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【六男】反抗的幼馴染 前編
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個性的な息子が増えるにつれ、奥様の教育方針は「毎日ご飯を食べてくれたらそれでいい」にシフトしたようだ。
長男の見合いや三男の飛び級、双子の学校からの呼び出しなどで忙殺され、六男・ハルにあまり時間を割けなかったと奥様は悔やんでいるようだったが…。
******
「最近母上がめっちゃ構ってきてめんどくさいんだよね」
屋敷の裏庭の奥の奥、木陰に紛れた小さな四阿の中。
ふぃー、と細く煙を吐き出しながらハルは愚痴った。砂漠色の髪が風に吹かれてさらさら踊る。慣れた手つきで煙草を揉み消すと、隣でアイスを食べているシュリーに顔を向けた。
「ね、ひとくちちょーだい」
シュリーはバニラ味とチョコ味を少しずつスプーンに取って、ハルの口に入れてあげた。雛にご飯をあげる親鳥の気持ちだ。うまうまと満足げなハルを見て、シュリーは溜め息をついた。
「面倒なんて言ったら奥様傷つきますよ」
「その責め方はよくないなぁ。俺だって母上を嫌いな訳じゃないし」
親のいないシュリーには良くわからないが、メイド長が一時間おきに話しかけてくる感じだろうか。それは確かにやや面倒くさい。しかも愛情だって知ってるから反抗できない…といったところか。
また新しい煙草に火をつけようとしていたハルを押し止め、シュリーはアイスのカップをテーブルに置いた。
「では、気分転換に行きましょう、ハル様」
******
「うわっ!超久し振り!わーっ!つめてー!」
四阿から少し歩いた所に、大人の腰くらいまでの深さの池がある。底から水が湧き出ていて、今くらいの時期─夏の昼下がり─以外に入ろうとするのはなかなか勇気がいる冷たさだ。
ハルは靴と靴下だけ脱ぐと、躊躇せずざぶざぶ池の中に入っていった。べしゃんと頭から水中に突っ込み、全身ずぶ濡れになって煌めく髪をかきあげる。けらけら笑いながらシャツのボタンを外していく。
シュリーが池の淵にしゃがんで水に触れながら、烏の行水かな、と思って見ていると、上裸になったハルが焦りながら戻ってきた。
「ね、シュリー、やばいやばい、煙草シャツに入れっぱだったわ、えー、乾かしてもダメかな、ね、ちょっと見て、俺手ぇ濡れてるから」
小さなシガレットケースを受け取って出してみると、まあ見事に全滅だった。
「御愁傷様です」
「ああー」
さっきまでの陽気さはどこへやら、しょんぼりとしてしまったハルを面白く思う。お金持ちなんだから、幾らでも買えばいいのに。
もうだめだ、と言いながら、池から上がったハルが地面に大の字になる。貴族のくせに、草や土まみれになっても平気らしい。そういえば、昔二人でここで遊んで、泥まみれになって帰ったりしたな。
「ハル様、風邪引いちゃいますよ」
「…」
ハルは不機嫌そうにシュリーを見た。
「お前ねぇ、前々から思ってたけど、小言が多いよ」
「そうですか?」
「そうだよ。シュリーちゃんは俺のオカーサマですか?同い年のくせに」
シュリーは目をぱちぱちさせた。なかなか…予想外だ。落ち着いてる、しっかりしてると褒められてきたシュリーにとって、ふわふわしてるハルは同い年とはいえ、目を離せない存在だったのだ。
シュリーは難しい顔をしながら俯いた。その瞳がちょっぴり潤むのを見て、ハルは青くなって身を起こした。彼女の細い肩に触れながら、顔を覗き込む。
「ご、ごめんて、シュリー、泣かないで…」
「泣いてません」
「嘘つくなよ」
「ついてません」
「強情張り」
「張ってません」
「…」
「…」
「…」
「…すみません」
「いーよ別に」
ぷいっとハルがそっぽを向く。こんな時、どうすればいいのかシュリーにはわからない。エリなら笑い飛ばすだろう。バイオレットなら気にしないし、ララなら堂々と喧嘩する。シュリーはただ目を伏せて、己の指先を見つめる事しか…。
「ハル様は私がお嫌いですか」
「は?なんでそうなるの」
「…すみません」
「謝るくらいなら聞かないでよ。嫌いだったら一緒に遊ぶわけないじゃん」
「なら何故、私は夜に呼んでいただけないのですか」
ハルが蜂蜜色の瞳を見開く。シュリーは言って早々後悔していた。
身分が違うとはいえ、幼い頃から一緒に育ってきた仲なのに、シュリーは一度も彼の寝室に呼ばれたことがない。それは彼女にとって、小さな、でも深い深い悩みだった。
が、そんなのはシュリーが意見していいことではない。どのメイドを抱こうが、それはご兄弟の自由だ。
「申し訳ありません。お許しください」
早口で謝りながら立ち上がる。場を辞そうとハルに背を向けた途端──背後から力強く、抱きしめられた。
「待って。何?シュリー」
ずっと一緒に遊んでいた男の子は、いつの間にか背が高くなっていて。シュリーを腕の中に囲いながら、身を屈めて彼女の耳に囁く。
「ね、シュリーは、俺と、したいの?」
「…」
シュリーの視線が泳ぐ。唇は引き結ばれたままだが、その身体が熱を持ち始め、耳がみる間に真っ赤に染まった。ハルは目を細め、低い声で続けた。
「…俺さぁ、いっつもシュリーに注意されてばっかで、だから、セッ…せ…、…えっちくらい、ちゃんとできるように、なってから、って、思ってたんだ、けど…」
ああ、駄目。こんな、耳元で囁かれているだけで、腰が砕けそうだ。全身が熱く、潤んでくる。
「…ごめん、今、もう我慢できない」
シュリーのお尻に、硬くて熱いものが擦り付けられた。躊躇いながら振り返ったシュリーの、滑らかな輪郭を指でなぞり、ハルは艶々の唇にむしゃぶりついた。
******
「ん、ん、はぁっ、んぶ、っ」
んぷぁ、と唾液の糸を引きながら離れた唇が、また、深く深く重ねられる。
ハルがこんなにキスが好きだとは知らなかった。
繋がった腰をゆっくり動かしながら、えっちなキスを繰り返す。夏の午後の穏やかな自然のなかに、リップ音が響く。
池の側の大木のうろ。昔秘密基地にしていたそこで、大人になった二人は熱い肌を重ねていた。
ぱちゅっ…ぱちゅっ…ぱちゅっ…ぱちゅっ…ぱちゅっ
「シュリー、シュリー、ねぇ、痛くない?大丈夫?」
「あ、っあん、きもちいい、奥、まで…っきもちい、です…、っああ、」
膣の壁をじゅるじゅる擦るような優しいピストンだが、余計に彼のモノのかたちがはっきりわかってしまって、シュリーは身体がびくびく震えるのを止められない。
長男の見合いや三男の飛び級、双子の学校からの呼び出しなどで忙殺され、六男・ハルにあまり時間を割けなかったと奥様は悔やんでいるようだったが…。
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「最近母上がめっちゃ構ってきてめんどくさいんだよね」
屋敷の裏庭の奥の奥、木陰に紛れた小さな四阿の中。
ふぃー、と細く煙を吐き出しながらハルは愚痴った。砂漠色の髪が風に吹かれてさらさら踊る。慣れた手つきで煙草を揉み消すと、隣でアイスを食べているシュリーに顔を向けた。
「ね、ひとくちちょーだい」
シュリーはバニラ味とチョコ味を少しずつスプーンに取って、ハルの口に入れてあげた。雛にご飯をあげる親鳥の気持ちだ。うまうまと満足げなハルを見て、シュリーは溜め息をついた。
「面倒なんて言ったら奥様傷つきますよ」
「その責め方はよくないなぁ。俺だって母上を嫌いな訳じゃないし」
親のいないシュリーには良くわからないが、メイド長が一時間おきに話しかけてくる感じだろうか。それは確かにやや面倒くさい。しかも愛情だって知ってるから反抗できない…といったところか。
また新しい煙草に火をつけようとしていたハルを押し止め、シュリーはアイスのカップをテーブルに置いた。
「では、気分転換に行きましょう、ハル様」
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「うわっ!超久し振り!わーっ!つめてー!」
四阿から少し歩いた所に、大人の腰くらいまでの深さの池がある。底から水が湧き出ていて、今くらいの時期─夏の昼下がり─以外に入ろうとするのはなかなか勇気がいる冷たさだ。
ハルは靴と靴下だけ脱ぐと、躊躇せずざぶざぶ池の中に入っていった。べしゃんと頭から水中に突っ込み、全身ずぶ濡れになって煌めく髪をかきあげる。けらけら笑いながらシャツのボタンを外していく。
シュリーが池の淵にしゃがんで水に触れながら、烏の行水かな、と思って見ていると、上裸になったハルが焦りながら戻ってきた。
「ね、シュリー、やばいやばい、煙草シャツに入れっぱだったわ、えー、乾かしてもダメかな、ね、ちょっと見て、俺手ぇ濡れてるから」
小さなシガレットケースを受け取って出してみると、まあ見事に全滅だった。
「御愁傷様です」
「ああー」
さっきまでの陽気さはどこへやら、しょんぼりとしてしまったハルを面白く思う。お金持ちなんだから、幾らでも買えばいいのに。
もうだめだ、と言いながら、池から上がったハルが地面に大の字になる。貴族のくせに、草や土まみれになっても平気らしい。そういえば、昔二人でここで遊んで、泥まみれになって帰ったりしたな。
「ハル様、風邪引いちゃいますよ」
「…」
ハルは不機嫌そうにシュリーを見た。
「お前ねぇ、前々から思ってたけど、小言が多いよ」
「そうですか?」
「そうだよ。シュリーちゃんは俺のオカーサマですか?同い年のくせに」
シュリーは目をぱちぱちさせた。なかなか…予想外だ。落ち着いてる、しっかりしてると褒められてきたシュリーにとって、ふわふわしてるハルは同い年とはいえ、目を離せない存在だったのだ。
シュリーは難しい顔をしながら俯いた。その瞳がちょっぴり潤むのを見て、ハルは青くなって身を起こした。彼女の細い肩に触れながら、顔を覗き込む。
「ご、ごめんて、シュリー、泣かないで…」
「泣いてません」
「嘘つくなよ」
「ついてません」
「強情張り」
「張ってません」
「…」
「…」
「…」
「…すみません」
「いーよ別に」
ぷいっとハルがそっぽを向く。こんな時、どうすればいいのかシュリーにはわからない。エリなら笑い飛ばすだろう。バイオレットなら気にしないし、ララなら堂々と喧嘩する。シュリーはただ目を伏せて、己の指先を見つめる事しか…。
「ハル様は私がお嫌いですか」
「は?なんでそうなるの」
「…すみません」
「謝るくらいなら聞かないでよ。嫌いだったら一緒に遊ぶわけないじゃん」
「なら何故、私は夜に呼んでいただけないのですか」
ハルが蜂蜜色の瞳を見開く。シュリーは言って早々後悔していた。
身分が違うとはいえ、幼い頃から一緒に育ってきた仲なのに、シュリーは一度も彼の寝室に呼ばれたことがない。それは彼女にとって、小さな、でも深い深い悩みだった。
が、そんなのはシュリーが意見していいことではない。どのメイドを抱こうが、それはご兄弟の自由だ。
「申し訳ありません。お許しください」
早口で謝りながら立ち上がる。場を辞そうとハルに背を向けた途端──背後から力強く、抱きしめられた。
「待って。何?シュリー」
ずっと一緒に遊んでいた男の子は、いつの間にか背が高くなっていて。シュリーを腕の中に囲いながら、身を屈めて彼女の耳に囁く。
「ね、シュリーは、俺と、したいの?」
「…」
シュリーの視線が泳ぐ。唇は引き結ばれたままだが、その身体が熱を持ち始め、耳がみる間に真っ赤に染まった。ハルは目を細め、低い声で続けた。
「…俺さぁ、いっつもシュリーに注意されてばっかで、だから、セッ…せ…、…えっちくらい、ちゃんとできるように、なってから、って、思ってたんだ、けど…」
ああ、駄目。こんな、耳元で囁かれているだけで、腰が砕けそうだ。全身が熱く、潤んでくる。
「…ごめん、今、もう我慢できない」
シュリーのお尻に、硬くて熱いものが擦り付けられた。躊躇いながら振り返ったシュリーの、滑らかな輪郭を指でなぞり、ハルは艶々の唇にむしゃぶりついた。
******
「ん、ん、はぁっ、んぶ、っ」
んぷぁ、と唾液の糸を引きながら離れた唇が、また、深く深く重ねられる。
ハルがこんなにキスが好きだとは知らなかった。
繋がった腰をゆっくり動かしながら、えっちなキスを繰り返す。夏の午後の穏やかな自然のなかに、リップ音が響く。
池の側の大木のうろ。昔秘密基地にしていたそこで、大人になった二人は熱い肌を重ねていた。
ぱちゅっ…ぱちゅっ…ぱちゅっ…ぱちゅっ…ぱちゅっ
「シュリー、シュリー、ねぇ、痛くない?大丈夫?」
「あ、っあん、きもちいい、奥、まで…っきもちい、です…、っああ、」
膣の壁をじゅるじゅる擦るような優しいピストンだが、余計に彼のモノのかたちがはっきりわかってしまって、シュリーは身体がびくびく震えるのを止められない。
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