お屋敷メイドと7人の兄弟

とよ

文字の大きさ
上 下
18 / 22

【六男】反抗的幼馴染 前編

しおりを挟む
 個性的な息子が増えるにつれ、奥様の教育方針は「毎日ご飯を食べてくれたらそれでいい」にシフトしたようだ。
 長男の見合いや三男の飛び級、双子の学校からの呼び出しなどで忙殺され、六男・ハルにあまり時間を割けなかったと奥様は悔やんでいるようだったが…。


******


「最近母上がめっちゃ構ってきてめんどくさいんだよね」
 屋敷の裏庭の奥の奥、木陰に紛れた小さな四阿の中。
 ふぃー、と細く煙を吐き出しながらハルは愚痴った。砂漠色の髪が風に吹かれてさらさら踊る。慣れた手つきで煙草を揉み消すと、隣でアイスを食べているシュリーに顔を向けた。
「ね、ひとくちちょーだい」
 シュリーはバニラ味とチョコ味を少しずつスプーンに取って、ハルの口に入れてあげた。雛にご飯をあげる親鳥の気持ちだ。うまうまと満足げなハルを見て、シュリーは溜め息をついた。
「面倒なんて言ったら奥様傷つきますよ」
「その責め方はよくないなぁ。俺だって母上を嫌いな訳じゃないし」
 
 親のいないシュリーには良くわからないが、メイド長が一時間おきに話しかけてくる感じだろうか。それは確かにやや面倒くさい。しかも愛情だって知ってるから反抗できない…といったところか。
 また新しい煙草に火をつけようとしていたハルを押し止め、シュリーはアイスのカップをテーブルに置いた。
「では、気分転換に行きましょう、ハル様」


******


「うわっ!超久し振り!わーっ!つめてー!」
 四阿から少し歩いた所に、大人の腰くらいまでの深さの池がある。底から水が湧き出ていて、今くらいの時期─夏の昼下がり─以外に入ろうとするのはなかなか勇気がいる冷たさだ。
 ハルは靴と靴下だけ脱ぐと、躊躇せずざぶざぶ池の中に入っていった。べしゃんと頭から水中に突っ込み、全身ずぶ濡れになって煌めく髪をかきあげる。けらけら笑いながらシャツのボタンを外していく。
 シュリーが池の淵にしゃがんで水に触れながら、烏の行水かな、と思って見ていると、上裸になったハルが焦りながら戻ってきた。
「ね、シュリー、やばいやばい、煙草シャツに入れっぱだったわ、えー、乾かしてもダメかな、ね、ちょっと見て、俺手ぇ濡れてるから」
 小さなシガレットケースを受け取って出してみると、まあ見事に全滅だった。
「御愁傷様です」
「ああー」
 さっきまでの陽気さはどこへやら、しょんぼりとしてしまったハルを面白く思う。お金持ちなんだから、幾らでも買えばいいのに。

 もうだめだ、と言いながら、池から上がったハルが地面に大の字になる。貴族のくせに、草や土まみれになっても平気らしい。そういえば、昔二人でここで遊んで、泥まみれになって帰ったりしたな。
「ハル様、風邪引いちゃいますよ」
「…」
 ハルは不機嫌そうにシュリーを見た。
「お前ねぇ、前々から思ってたけど、小言が多いよ」
「そうですか?」
「そうだよ。シュリーちゃんは俺のオカーサマですか?同い年のくせに」

 シュリーは目をぱちぱちさせた。なかなか…予想外だ。落ち着いてる、しっかりしてると褒められてきたシュリーにとって、ふわふわしてるハルは同い年とはいえ、目を離せない存在だったのだ。

 シュリーは難しい顔をしながら俯いた。その瞳がちょっぴり潤むのを見て、ハルは青くなって身を起こした。彼女の細い肩に触れながら、顔を覗き込む。
「ご、ごめんて、シュリー、泣かないで…」
「泣いてません」
「嘘つくなよ」
「ついてません」
「強情張り」
「張ってません」
「…」
「…」
「…」
「…すみません」
「いーよ別に」
 ぷいっとハルがそっぽを向く。こんな時、どうすればいいのかシュリーにはわからない。エリなら笑い飛ばすだろう。バイオレットなら気にしないし、ララなら堂々と喧嘩する。シュリーはただ目を伏せて、己の指先を見つめる事しか…。

「ハル様は私がお嫌いですか」
「は?なんでそうなるの」
「…すみません」
「謝るくらいなら聞かないでよ。嫌いだったら一緒に遊ぶわけないじゃん」
「なら何故、私は夜に呼んでいただけないのですか」

 ハルが蜂蜜色の瞳を見開く。シュリーは言って早々後悔していた。
 身分が違うとはいえ、幼い頃から一緒に育ってきた仲なのに、シュリーは一度も彼の寝室に呼ばれたことがない。それは彼女にとって、小さな、でも深い深い悩みだった。
 が、そんなのはシュリーが意見していいことではない。どのメイドを抱こうが、それはご兄弟の自由だ。
「申し訳ありません。お許しください」
 早口で謝りながら立ち上がる。場を辞そうとハルに背を向けた途端──背後から力強く、抱きしめられた。

「待って。何?シュリー」
 ずっと一緒に遊んでいた男の子は、いつの間にか背が高くなっていて。シュリーを腕の中に囲いながら、身を屈めて彼女の耳に囁く。
「ね、シュリーは、俺と、したいの?」
「…」
 シュリーの視線が泳ぐ。唇は引き結ばれたままだが、その身体が熱を持ち始め、耳がみる間に真っ赤に染まった。ハルは目を細め、低い声で続けた。
「…俺さぁ、いっつもシュリーに注意されてばっかで、だから、セッ…せ…、…えっちくらい、ちゃんとできるように、なってから、って、思ってたんだ、けど…」
 ああ、駄目。こんな、耳元で囁かれているだけで、腰が砕けそうだ。全身が熱く、潤んでくる。
「…ごめん、今、もう我慢できない」
 シュリーのお尻に、硬くて熱いものが擦り付けられた。躊躇いながら振り返ったシュリーの、滑らかな輪郭を指でなぞり、ハルは艶々の唇にむしゃぶりついた。


******


「ん、ん、はぁっ、んぶ、っ」
 んぷぁ、と唾液の糸を引きながら離れた唇が、また、深く深く重ねられる。
 ハルがこんなにキスが好きだとは知らなかった。
 繋がった腰をゆっくり動かしながら、えっちなキスを繰り返す。夏の午後の穏やかな自然のなかに、リップ音が響く。
 池の側の大木のうろ。昔秘密基地にしていたそこで、大人になった二人は熱い肌を重ねていた。

 ぱちゅっ…ぱちゅっ…ぱちゅっ…ぱちゅっ…ぱちゅっ

「シュリー、シュリー、ねぇ、痛くない?大丈夫?」
「あ、っあん、きもちいい、奥、まで…っきもちい、です…、っああ、」
 膣の壁をじゅるじゅる擦るような優しいピストンだが、余計に彼のモノのかたちがはっきりわかってしまって、シュリーは身体がびくびく震えるのを止められない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...