見つめながら、その者は恍惚に口元を歪ませていた。
「――ああ……間違いない。待ち焦がれた私の宝が、ようやく戻って来た……」
腕を伸ばし、見える景色の中央に気恥ずかし気に立つ美女の、その頬をうっとりと撫でる。露わな項に指を這わせ、ドレスに包まれた体の線を丹念に辿り、最後にその胸に長く伸びた爪を突き立て、心臓を抉るように握り込む。
「もう二度と、お前を逃しはしない。ああ……私の愛しい女神よ……」
大広間では騎士が勝者の証である葉冠を戴き、三度の拍手がその場を満たしていた。やがて、王の合図で祝宴の幕が開く。
たちまち人の波に埋もれてしまった美女の、それでも目立つ鮮やかな緑の頭髪にほくそ笑み、その者は酷く曲がった背を更に丸め、肩を揺らした。
「ようやく私の大願が成就する時が来た……忌々しいクルーディオの血族を共に呪い殺す、その時が……! 私の愛しい宝よ……麗しき我が女神よ……どうかその時まで、いい子で待っておいで……」
薄闇の中にその姿を同化させながら、黒衣の王太子によって人だかりが薄れ、再びその者の視界に姿を現した美女に向かって、今一度、惜しむように手を伸ばす。
「――ああ、私の……エステル――」
◇
「――?」
誰かに名を呼ばれた気がして、私は背後を振り返った。
けれど振り返った先に見知った人の姿はなく、料理に夢中な人々の、騒々しいざわめきばかリが耳に入ってくる。
誰かに呼ばれたと思ったのは、気の所為だったのだろうか。
「ミリアム、どうした?」
小首を傾げる私を、レナートが不思議そうな顔で覗き込んだ。
彼の手には飲料の入ったグラスが二つ握られ、その内の一つが、私に中途半端に差し出される形で止まっている。それに気付き、私は何でもありませんと首を振ってありがたくグラスを受け取ると、失礼にならない態度でレナートから視線を逸らした。
今のレナートの姿は、長い時間直視するには少々私の心臓に悪いのだ。
式典用の特別な仕立てだと言う騎士服は、いつもの黒ではなくクルードの紅を主としたもの。代わりに襟や袖にクルードの黒が使われ、竜翼の意匠を始めとした刺繍が至る所に施された、非常に華美な仕様になっている。
それだけでも普段とは違う秀麗な出で立ちでいつも以上に目を引くのに、試合を終えていつも通り前髪を下ろしたその頭に載せられた葉冠が、レナートのふわりと躍る金髪に似合いすぎて、目のやり場に困って仕方がない。
そして、どうやらそう思っているのは私だけではないようで。その証拠に、広間にいる女性の多くが、一度はレナートを目にして頬を染めている。中には、彼の姿を目に焼き付けんばかりに熱い視線を送り続けている女性もいるけれど、レナートはそれらの視線に気付いていないのか、気付いていて無視しているのか、気にする様子がまるでない。
けれど、そんなレナートの態度が、また女性達を引きつけて止まないのだろう。レナートに注がれる視線は、途切れることを知らなかった。
流石、出場者紹介で数多くの女性から声援を浴びていたレナートである。
そう思うと同時に、彼の隣にいる女性が貧相な小娘の私――泉の乙女は優勝者を称える為、優勝者に伴われて祝宴に入場する習わしらしい――であることに申し訳なさを感じながら、私は視線を落として、自分の姿にひっそりと息を吐いた。
控えの間にいる間、キリアンやレナートを始め私の姿を見た人からは、よく似合っている、綺麗だと口々に賛辞は頂いたけれど、それらの社交辞令を真に受けて舞い上がれるほど、私は子供ではない。
同時に、その時にキリアンに伝えられた事柄を思い出す。
エリューガルで保護を受ける子供の中には、様々な事情により名しか持たない者や、家名を名乗れない者もいる。アルグライスと縁を切りたい私は、保護を受けることでリンドナーの家名を捨てることができるのだと。
加えて、ここエリューガルでは、東方の国々との交易は盛んではない。けれど、全く交流がないわけではなく、東方にはない珍しい品を求めて商人がやって来ることはままある。そう言った東からの来訪者の耳に私の名が入り、それが巡り巡ってモールト領主の耳に届く危険性を考えれば、リンドナーの家名は名乗らぬ方がよいだろう、と。
どうしたいと問われて、私は一も二もなく頷いた。これからの私はミリアム・リンドナーではなく、ただのミリアムに――エリューガルのミリアムになりたいと。
そう、決めた筈なのだけれど。いざ華やいだ空間に足を踏み入れ、多くの視線に晒されると、こんな場所に私が着飾って混ざることの恐れ多さを思い知らされてしまっていた。
泉の乙女役として最後にやるべきことがあった試合観戦の時とは違い、優勝者を称えると言う役割を終えた私がこの場ですべきことは、もうない。本当に、私はこのままここにいていいのかとの不安が、じわりじわりと私の胸の中を侵食していく。
そんな私の不安とは対照的に、さながら夜会に出席する貴族令嬢そのものと言った出で立ちに着飾られた今の格好は、あまりに眩しい。今日一番の大仕事をやり遂げたと、テレシアが大満足の顔で送り出してくれたものだ。
柔らかなレース生地を何枚も重ねたスカートは、清らかな水を思わせる薄い青。その上に、星を全体に散りばめたかのような夜色のドレスを重ね、露出する肩には同じく夜色のショールが掛けられて、ドレスで隠しきれなかった傷と、私の残念な体型を上手く隠してくれている。
編み込みながら高い位置で一つにまとめられた髪はふわりと柔らかく、敢えて編み込まれなかった横髪の一房が、私をどことなく大人びて見せてくれている……気がする。
そして、そんな私をこれでもかと煌びやかに飾り立てるのは、耳と首元に燦然と輝く、目の覚めるような澄んだ水色の宝石。特に首飾りは、びっしりと小粒のダイヤモンドが散りばめられ、それがぐるりと私の首を巡る仕様になっていて、実家に頼んで送ってもらったと言いながらテレシアが手ずからつけてくれた時には、思わず腰を抜かしそうになったほどだ。
広大な土地を買っても余裕で釣りが出るくらいの価値がありそうな宝飾品を、ついこの間まで一粒の宝石はおろか、よそ行きの服の一着すら身に着ける経験のなかった元下女が、その身に着けることの恐れ多さと言ったらない。
それなのに、すっかり身支度を終えた後に、私の姿を矯めつ眇めつしていたテレシアは大変ご満悦で、
「見える……見えますわ! 今日のミリアム様のこのお姿に、祝宴に参加された殿方全員が見惚れる姿が!」
と、今にも高笑いしそうなほどだった。
けれど、残念ながらテレシアの予想を裏切って、今のところ私に向けられる視線の多くは、好意的なようでいて、奇異の目ばかりが寄越されている。
テレシアの見立てのよさと化粧の腕のよさと言う助けを借りて、どれだけ素晴らしいものを身に着けても、元が貧相で下女な私ではテレシアの期待に応えることができないどころか、分不相応と言うことの証なのだろう。こんな私がいつまでもレナートの隣にいては、その内、会場中の女性の反感を買ってしまいそうだ。
うっかり嫌な想像をしてしまった私は、気を紛らわせるべく、レナートから受け取ったグラスに口をつけた。
レナートが手にするそれとは色味の違う淡い琥珀色の液体は、当然ながら酒ではなかった。グラスの中で細かな気泡を立ち昇らせている炭酸飲料を喉に流し込み、私はほっと息を吐く。すっきりとした果実の味が、乾いた喉によく染み渡って実に美味しい。
「ミリアム。疲れたなら、遠慮せずに言ってくれて構わないからな? どうせ、ここは朝まで騒ぎ通しなんだ。酒が入った馬鹿に捕まる前には切り上げるつもりでいるが、だからと言って、それまで無理をして留まることもない」
「ありがとうございます。でも、まだ始まったばかりなので……平気です」
祝宴が始まった途端に大勢の人に群がられた時は驚いたけれど、すぐにキリアンがやって来て、その一声で散らせてくれた。今も、レナートを挟んで私の反対隣にキリアンがいてくれるお陰で、遠巻きに私達を見る視線に晒されるだけで済んでいる。
だから、どちらかと言えば、今私が感じているのは疲労ではなく、居心地の悪さの方だ。
「そうだぜ、レナート。ここには色気より食い気の猪女しかいないんだから、もうちょっと癒しの美女様には会場にいてもらわないと」
不意に、そんな言葉と共に横合いから軽食の載った皿が差し出され、腕を辿ってそちらに顔を向ければ、片目を瞑って気障に微笑むオーレンと目が合った。
「――てわけで。お一つどうぞ、ミリアムちゃん」
決勝では括っていた髪を再び下ろしたオーレンの、耳にかけたその一房が柔らかく零れる様が何とも言えない色気を醸し出して、私は一瞬言葉に詰まる。
「……あ、りがとうございます、オーレンさん」
私は頬が熱くなるのを自覚しつつ、差し出された皿に興味を引かれた風を装って、オーレンの視線から逃げた。
オーレンとは大広間へ入場する前に一度、控えの間でレナートと共に会って挨拶を交わしている。気障な見た目に違わず随分と社交的な性格なのか、オーレンはその時から私のことを「ミリアムちゃん」と呼び、とても親しげに接してくれていた。
そのこと自体は、とてもありがたい。けれど、これまで他人と、特に異性と積極的に交流してきた経験が乏しい私には、こんなにもすぐに距離を詰めてくるオーレンとの触れ合いは、とても心臓に悪かった。
加えて、キリアンやレナートとはまた違う系統とは言え、優面のオーレンが間近に現れると言うのも、いちいち心臓が跳ねて仕方がない。勝利宣言をされた時こそ驚いたものの、遠目から見ていた時や、決勝の試合の時には全く意識することがなかったと言うのに、これはどうしたことか。
彼がさらりと口にした「癒しの美女」と言う、私に不似合いもいいところの盛り過ぎた誉め言葉が原因だろうか。それとも、やはりその整った顔だろうか。
ちらりとオーレンを窺えば、私がどの料理を手に取ってくれるのかと、期待の眼差しを送り続けている。その顔は軟派な雰囲気を差し引いても男前で、端的に言えば格好いい。実に目の保養だ。
更に、彼もまた、その身に纏うのは式典用の特別な仕立ての制服。クルードの黒に紅の腕章が実によく映える見た目は端然として、レナート同様女性の目を引いて離さない。
胸元から仄かに香る水仙の香りも相まって、オーレンのその姿は、不意に私に月華の騎士とはまた別の、けれど同じ物語に登場する人物を思い出させた。
(――山嶺の剣士様……みたい……)
月華の騎士と同じく、正義の人。
月華の騎士が生涯ただ一人を主としてその剣を振るうのに対して、山嶺の剣士は、そこに住まう人々皆の為に剣を振るう存在として描かれていた。
山のことには誰より詳しく、猟師の一団の頭を務める頼れる男でありながら、その見た目は実に気障な優男。常に芳しい花の香りを纏い、女性と見れば口説かずにはいられず、流した浮名は数知れない――遠い記憶を掘り起こして、そんな描かれ方をしていたことを思い出す。
私は、一つ大きく瞬いた。
これは偶然だろうか。
月華の騎士を彷彿とさせるレナートがいて、そのすぐ近くに、山嶺の剣士を思わせるオーレンがいるなんて。しかも、物語の二人も現実の二人も、その関係性までよく似ている。
物語の中では、月華と山嶺の二人はよき友であり好敵手であり、互いを認め合う仲だったのだ。
この二人も、はっきりと聞いたわけではないけれど、控えの間で会った印象からは、ただの知り合い以上に親しい仲であるように見受けられた。
私は思わずレナートとオーレンとを順に見て、ごくりと喉を鳴らす。これは、現実の二人の関係もはっきりさせずにはいられない。
「ミリアムちゃん?」
「あの……レナートさんとオーレンさんは、ご友人……ですか?」
せっかくオーレンが見繕ってきた軽食に手もつけず、突拍子もない問いを口にした私に、二人が一瞬、目を丸くする。
同時に顔を見合わせて一拍妙な間が空いたかと思ったら、油の切れたブリキの人形のようなぎこちない動きで、二人の視線が私を捉えた。心なしか顔が引きつっているような気もするけれど、私はそんなにおかしなことを尋ねただろうか。
首を傾げる私に、まず口を開いたのはレナートだった。
「……ミリアム。俺とオーレンは確かに友人ではあるが……何故、急に? 誰かから、何か聞いたのか? 例えば、テレシアやイーリスに……」
「いえ。その……お二人がとても仲がよさそうに見えたので、単純にご友人なのかなと思っただけで……テレシアさん達からは何も聞いていません、けど……?」
そもそも、私がオーレンの名を聞いたのもその姿を見たのも、午前中の出場者紹介の時が初めてで、テレシアからは、レナートと張り合っているらしいと言うことくらいしか聞いていない。
そんな説明のあと、決勝で二人が楽しそうに試合をする様子や、試合後に互いを称え合う姿を目にし、そして実際に会ってみて、決して二人がいがみ合うような関係ではないことが分かった程度だ。
イーリスに至っては、それこそ今日はまだ一度も会えていない。
「それはよかった」
「いやぁ、焦った……。ミリアムちゃん、俺らはただの友人。それだけ覚えてくれたらいいからね?」
「……はぁ」
物語の二人同様、目の前の二人も友人関係であることが分かって嬉しい筈なのに、何故か胸を撫で下ろして安堵すると言う二人の反応はどうにも私の腑に落ちず、間の抜けた相槌だけが私の口からぽろりと零れる。
王太子の側近である騎士と次期兵団長候補の王都の兵士と言う二人の立場上、彼らが友人関係にあることは公にしない方がいいことなのだろうか、とも一瞬思ったけれど、二人からすんなり肯定されたので、機密にするようなことではない筈だ。
では、何がそんなに二人の肝を冷やさせたのか。あれこれ考えてみても、私にはまるで見当がつかなかった。これはもう、子供の私には分からない大人の男性の事情でもあると思って、気にしない方がいいのだろうか。
私は喉の渇きを潤しながら、小声で言葉を交わし続ける二人の様子を眺めて、もう一度、先ほどとは反対の方向へと首を傾げた。
そんな私に、何やら笑いを堪えているらしいキリアンが身を寄せてくる。
「あの二人のことは、気にしなくていいからな?」
そう言いつつも、何がそんなにおかしいのか、とうとう堪え切れずに吹き出してしまう辺り、気にするなと言うのは無理な気がする。むしろ、余計に気になって仕方がない。
「いや、悪い。少し、思い出してしまって」
「あのお二人に、何かあったんですか?」
「……あったと言えばあったんだ――がっ!?」
キリアンが言いかけた瞬間、背後から伸びてきたレナートの手に襟首を掴まれ、キリアンの口から嗄れた烏のような声が飛び出る。
修練場のぐるりを新たな飲食店が囲み、中央には巨大な焚火が赤々と燃える。また、観戦席の一角を陣取った楽団が軽快な音楽を奏で、人々がその音に合わせてダンスを楽しんでいる。
城門までの道にも等間隔に火が焚かれ、次第に夜の帳が下りる空とは反対に地上を明々と照らし、これから夜通し続く祝宴の始まりを人々に告げていた。
そんな坂の下の陽気な賑やかさとは打って変わって、王城内の大広間では、抑制された控えめな騒めきが空間を満たしていた。
そこに集う人々は、一部の来賓を除けば、その殆どが兵団、騎士団の制服を身に纏った者とその同伴者で構成され、当然、主役となる祈願祭の出場者は、ほぼ全員がその場にいた。まだこの場に姿を現していないのは、決勝を戦った二人と、王族だけだ。
立食形式で行われる祝宴の開始に向けて着々と運び込まれる料理の数々に、体力こそが一番の資本である兵士、騎士達の一部は早くも目を光らせていたが、多くの人々は祝宴の始まりを待ちながらも、どこか気もそぞろな様子だ。
人々が囁き交わす言葉の中に多く混じるのは、泉の乙女や、その者を婉曲的に示す言葉達。ようやく自分達の間近で見られる、例年、優勝者のエスコートでこの広間に現れるその人の登場を、皆が今か今かと待っているのだ。
やがて、空の色が一段と濃さを増した頃、国王を先頭に、王族が大広間の最奥に設けられた段上へ現れた。そして全員が注目する中、開かれた扉の向こうからまず姿を現したのは、決勝を戦い惜しくも敗れた若い兵士。
多くの拍手に出迎えられながら国王の前へ進み出た兵士に、国王が健闘を称える祝辞を述べ、その胸に、女神リーテの住まう泉の周囲に咲くと言う、鮮やかな黄の水仙を一輪飾る。
再びの拍手が大広間を包み込み、兵士が脇へとその身を寄せると、人々の注目が大広間の大扉へと向かう。
静まる広間の中で優勝者の名を述べる声が響き渡り、重々しい音と共に開いた扉の向こうから、今日の芽吹きの祈願祭最大の功労者が、隣に見たこともない美女を伴ってその姿を現した。
騎士は堂々と、美女は伏し目がちに、広間に集まる人々の注目を浴びている。二人は実に似合いの男女にも見え、美しく着飾っていること以上に、女神の祝福とでも言うべき輝きを放っているようでもあった。
国王の元へ歩みを進める彼らの様子を、決して直接見えはしない王都の一角、赤屋根を持つ時計塔の薄闇の中で見つめながら、その者は恍惚に口元を歪ませていた。
「――ああ……間違いない。待ち焦がれた私の宝が、ようやく戻って来た……」
腕を伸ばし、見える景色の中央に気恥ずかし気に立つ美女の、その頬をうっとりと撫でる。露わな項に指を這わせ、ドレスに包まれた体の線を丹念に辿り、最後にその胸に長く伸びた爪を突き立て、心臓を抉るように握り込む。
「もう二度と、お前を逃しはしない。ああ……私の愛しい女神よ……」
大広間では騎士が勝者の証である葉冠を戴き、三度の拍手がその場を満たしていた。やがて、王の合図で祝宴の幕が開く。
たちまち人の波に埋もれてしまった美女の、それでも目立つ鮮やかな緑の頭髪にほくそ笑み、その者は酷く曲がった背を更に丸め、肩を揺らした。
「ようやく私の大願が成就する時が来た……忌々しいクルーディオの血族を共に呪い殺す、その時が……! 私の愛しい宝よ……麗しき我が女神よ……どうかその時まで、いい子で待っておいで……」
薄闇の中にその姿を同化させながら、黒衣の王太子によって人だかりが薄れ、再びその者の視界に姿を現した美女に向かって、今一度、惜しむように手を伸ばす。
「――ああ、私の……エステル――」
◇
「――?」
誰かに名を呼ばれた気がして、私は背後を振り返った。
けれど振り返った先に見知った人の姿はなく、料理に夢中な人々の、騒々しいざわめきばかリが耳に入ってくる。
誰かに呼ばれたと思ったのは、気の所為だったのだろうか。
「ミリアム、どうした?」
小首を傾げる私を、レナートが不思議そうな顔で覗き込んだ。
彼の手には飲料の入ったグラスが二つ握られ、その内の一つが、私に中途半端に差し出される形で止まっている。それに気付き、私は何でもありませんと首を振ってありがたくグラスを受け取ると、失礼にならない態度でレナートから視線を逸らした。
今のレナートの姿は、長い時間直視するには少々私の心臓に悪いのだ。
式典用の特別な仕立てだと言う騎士服は、いつもの黒ではなくクルードの紅を主としたもの。代わりに襟や袖にクルードの黒が使われ、竜翼の意匠を始めとした刺繍が至る所に施された、非常に華美な仕様になっている。
それだけでも普段とは違う秀麗な出で立ちでいつも以上に目を引くのに、試合を終えていつも通り前髪を下ろしたその頭に載せられた葉冠が、レナートのふわりと躍る金髪に似合いすぎて、目のやり場に困って仕方がない。
そして、どうやらそう思っているのは私だけではないようで。その証拠に、広間にいる女性の多くが、一度はレナートを目にして頬を染めている。中には、彼の姿を目に焼き付けんばかりに熱い視線を送り続けている女性もいるけれど、レナートはそれらの視線に気付いていないのか、気付いていて無視しているのか、気にする様子がまるでない。
けれど、そんなレナートの態度が、また女性達を引きつけて止まないのだろう。レナートに注がれる視線は、途切れることを知らなかった。
流石、出場者紹介で数多くの女性から声援を浴びていたレナートである。
そう思うと同時に、彼の隣にいる女性が貧相な小娘の私――泉の乙女は優勝者を称える為、優勝者に伴われて祝宴に入場する習わしらしい――であることに申し訳なさを感じながら、私は視線を落として、自分の姿にひっそりと息を吐いた。
控えの間にいる間、キリアンやレナートを始め私の姿を見た人からは、よく似合っている、綺麗だと口々に賛辞は頂いたけれど、それらの社交辞令を真に受けて舞い上がれるほど、私は子供ではない。
同時に、その時にキリアンに伝えられた事柄を思い出す。
エリューガルで保護を受ける子供の中には、様々な事情により名しか持たない者や、家名を名乗れない者もいる。アルグライスと縁を切りたい私は、保護を受けることでリンドナーの家名を捨てることができるのだと。
加えて、ここエリューガルでは、東方の国々との交易は盛んではない。けれど、全く交流がないわけではなく、東方にはない珍しい品を求めて商人がやって来ることはままある。そう言った東からの来訪者の耳に私の名が入り、それが巡り巡ってモールト領主の耳に届く危険性を考えれば、リンドナーの家名は名乗らぬ方がよいだろう、と。
どうしたいと問われて、私は一も二もなく頷いた。これからの私はミリアム・リンドナーではなく、ただのミリアムに――エリューガルのミリアムになりたいと。
そう、決めた筈なのだけれど。いざ華やいだ空間に足を踏み入れ、多くの視線に晒されると、こんな場所に私が着飾って混ざることの恐れ多さを思い知らされてしまっていた。
泉の乙女役として最後にやるべきことがあった試合観戦の時とは違い、優勝者を称えると言う役割を終えた私がこの場ですべきことは、もうない。本当に、私はこのままここにいていいのかとの不安が、じわりじわりと私の胸の中を侵食していく。
そんな私の不安とは対照的に、さながら夜会に出席する貴族令嬢そのものと言った出で立ちに着飾られた今の格好は、あまりに眩しい。今日一番の大仕事をやり遂げたと、テレシアが大満足の顔で送り出してくれたものだ。
柔らかなレース生地を何枚も重ねたスカートは、清らかな水を思わせる薄い青。その上に、星を全体に散りばめたかのような夜色のドレスを重ね、露出する肩には同じく夜色のショールが掛けられて、ドレスで隠しきれなかった傷と、私の残念な体型を上手く隠してくれている。
編み込みながら高い位置で一つにまとめられた髪はふわりと柔らかく、敢えて編み込まれなかった横髪の一房が、私をどことなく大人びて見せてくれている……気がする。
そして、そんな私をこれでもかと煌びやかに飾り立てるのは、耳と首元に燦然と輝く、目の覚めるような澄んだ水色の宝石。特に首飾りは、びっしりと小粒のダイヤモンドが散りばめられ、それがぐるりと私の首を巡る仕様になっていて、実家に頼んで送ってもらったと言いながらテレシアが手ずからつけてくれた時には、思わず腰を抜かしそうになったほどだ。
広大な土地を買っても余裕で釣りが出るくらいの価値がありそうな宝飾品を、ついこの間まで一粒の宝石はおろか、よそ行きの服の一着すら身に着ける経験のなかった元下女が、その身に着けることの恐れ多さと言ったらない。
それなのに、すっかり身支度を終えた後に、私の姿を矯めつ眇めつしていたテレシアは大変ご満悦で、
「見える……見えますわ! 今日のミリアム様のこのお姿に、祝宴に参加された殿方全員が見惚れる姿が!」
と、今にも高笑いしそうなほどだった。
けれど、残念ながらテレシアの予想を裏切って、今のところ私に向けられる視線の多くは、好意的なようでいて、奇異の目ばかりが寄越されている。
テレシアの見立てのよさと化粧の腕のよさと言う助けを借りて、どれだけ素晴らしいものを身に着けても、元が貧相で下女な私ではテレシアの期待に応えることができないどころか、分不相応と言うことの証なのだろう。こんな私がいつまでもレナートの隣にいては、その内、会場中の女性の反感を買ってしまいそうだ。
うっかり嫌な想像をしてしまった私は、気を紛らわせるべく、レナートから受け取ったグラスに口をつけた。
レナートが手にするそれとは色味の違う淡い琥珀色の液体は、当然ながら酒ではなかった。グラスの中で細かな気泡を立ち昇らせている炭酸飲料を喉に流し込み、私はほっと息を吐く。すっきりとした果実の味が、乾いた喉によく染み渡って実に美味しい。
「ミリアム。疲れたなら、遠慮せずに言ってくれて構わないからな? どうせ、ここは朝まで騒ぎ通しなんだ。酒が入った馬鹿に捕まる前には切り上げるつもりでいるが、だからと言って、それまで無理をして留まることもない」
「ありがとうございます。でも、まだ始まったばかりなので……平気です」
祝宴が始まった途端に大勢の人に群がられた時は驚いたけれど、すぐにキリアンがやって来て、その一声で散らせてくれた。今も、レナートを挟んで私の反対隣にキリアンがいてくれるお陰で、遠巻きに私達を見る視線に晒されるだけで済んでいる。
だから、どちらかと言えば、今私が感じているのは疲労ではなく、居心地の悪さの方だ。
「そうだぜ、レナート。ここには色気より食い気の猪女しかいないんだから、もうちょっと癒しの美女様には会場にいてもらわないと」
不意に、そんな言葉と共に横合いから軽食の載った皿が差し出され、腕を辿ってそちらに顔を向ければ、片目を瞑って気障に微笑むオーレンと目が合った。
「――てわけで。お一つどうぞ、ミリアムちゃん」
決勝では括っていた髪を再び下ろしたオーレンの、耳にかけたその一房が柔らかく零れる様が何とも言えない色気を醸し出して、私は一瞬言葉に詰まる。
「……あ、りがとうございます、オーレンさん」
私は頬が熱くなるのを自覚しつつ、差し出された皿に興味を引かれた風を装って、オーレンの視線から逃げた。
オーレンとは大広間へ入場する前に一度、控えの間でレナートと共に会って挨拶を交わしている。気障な見た目に違わず随分と社交的な性格なのか、オーレンはその時から私のことを「ミリアムちゃん」と呼び、とても親しげに接してくれていた。
そのこと自体は、とてもありがたい。けれど、これまで他人と、特に異性と積極的に交流してきた経験が乏しい私には、こんなにもすぐに距離を詰めてくるオーレンとの触れ合いは、とても心臓に悪かった。
加えて、キリアンやレナートとはまた違う系統とは言え、優面のオーレンが間近に現れると言うのも、いちいち心臓が跳ねて仕方がない。勝利宣言をされた時こそ驚いたものの、遠目から見ていた時や、決勝の試合の時には全く意識することがなかったと言うのに、これはどうしたことか。
彼がさらりと口にした「癒しの美女」と言う、私に不似合いもいいところの盛り過ぎた誉め言葉が原因だろうか。それとも、やはりその整った顔だろうか。
ちらりとオーレンを窺えば、私がどの料理を手に取ってくれるのかと、期待の眼差しを送り続けている。その顔は軟派な雰囲気を差し引いても男前で、端的に言えば格好いい。実に目の保養だ。
更に、彼もまた、その身に纏うのは式典用の特別な仕立ての制服。クルードの黒に紅の腕章が実によく映える見た目は端然として、レナート同様女性の目を引いて離さない。
胸元から仄かに香る水仙の香りも相まって、オーレンのその姿は、不意に私に月華の騎士とはまた別の、けれど同じ物語に登場する人物を思い出させた。
(――山嶺の剣士様……みたい……)
月華の騎士と同じく、正義の人。
月華の騎士が生涯ただ一人を主としてその剣を振るうのに対して、山嶺の剣士は、そこに住まう人々皆の為に剣を振るう存在として描かれていた。
山のことには誰より詳しく、猟師の一団の頭を務める頼れる男でありながら、その見た目は実に気障な優男。常に芳しい花の香りを纏い、女性と見れば口説かずにはいられず、流した浮名は数知れない――遠い記憶を掘り起こして、そんな描かれ方をしていたことを思い出す。
私は、一つ大きく瞬いた。
これは偶然だろうか。
月華の騎士を彷彿とさせるレナートがいて、そのすぐ近くに、山嶺の剣士を思わせるオーレンがいるなんて。しかも、物語の二人も現実の二人も、その関係性までよく似ている。
物語の中では、月華と山嶺の二人はよき友であり好敵手であり、互いを認め合う仲だったのだ。
この二人も、はっきりと聞いたわけではないけれど、控えの間で会った印象からは、ただの知り合い以上に親しい仲であるように見受けられた。
私は思わずレナートとオーレンとを順に見て、ごくりと喉を鳴らす。これは、現実の二人の関係もはっきりさせずにはいられない。
「ミリアムちゃん?」
「あの……レナートさんとオーレンさんは、ご友人……ですか?」
せっかくオーレンが見繕ってきた軽食に手もつけず、突拍子もない問いを口にした私に、二人が一瞬、目を丸くする。
同時に顔を見合わせて一拍妙な間が空いたかと思ったら、油の切れたブリキの人形のようなぎこちない動きで、二人の視線が私を捉えた。心なしか顔が引きつっているような気もするけれど、私はそんなにおかしなことを尋ねただろうか。
首を傾げる私に、まず口を開いたのはレナートだった。
「……ミリアム。俺とオーレンは確かに友人ではあるが……何故、急に? 誰かから、何か聞いたのか? 例えば、テレシアやイーリスに……」
「いえ。その……お二人がとても仲がよさそうに見えたので、単純にご友人なのかなと思っただけで……テレシアさん達からは何も聞いていません、けど……?」
そもそも、私がオーレンの名を聞いたのもその姿を見たのも、午前中の出場者紹介の時が初めてで、テレシアからは、レナートと張り合っているらしいと言うことくらいしか聞いていない。
そんな説明のあと、決勝で二人が楽しそうに試合をする様子や、試合後に互いを称え合う姿を目にし、そして実際に会ってみて、決して二人がいがみ合うような関係ではないことが分かった程度だ。
イーリスに至っては、それこそ今日はまだ一度も会えていない。
「それはよかった」
「いやぁ、焦った……。ミリアムちゃん、俺らはただの友人。それだけ覚えてくれたらいいからね?」
「……はぁ」
物語の二人同様、目の前の二人も友人関係であることが分かって嬉しい筈なのに、何故か胸を撫で下ろして安堵すると言う二人の反応はどうにも私の腑に落ちず、間の抜けた相槌だけが私の口からぽろりと零れる。
王太子の側近である騎士と次期兵団長候補の王都の兵士と言う二人の立場上、彼らが友人関係にあることは公にしない方がいいことなのだろうか、とも一瞬思ったけれど、二人からすんなり肯定されたので、機密にするようなことではない筈だ。
では、何がそんなに二人の肝を冷やさせたのか。あれこれ考えてみても、私にはまるで見当がつかなかった。これはもう、子供の私には分からない大人の男性の事情でもあると思って、気にしない方がいいのだろうか。
私は喉の渇きを潤しながら、小声で言葉を交わし続ける二人の様子を眺めて、もう一度、先ほどとは反対の方向へと首を傾げた。
そんな私に、何やら笑いを堪えているらしいキリアンが身を寄せてくる。
「あの二人のことは、気にしなくていいからな?」
そう言いつつも、何がそんなにおかしいのか、とうとう堪え切れずに吹き出してしまう辺り、気にするなと言うのは無理な気がする。むしろ、余計に気になって仕方がない。
「いや、悪い。少し、思い出してしまって」
「あのお二人に、何かあったんですか?」
「……あったと言えばあったんだ――がっ!?」
キリアンが言いかけた瞬間、背後から伸びてきたレナートの手に襟首を掴まれ、キリアンの口から嗄れた烏のような声が飛び出る。
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