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12 裕介、ジェイドと一線を越える ♡
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「副騎士団長、これは一体……」
「発情期だろうな」
「ええ! 旦那にご自分の抑制剤を分けてやってたんでしょう?」
「俺の発情期に当てられたのか……まったく無茶をする奴だ」
「自分が不確かな方法を教えてしまったばっかりに……すみません」
「大方、ユースケが無謀に突っ走ったのだろう。お前を責めるつもりはない」
(感謝されたいから頑張ったわけじゃないけど……もう少し言い方があるだろ)
よかれと思った行動を一蹴され、裕介は悲しくなり、身体をくの字に丸めた。
「……ユースケ?」
ジェイドが裕介の顔を覗き込んでくる。精悍な面立ちに隈の浮き出た目元が痛々しい。
ジェイドも満身創痍なのだ。それなのに「もうしばらくの辛抱だ」と彼は裕介を気付うように優しく微笑む。
裕介を悪しざまに言ってのけたのは、ヨシュアが落ち込まないようにするためだ。そんな単純な言い回しに思い至らなかった自分に、気分が沈む。
ジェイドのそばにいたいのに、彼を傷つけてしまいそうだ。
「……こら、どこに行くつもりだ」
這って逃げようとする裕介をジェイドはふらつきながら抱え上げ、ベッドに横たえた。
床よりも柔らかい感触に抗えず、裕介はシーツに身を任せる。
「ヨシュア、しばらくこの部屋に、誰も寄せ付けるな」
「しかし、ジェイド様もお疲れでは……」
「心配は無用だ。ユースケのおかげで、発情期の発作は治まっているからな」
「……ですが」
太い眉を困ったようにしかめるヨシュアの肩を、ジェイドは安心させるよう、力強く叩いた。
「では始めるとしよう」
ヨシュアの背中を見送ったジェイドは、ベッドの端に腰掛けた。
ぼんやりとした意識下で、裕介が欲することはただ一つ。
(早くジェイドに触れたい)
激しい衝動が脳内を埋め尽くす。
ジェイドに見つめられ、裕介は微笑んだ。一方で、ジェイドは表情を強張らせる。
(まだ、具合、悪いのかな……)
ジェイドのほうへ指を伸ばすと、大きな手に指先を握りしめられた。
「ジェイドさん、気分は、どうですか……」
「貴殿のお陰で、なんとか正気は保てている」
「それは、よかった」
二言、三言話すだけで息が切れる。裕介はシーツの上で身体を丸めた。
寒い。熱い。
どんな体勢になっても苦しい。裕介は助けを求め、ジェイドを見上げた。意図を汲み取ったようなタイミングで、彼は裕介の頬に触れる。
いつもはあたたかい指先が、ひんやりと冷たい。
(あ……気持ちいい)
思わず裕介はジェイドの手のひらにすり寄った。
「貴殿は本当に、無防備で危なっかしい」
厳しい口調とは裏腹に、ジェイドは灰色の瞳に情欲を滲ませる。
その迫力に、裕介は思わず握りしめられたままの手を引っ込めようとした。
だが、ジェイドに指先を齧られ、身体が硬直する。
「ちょ、は、あ……」
甘噛みされ、舌先が肌を擽るたび、痺れが全身を駆け抜けていく。
(なんだか、ジェイドに触れられるだけで、おかしくなりそう)
αに抱き潰されたい。
身体の奥に、ジェイドの熱が欲しい。
Ωの本能がそう訴えている。
(抱かれたいって俺……、女の子みたいだ)
ジェイドは裕介の眼鏡を取り上げた。凛々しい顔が近づいてくる。
「ん……」
触れるだけのキスでも、酔いそうになる。
もっと彼を感じたくて誘うように唇を開くと、ジェイドは肉厚な舌を、裕介の腔内へと侵入させる。
「ん、ふ」
ジェイドの舌を一心不乱に追いかけ、せがむ。
裕介の舌にジェイドは負けじと舌を絡ませた。粘膜同士が擦れ合い、くちゅりと、卑猥な水音が部屋に響く。
ジェイドの唾液が甘く感じられ、もっと欲しくなる。裕介はジェイドのうなじを掻き寄せた。
「そんなに急がなくても、ゆっくり相手をしてやる」
ジェイドは鼻で笑い、裕介の唇に噛みつく。
「ふ、うぅん……」
絶え間なく与え続けられる甘い蜜を、裕介は喉を鳴らして飲み込んだ。
「はぁ……」
ジェイドとの間に、唾液の糸が細く繋がった。その糸が切れるのが名残惜しく、裕介は離れていく唇を追いかける。
「キスもいいが、これをなんとかしないとな」
ジェイドは裕介の腰からズボンを脱がし、下着越しに固くなった雄茎を撫でる。
「あ、あ、あ」
少し触れられただけで、裕介はびくびくと下肢を痙攣させた。すぐに達してしまいそうだ。
「出していいぞ」
掠れた低音が蕩けきった理性をさらに溶かしていく。裕介は言われるがまま、射精した。
「はあ、あ……」
全力疾走をした後のごとく、息が乱れる。
冷静さが戻りつつあるが、身体の奥では抗いきれない欲望が燻り続けていた。
(一度ヌケば充分満足できるはずなのに……。足りないってどういうことだよ)
淡白だと自負していただけに、裕介は熱に浮かされながらも、羞恥心を覚えた。
とりあえず、濡れた下着をジェイドから隠したいのだが……。
「あの、手を……」
止める暇もなく、ジェイドは裕介の下着を引きずりおろした。下着には、ベッタリと精液がこびりついている。
「!」
慌てて下着を元に戻そうとするも、ジェイドが遮った。力比べをして勝てるはずもなく、あっさりと下着を取られてしまう。
「このままでは気持ち悪いだろう」
「そ、そうだけど……」
恥ずかしいものは恥ずかしい。
膝を折り曲げ下腹部をジェイドの視界から隠した。
すると彼はベッドに乗り上げ、裕介の膝頭にそれぞれ手を置く。
(まさか……)
予想に違わず、ジェイドは裕介の両脚を大きく開いた。その拍子に、股関節がパキリと小さく軋む。
急所を晒したあられもない己の姿に、裕介は言葉を失った。
「ちょっと、これは、恥ずかしい……」
「恥じている場合ではない。お互い発情期を治めるにはヤり続けるしかないんだからな」
ヤる、とは……疑問が渦を巻射ている最中に、長い指が裕介の陰茎を包み込む。え、と思うまもなく、ゆるく扱かれた。
「や、あ、あ」
自慰とは比べものにならない快感が脳を焼く。
ぐちゅ、にゅちゅと粘ついた音に煽られ、喘ぎ声がとまらない。
まさか自分が女のように嬌声をあげることになるなんて。
男の感じる声にジェイドは呆れているだろうと彼を窺えば、裕介から目をそらさず、悩ましげに眉をひそめていた。
(俺に、興奮している……?)
多少治まったとはいえ、ジェイドも発情期真っ只中なのだ。
そのせいでΩである自分に欲情するのはしょうがないことである。
太腿にジェイドの固くなった一物が当たっていても、そう、不可抗力で……。
(俺も男に触られて気持ち悪いって思わないもんな。お互い様、だよな)
そればかりか布越しに押しつけられるそれが欲しくて、腰が揺れる。
これは事故、これは事故、と首を振って混乱を鎮めようとしていたら、頭上から不機嫌な声が降ってきた。
「ずいぶん余裕そうだな」
「そんなことは……ひっ」
ジェイドは屹立から手を離し、裕介の後孔を指先で引っ掻いた。窄まりのシワを何度も突かれ、怪しい疼きが尻の奥から這い上がってくる。
「まだ開花していないのか……」
ジェイドはズボンを下着ごと脱ぎ捨てた。勢いよく飛び出した肉槍に裕介は息をのむ。
(お、大きい……)
ジェイドの息子は肌の白さに反して赤黒く、竿にはくっきりと血管が浮き出ている。
鈴口からは透明な先走りが輝いていた。
裕介の両膝をすくい上げると、ジェイドは亀頭を秘所に押しつける。
「え、正気か……」
「このまま挿れはしないから安心しろ」
ジェイドは何度も自身の先端を後孔に擦りつけた。
男の尻は出口専用だ。
そんなことをしても挿れられるわけがない――。
「……は?」
常識を打ち砕くごとく、尻の穴が濡れる気配がした。
裕介は思わず尻の穴に手を這わせる。なんの抵抗もなく、後孔に指の先が入り、ぎょっとした。
(待て待て待て。え、女の子みたいに濡れてる……? なんで)
「αの体液には催淫効果があると聞いていたが。試してみるものだな」
ジェイドは満足げな笑みを浮かべた。
紳士的な笑みではない。裕介が戸惑っているのを嬉々として楽しんでいる、捕食者の顔だ。
細く引き絞られた瞳孔に、裕介は射すくめられた。
「これで、心置きなく貴殿を味わえる」
「え、でも、ちょっと待って……」
「先ほどから待てとばかり言っているな。下の口はこれほど喜んでいるというのに」
ジェイドは性急に裕介のアヌスに亀頭を押し込んだ。カリの部分は飲み込めたが、濡れたばかりの窄まりは固く、肉筒はそこから先に進もうとする怒張を拒んだ。
ジェイドは裕介に覆い被さり、腰を小刻みに振って奥へ侵入しようと試みる。
裕介はたまらず「ジェイドさん、痛い」と訴えた。
するとジェイドは裕介をなだめるように、キスの雨を降らせる。唾液を交換し合っていると、硬いペニスを受け入れようと肉壁がゆっくりと蜜を吐き出した。
(痛いのに気持ちいいって……俺は変態か)
ジェイドは身体を揺すりながら、裕介の首筋に唇を滑らせる。ネックガードを甘噛みした後、周囲をきつく吸われた。
耳元で湿った音が鳴る。裕介はたまらず「あんっ」と掠れた嬌声をあげた。
(うわ、また変な声出た)
思わず口元を手のひらで覆い隠す。
ジェイドはわざとらしく大きなリップ音を鳴らし、首筋に余すことなく鬱血痕を残した。
そのたびに腹の奥がきゅんと疼き、裕介は目尻から涙を流す。
「泣くほどいいのか?」
涙を舐め取りながら、ジェイドが囁く。
笑いを含んだ声にすら感じてしまう。
ジェイドの愛撫に翻弄されているのが照れ臭く、裕介は手のひらで顔を覆い隠した。
「そんなことはありません」
「じゃあ胸の方が好きなのか」
「は? そういう意味じゃあ……」
否定しようとするも、ジェイドは裕介のシャツを釦ごと引きちぎり、露わになった薄い胸板に舌を這わせた。
触れられる前から、乳首は桃色に染まり、ツンと立ち上がっている。
「物欲しそうだな」
ジェイドは膨れた小さな尖りを口に含んだ。舌先で突かれ、乳輪の周囲を舐めしゃぶられる。
「あ、はう」
熱い舌が傍若無人に這い回ればまわるほど、下腹が甘く疼いた。連動してアヌスが息をするように収縮する。
裕介は腰を左右に揺すり、甘痒さをやり過ごそうとした。
しかし、ジェイドは肉槍を入り口付近から一気に突き入れる。
「ひゃっ!」
裕介は裏返った悲鳴をあげた。
パズルのピースがピタリと嵌まったがごとく、肉壺にジェイドの猛りがすべて収まっている。
ジェイドは身体を起こし、裕介の両膝に手を添えると肩に担いだ。
細いとはいえ、裕介は成人男性である。大の男を意のままにするジェイドに、恐怖を覚えた。
ジェイドは腰を大きく前後に振り、裕介を蹂躙する。
「ひゃ、あ、あ、あ」
肉と肉がぶつかりあう、どちゅどちゅと水音が混じった音にあわせて、裕介は喘ぎ声を漏らす。静かな部屋に淫猥な音が満ちた。
「は、あ、あ、ふう」
肉壁が擦られる衝撃に、目の前が真っ白になる。
意識が飛びそうになるほど、気持ちいいが、内側を犯されているだけでは、射精できない。
半ば勃起した肉竿に手を伸ばしたが、ジェイドに手首を拘束され、ベッドに縫い付けられる。
「な、んで」
「Ωは、胎の中で達するほうが気持ちいいらしい」
「いみ、わかんない」
ベッドが壊れそうな勢いで、激しい抽挿を繰り返される。
「は、あ、あん、あう……」
ジェイドの肉杭から精子を搾り取ろうと、Ωに目覚めたばかりの雄膣は貪欲に蠢く。
硬い剛直が柔らかな肉壁を擦り上げるたび、喉から甘い悲鳴が漏れた。
(気持ちいい、けど、このままじゃ駄目な気が……)
「く、出すぞ……」
「え、は、あん!」
ジェイドは低く唸ると、一際深く裕介を串刺しにした。下生え同士が重なり合うほどに密着する。
ジェイドが動きを止めた、直後。
胎の奥に熱い迸りが放たれる。
(ジェイドさんが、俺のなかで射精してる……)
きつく抱きしめられると、ジェイドのひきしまった腹筋にペニスが擦れ、裕介はつい射精してしまった。
白いシャツと大理石のごとく輝く肌が、白濁まみれである。
裕介は顔を青ざめさせた。
「ご、ごめんなさい」
「今さらだろ」
ジェイドは裕介の頬に手を滑らせた。灰色の瞳には幾分か理性が戻っている。
しかし。
「あの、ジェイドさん」
「なんだ」
繋がったままの下肢を軽く揺すりながら、ジェイドはシャツを脱ぎ捨てる。
「えっと、俺の発情期はそこまでひどくなさそうなので、もう充分ですよ……」
「そうか」
「なので、これ以上は」
オールバックにした銀髪が乱れ、額に垂れた。前髪を掻き上げ、雄の魅力をまき散らすジェイドを直視できず、裕介は顔をそらす。
本音を言えば、まだ物足りない。
項垂れていた裕介の息子も、ふたたび兆し始めていた。
もっと激しく胎のなかを犯してほしい。
もっと強靱な精子を胎に注いで欲しい。
(ってこれじゃあ、セックス覚え立てのガキみたいだよな)
「発情期は恥ずべきことではない。特殊性に目覚めた者にはどうすることもできない衝動だ。身を任せられる状況であれば拒む必要はない」
「でも」
「言い訳は聞かん」
ジェイドにキスをされ、言葉を封じられる。
「……はぁ」
蕩けきった顔でジェイドを見上げると、
「その顔ではやめてはやれないな」
「へ……?」
ジェイドは濡れた裕介の唇を指の腹で拭い、意地悪く微笑んだ。
「発情期だろうな」
「ええ! 旦那にご自分の抑制剤を分けてやってたんでしょう?」
「俺の発情期に当てられたのか……まったく無茶をする奴だ」
「自分が不確かな方法を教えてしまったばっかりに……すみません」
「大方、ユースケが無謀に突っ走ったのだろう。お前を責めるつもりはない」
(感謝されたいから頑張ったわけじゃないけど……もう少し言い方があるだろ)
よかれと思った行動を一蹴され、裕介は悲しくなり、身体をくの字に丸めた。
「……ユースケ?」
ジェイドが裕介の顔を覗き込んでくる。精悍な面立ちに隈の浮き出た目元が痛々しい。
ジェイドも満身創痍なのだ。それなのに「もうしばらくの辛抱だ」と彼は裕介を気付うように優しく微笑む。
裕介を悪しざまに言ってのけたのは、ヨシュアが落ち込まないようにするためだ。そんな単純な言い回しに思い至らなかった自分に、気分が沈む。
ジェイドのそばにいたいのに、彼を傷つけてしまいそうだ。
「……こら、どこに行くつもりだ」
這って逃げようとする裕介をジェイドはふらつきながら抱え上げ、ベッドに横たえた。
床よりも柔らかい感触に抗えず、裕介はシーツに身を任せる。
「ヨシュア、しばらくこの部屋に、誰も寄せ付けるな」
「しかし、ジェイド様もお疲れでは……」
「心配は無用だ。ユースケのおかげで、発情期の発作は治まっているからな」
「……ですが」
太い眉を困ったようにしかめるヨシュアの肩を、ジェイドは安心させるよう、力強く叩いた。
「では始めるとしよう」
ヨシュアの背中を見送ったジェイドは、ベッドの端に腰掛けた。
ぼんやりとした意識下で、裕介が欲することはただ一つ。
(早くジェイドに触れたい)
激しい衝動が脳内を埋め尽くす。
ジェイドに見つめられ、裕介は微笑んだ。一方で、ジェイドは表情を強張らせる。
(まだ、具合、悪いのかな……)
ジェイドのほうへ指を伸ばすと、大きな手に指先を握りしめられた。
「ジェイドさん、気分は、どうですか……」
「貴殿のお陰で、なんとか正気は保てている」
「それは、よかった」
二言、三言話すだけで息が切れる。裕介はシーツの上で身体を丸めた。
寒い。熱い。
どんな体勢になっても苦しい。裕介は助けを求め、ジェイドを見上げた。意図を汲み取ったようなタイミングで、彼は裕介の頬に触れる。
いつもはあたたかい指先が、ひんやりと冷たい。
(あ……気持ちいい)
思わず裕介はジェイドの手のひらにすり寄った。
「貴殿は本当に、無防備で危なっかしい」
厳しい口調とは裏腹に、ジェイドは灰色の瞳に情欲を滲ませる。
その迫力に、裕介は思わず握りしめられたままの手を引っ込めようとした。
だが、ジェイドに指先を齧られ、身体が硬直する。
「ちょ、は、あ……」
甘噛みされ、舌先が肌を擽るたび、痺れが全身を駆け抜けていく。
(なんだか、ジェイドに触れられるだけで、おかしくなりそう)
αに抱き潰されたい。
身体の奥に、ジェイドの熱が欲しい。
Ωの本能がそう訴えている。
(抱かれたいって俺……、女の子みたいだ)
ジェイドは裕介の眼鏡を取り上げた。凛々しい顔が近づいてくる。
「ん……」
触れるだけのキスでも、酔いそうになる。
もっと彼を感じたくて誘うように唇を開くと、ジェイドは肉厚な舌を、裕介の腔内へと侵入させる。
「ん、ふ」
ジェイドの舌を一心不乱に追いかけ、せがむ。
裕介の舌にジェイドは負けじと舌を絡ませた。粘膜同士が擦れ合い、くちゅりと、卑猥な水音が部屋に響く。
ジェイドの唾液が甘く感じられ、もっと欲しくなる。裕介はジェイドのうなじを掻き寄せた。
「そんなに急がなくても、ゆっくり相手をしてやる」
ジェイドは鼻で笑い、裕介の唇に噛みつく。
「ふ、うぅん……」
絶え間なく与え続けられる甘い蜜を、裕介は喉を鳴らして飲み込んだ。
「はぁ……」
ジェイドとの間に、唾液の糸が細く繋がった。その糸が切れるのが名残惜しく、裕介は離れていく唇を追いかける。
「キスもいいが、これをなんとかしないとな」
ジェイドは裕介の腰からズボンを脱がし、下着越しに固くなった雄茎を撫でる。
「あ、あ、あ」
少し触れられただけで、裕介はびくびくと下肢を痙攣させた。すぐに達してしまいそうだ。
「出していいぞ」
掠れた低音が蕩けきった理性をさらに溶かしていく。裕介は言われるがまま、射精した。
「はあ、あ……」
全力疾走をした後のごとく、息が乱れる。
冷静さが戻りつつあるが、身体の奥では抗いきれない欲望が燻り続けていた。
(一度ヌケば充分満足できるはずなのに……。足りないってどういうことだよ)
淡白だと自負していただけに、裕介は熱に浮かされながらも、羞恥心を覚えた。
とりあえず、濡れた下着をジェイドから隠したいのだが……。
「あの、手を……」
止める暇もなく、ジェイドは裕介の下着を引きずりおろした。下着には、ベッタリと精液がこびりついている。
「!」
慌てて下着を元に戻そうとするも、ジェイドが遮った。力比べをして勝てるはずもなく、あっさりと下着を取られてしまう。
「このままでは気持ち悪いだろう」
「そ、そうだけど……」
恥ずかしいものは恥ずかしい。
膝を折り曲げ下腹部をジェイドの視界から隠した。
すると彼はベッドに乗り上げ、裕介の膝頭にそれぞれ手を置く。
(まさか……)
予想に違わず、ジェイドは裕介の両脚を大きく開いた。その拍子に、股関節がパキリと小さく軋む。
急所を晒したあられもない己の姿に、裕介は言葉を失った。
「ちょっと、これは、恥ずかしい……」
「恥じている場合ではない。お互い発情期を治めるにはヤり続けるしかないんだからな」
ヤる、とは……疑問が渦を巻射ている最中に、長い指が裕介の陰茎を包み込む。え、と思うまもなく、ゆるく扱かれた。
「や、あ、あ」
自慰とは比べものにならない快感が脳を焼く。
ぐちゅ、にゅちゅと粘ついた音に煽られ、喘ぎ声がとまらない。
まさか自分が女のように嬌声をあげることになるなんて。
男の感じる声にジェイドは呆れているだろうと彼を窺えば、裕介から目をそらさず、悩ましげに眉をひそめていた。
(俺に、興奮している……?)
多少治まったとはいえ、ジェイドも発情期真っ只中なのだ。
そのせいでΩである自分に欲情するのはしょうがないことである。
太腿にジェイドの固くなった一物が当たっていても、そう、不可抗力で……。
(俺も男に触られて気持ち悪いって思わないもんな。お互い様、だよな)
そればかりか布越しに押しつけられるそれが欲しくて、腰が揺れる。
これは事故、これは事故、と首を振って混乱を鎮めようとしていたら、頭上から不機嫌な声が降ってきた。
「ずいぶん余裕そうだな」
「そんなことは……ひっ」
ジェイドは屹立から手を離し、裕介の後孔を指先で引っ掻いた。窄まりのシワを何度も突かれ、怪しい疼きが尻の奥から這い上がってくる。
「まだ開花していないのか……」
ジェイドはズボンを下着ごと脱ぎ捨てた。勢いよく飛び出した肉槍に裕介は息をのむ。
(お、大きい……)
ジェイドの息子は肌の白さに反して赤黒く、竿にはくっきりと血管が浮き出ている。
鈴口からは透明な先走りが輝いていた。
裕介の両膝をすくい上げると、ジェイドは亀頭を秘所に押しつける。
「え、正気か……」
「このまま挿れはしないから安心しろ」
ジェイドは何度も自身の先端を後孔に擦りつけた。
男の尻は出口専用だ。
そんなことをしても挿れられるわけがない――。
「……は?」
常識を打ち砕くごとく、尻の穴が濡れる気配がした。
裕介は思わず尻の穴に手を這わせる。なんの抵抗もなく、後孔に指の先が入り、ぎょっとした。
(待て待て待て。え、女の子みたいに濡れてる……? なんで)
「αの体液には催淫効果があると聞いていたが。試してみるものだな」
ジェイドは満足げな笑みを浮かべた。
紳士的な笑みではない。裕介が戸惑っているのを嬉々として楽しんでいる、捕食者の顔だ。
細く引き絞られた瞳孔に、裕介は射すくめられた。
「これで、心置きなく貴殿を味わえる」
「え、でも、ちょっと待って……」
「先ほどから待てとばかり言っているな。下の口はこれほど喜んでいるというのに」
ジェイドは性急に裕介のアヌスに亀頭を押し込んだ。カリの部分は飲み込めたが、濡れたばかりの窄まりは固く、肉筒はそこから先に進もうとする怒張を拒んだ。
ジェイドは裕介に覆い被さり、腰を小刻みに振って奥へ侵入しようと試みる。
裕介はたまらず「ジェイドさん、痛い」と訴えた。
するとジェイドは裕介をなだめるように、キスの雨を降らせる。唾液を交換し合っていると、硬いペニスを受け入れようと肉壁がゆっくりと蜜を吐き出した。
(痛いのに気持ちいいって……俺は変態か)
ジェイドは身体を揺すりながら、裕介の首筋に唇を滑らせる。ネックガードを甘噛みした後、周囲をきつく吸われた。
耳元で湿った音が鳴る。裕介はたまらず「あんっ」と掠れた嬌声をあげた。
(うわ、また変な声出た)
思わず口元を手のひらで覆い隠す。
ジェイドはわざとらしく大きなリップ音を鳴らし、首筋に余すことなく鬱血痕を残した。
そのたびに腹の奥がきゅんと疼き、裕介は目尻から涙を流す。
「泣くほどいいのか?」
涙を舐め取りながら、ジェイドが囁く。
笑いを含んだ声にすら感じてしまう。
ジェイドの愛撫に翻弄されているのが照れ臭く、裕介は手のひらで顔を覆い隠した。
「そんなことはありません」
「じゃあ胸の方が好きなのか」
「は? そういう意味じゃあ……」
否定しようとするも、ジェイドは裕介のシャツを釦ごと引きちぎり、露わになった薄い胸板に舌を這わせた。
触れられる前から、乳首は桃色に染まり、ツンと立ち上がっている。
「物欲しそうだな」
ジェイドは膨れた小さな尖りを口に含んだ。舌先で突かれ、乳輪の周囲を舐めしゃぶられる。
「あ、はう」
熱い舌が傍若無人に這い回ればまわるほど、下腹が甘く疼いた。連動してアヌスが息をするように収縮する。
裕介は腰を左右に揺すり、甘痒さをやり過ごそうとした。
しかし、ジェイドは肉槍を入り口付近から一気に突き入れる。
「ひゃっ!」
裕介は裏返った悲鳴をあげた。
パズルのピースがピタリと嵌まったがごとく、肉壺にジェイドの猛りがすべて収まっている。
ジェイドは身体を起こし、裕介の両膝に手を添えると肩に担いだ。
細いとはいえ、裕介は成人男性である。大の男を意のままにするジェイドに、恐怖を覚えた。
ジェイドは腰を大きく前後に振り、裕介を蹂躙する。
「ひゃ、あ、あ、あ」
肉と肉がぶつかりあう、どちゅどちゅと水音が混じった音にあわせて、裕介は喘ぎ声を漏らす。静かな部屋に淫猥な音が満ちた。
「は、あ、あ、ふう」
肉壁が擦られる衝撃に、目の前が真っ白になる。
意識が飛びそうになるほど、気持ちいいが、内側を犯されているだけでは、射精できない。
半ば勃起した肉竿に手を伸ばしたが、ジェイドに手首を拘束され、ベッドに縫い付けられる。
「な、んで」
「Ωは、胎の中で達するほうが気持ちいいらしい」
「いみ、わかんない」
ベッドが壊れそうな勢いで、激しい抽挿を繰り返される。
「は、あ、あん、あう……」
ジェイドの肉杭から精子を搾り取ろうと、Ωに目覚めたばかりの雄膣は貪欲に蠢く。
硬い剛直が柔らかな肉壁を擦り上げるたび、喉から甘い悲鳴が漏れた。
(気持ちいい、けど、このままじゃ駄目な気が……)
「く、出すぞ……」
「え、は、あん!」
ジェイドは低く唸ると、一際深く裕介を串刺しにした。下生え同士が重なり合うほどに密着する。
ジェイドが動きを止めた、直後。
胎の奥に熱い迸りが放たれる。
(ジェイドさんが、俺のなかで射精してる……)
きつく抱きしめられると、ジェイドのひきしまった腹筋にペニスが擦れ、裕介はつい射精してしまった。
白いシャツと大理石のごとく輝く肌が、白濁まみれである。
裕介は顔を青ざめさせた。
「ご、ごめんなさい」
「今さらだろ」
ジェイドは裕介の頬に手を滑らせた。灰色の瞳には幾分か理性が戻っている。
しかし。
「あの、ジェイドさん」
「なんだ」
繋がったままの下肢を軽く揺すりながら、ジェイドはシャツを脱ぎ捨てる。
「えっと、俺の発情期はそこまでひどくなさそうなので、もう充分ですよ……」
「そうか」
「なので、これ以上は」
オールバックにした銀髪が乱れ、額に垂れた。前髪を掻き上げ、雄の魅力をまき散らすジェイドを直視できず、裕介は顔をそらす。
本音を言えば、まだ物足りない。
項垂れていた裕介の息子も、ふたたび兆し始めていた。
もっと激しく胎のなかを犯してほしい。
もっと強靱な精子を胎に注いで欲しい。
(ってこれじゃあ、セックス覚え立てのガキみたいだよな)
「発情期は恥ずべきことではない。特殊性に目覚めた者にはどうすることもできない衝動だ。身を任せられる状況であれば拒む必要はない」
「でも」
「言い訳は聞かん」
ジェイドにキスをされ、言葉を封じられる。
「……はぁ」
蕩けきった顔でジェイドを見上げると、
「その顔ではやめてはやれないな」
「へ……?」
ジェイドは濡れた裕介の唇を指の腹で拭い、意地悪く微笑んだ。
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転生×召喚
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BL
大加賀秋都は生徒会メンバーに断罪されている最中に生徒会メンバーたちと異世界召喚されてしまった。
周りは生徒会メンバーの愛し子を聖女だとはやし立てている。
これはオマケの子イベント?!
既に転生して自分の立ち位置をぼんやり把握していた秋都はその場から逃げて、悠々自適な農村ライフを送ることにした―…。
主人公総受けです、ご注意ください。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)
てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。
言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち―――
大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡)
20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!
【完結】売れ残りのΩですが隠していた××をαの上司に見られてから妙に優しくされててつらい。
天城
BL
ディランは売れ残りのΩだ。貴族のΩは十代には嫁入り先が決まるが、儚さの欠片もない逞しい身体のせいか完全に婚期を逃していた。
しかもディランの身体には秘密がある。陥没乳首なのである。恥ずかしくて大浴場にもいけないディランは、結婚は諦めていた。
しかしαの上司である騎士団長のエリオットに事故で陥没乳首を見られてから、彼はとても優しく接してくれる。始めは気まずかったものの、穏やかで壮年の色気たっぷりのエリオットの声を聞いていると、落ち着かないようなむずがゆいような、不思議な感じがするのだった。
【攻】騎士団長のα・巨体でマッチョの美形(黒髪黒目の40代)×【受】売れ残りΩ副団長・細マッチョ(陥没乳首の30代・銀髪紫目・無自覚美形)色事に慣れない陥没乳首Ωを、あの手この手で囲い込み、執拗な乳首フェラで籠絡させる独占欲つよつよαによる捕獲作戦。全3話+番外2話
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
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